間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜

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第5章 少年期〜青年期 学園4学年編

18話 拡がる調査網 父:アイオラト 視点

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・・・・帝城内の応接室をアメトリンが去った後・・・・

 父:アイオラト 視点

皇太子「っ・・・・ふぅ・・・、やっと息がつける、デューキス公爵、先程までのご子息の、あの徐々に強まって行った魔力威圧、いや、強い圧迫感を感じた気はなんだ?」

 アトリーがこの応接室から出て行った後、室内にいた帝国側の面々が詰めていた息を吐き、強張っていた身体の力を拭いた。そんな中で皇太子が私に向かってそう聞いてきたが、私は・・・

「・・・先程は聖獣様がお話になられたいたようですからね。そのせいではないでしょうか?」(徐々に力が強まっていたのは多分お腹が空き過ぎて無意識にイライラしてたんだろうなぁ・・・)

 と、思いながらも素知らぬ顔でそう告げると、

皇太子「いや、聖獣様が出ていらした間はむしろ圧迫感が和らいだ、あれはどう考えてもご子息の圧だろう・・・以前にお会いした時より感じた魔力、とは言い難い、何か異質な・・・、そう、神聖のような物が混じった気だ・・・」

 自分の感じた感覚をどう表現したものかと言った感じで、自分でも確信がないような曖昧な表現で話していたが、

(やはり、気づくか・・・)

 私はこの皇太子がここまでの推測したのは予想内ではあった、それは、皇太子が数年前、アトリーとヤヅキ様、両方の魔力威圧を受けていた事があったからだ。
 彼は今、その時を思い返しているのだろう、前屈みになって膝に肘をつき、手組んでその手の上に自分の顎を乗せたまま、真剣な表情でアトリーとヤヅキ様に我が国のパーティーで初めてあった時に感じた魔力と威圧、そして今日感じた両方の魔力や威圧、気の差もちゃんと判別した、その上でアトリーの力の変化を敏感に感じ取り、その変化の質までも言い当てていた。

皇帝「む?どう言うことだ?以前はああではなかったと?」

皇太子「え、えぇ、以前はただ強い魔力を感じてはいたんですが、先程はその時の魔力とは別の感じたことがなぃ?・・・・!、いや、あの感覚は彼が勇者送還の儀で使っていた神々の“神力“!!あれと似たような感覚がした!!」

「「!?」」

 皇帝も自分の息子の話を聞き、興味を持って聞いてきた。その質問に答えようと話し出して、アトリーの力の変化について詳しく話そうとした時、その変化した力の質に心当たりがあり、その時の出来事を思い出し、体を跳ね上げるように起こして、アトリーの変化した力の質と酷似した物の名称を出した。
 その言葉にその名称に皇帝と宰相が驚きの表情をし、こちらを見てくる。そして、皇太子は何か確信を得た表情で私にこう聞いてきた。

皇太子「・・・デューキス公爵、貴殿はこれがどう言う意味かわかっているんだろう?彼は、いや、あのお方は・・・」

皇帝「・・・ヘイス、お前はデューキス子息が“神“になったとでも言いたいのか?あの、魔力、いや魔力に似た気か何かが“神力“だと?」

 皇太子の発言の驚きから戻ってきた皇帝が、自分の息子に嘘偽りではないのかと、真実を見極めるような眼差しを向け確認をとった。そして・・・

皇太子「はい、父上、あの方が放っていたのは魔力ではない気は“神力“から来る“神気“で、間違いないと思います」

皇帝「むぅ、そうか、お前がそこまで言うとは・・・・デューキス公爵、この事に何か言いたい事はないかね?」
 
 と、皇帝も自分の息子の言葉に嘘偽りが無いと判断し、私に説明を求めて来たのだった・・・

(まぁ、そう聞いてくるよな・・・)

 帝国は我が国の王族ように神職の血筋ではないが、皇族は代々高い魔力を持ったものを排出していることから、魔力とは異なる力を感知することも長けていた。こう言った感知能力は魔力の高い者達にたまに現れるので、魔力量を重視する他国の王族でも魔力の高い者に稀にその感知能力を開花させる者もいるが、それが魔力か“神力“か判別できるかどうかは別だ。
 そして、今回は以前アトリーが“神力“を使用した時に居合わせた皇太子がいたから、その半越が可能であった。
 だから私は、こう言ったことを予想して、帝国での公の場にアトリーをあまり参加させたくはなかったのだが、ここまでバレてしまったのならこれはこれで仕方ないと思い直し、アトリーが“現人神“へとなった事だけを告げた。

「「「・・・・っ」」」

皇太子「やはり、あのお方は“神“となったのか・・・この数年の間で・・・」

皇帝「・・・何と言う事だ、我が国の伝承にも残っている“現人神“の存在をこの目で見ることができるとは・・・・」

宰相「そんな伝承に残る、お方に我々は何という無作法を・・・・」

(流石、帝国、そんな伝承を記述した書物が受け継がれていたとは、我が国より長い歴史があるだけあるな・・・)

 説明を聞いた皇帝達は、それぞれ今思ったことを口走り、一生懸命事実を受け止めようとしていた。その中に、帝国の皇族に受け継がれているような伝承の存在も無意識に口に出している事から、かなりの衝撃を受けた印象だった。宰相に至っては自分が“現人神“であるアトリーに無礼な振る舞いをしたと言って顔色を悪くしていた。
 そして、少しすると皇帝達はアトリーが“現人神“になった経緯などを聞きたがったのだが、私達は説明ができないと言ってもしつこく聞いてくる。

皇帝「どうして、説明ができないのだ?」

「皇帝陛下、それは何度もご説明した通り、私達はあの子がどうやって“現人神“となったのか知らないのです、だからご説明はできませんと言っております!」

皇太子「だがな、デューキス公爵、そなたはあのお方を側で親としてその成長をずっと見守って来たのだろう?どんな些細な変化でも良いのだ気づいた事は無いのか?」

「そう言われましても、私達としては本当にいつも通り、すくすく成長する我が子が急にそうなったのです。ですから、何か変化の予兆なと言うものはなかったんですよ。それに、我々も聖獣様を通し、神々にもあの子が“現人神“になった経緯をお聞きしましたが、我々普通の人間がなろうと思って成れるものではないと、そう断言するように仰しゃるので深く追及はしませんでした。神々としては本当に偶然のそうなってしまった、だから経緯を話してもその条件は誰にも満たせないと分かっていらっしゃるので説明をなさらないのでしょう・・・」

(本当はアトリーが“現人神“になった真相は知ってはいるが、成り立ちが成り立ちだからな、詳しく説明してもできもしない事を話す必要はないだろう、それに、アトリーの“神“としての成り立ちにはどうも不可解な部分がある、神々もことの経緯の全てを私達に教えている思えない、そうなると、“神“になる為に最も大事な部分を意図的に隠している可能性が高い、そこら辺の情報をもしかしたら帝国にならあるかもしれないが、あまり期待はできない状況でこちらの手の内を見せるのは悪手だ・・・)

 神々にもあまり吹聴しないで欲しいと言われていたこともあり、こうして誤魔化す事にした。

「「「むぅ・・・」」」

皇帝「あのお方だからこそ成る事ができた条件・・・そうなると思い当たる条件の一つはやはりあのお方が“神々の愛し子“であることだが・・・ただそれだけでは過去歴代の“神々の愛し子“全員がその対象になってしまうが、その様な記述や伝承などは我が国にはなかった。そうすると、もっと他に条件があるはず・・・・・うぅむぅ・・・・どうもそれ以上の条件の見当がつかんなぁ・・・」

皇太子「・・・私が思い当たるのは他にもう一つ、あの方は以前一度、主神様のお力、“神力“を授けられお使いになったことがある、それが条件の一つだと思ってますが・・・この二つでしたら歴代の勇者の中に条件を満たすものがいそうですが、私が聖教国に留学していた時、調べられる範囲で勇者が“神“になったという伝承はリトス教にも残っていなかったですし・・・うぅむぅ・・・・これ以上は分かりませんね・・・」

 この後、皇帝と皇太子は2人揃って自分の思い当たるだけの条件を口にしていたが、この2人の意見は我が国の上層部でも散々議論されてきた条件で、それ以上の新たな条件の予想の提言はなく、進展がないままこの議論は数ヶ月で終わりを迎えていた。

(様々な国々を併合し出来上がった帝国の長い歴史の中でも、やはり、新たな情報はないか・・・)

 と、そう思い残念な気持ちでいると、

カイル「旦那様、そろそろ・・・」

 カイルが夕食の時間が差し迫っていることを教えてくれた。(夕食までには帰るとアトリー達と約束しているからね・・・)

「ん、そうだな・・・皇帝陛下、申し訳ございませんが、時間のほどが迫っていますので、そろそろ本題の方に・・・」

皇帝「む、おぉ、すまない、興味深いものがあるとどうしても、熟考する癖が抜けんでな・・・して、本題というと、今回の事件関係者の特定とその処分についてだな?」

「はい、事件関係者の捜査にはこちらもご協力できるところがあると思っていますので、いつでもお力をお貸しする準備はできております。しかし、その者達を捕まえた後の処分につきましては、パーティーであの子が言っていたように、死刑以外での刑罰を受けさせてくださいますでしょうか?」

皇帝「うむ、その事については元よりこちらもそのように手配するつもりであった。その事についての心配はない、・・・ただ、・・・あのお方の今後の扱いはどのようにしたら良いだろうか?元々、我らより位が高いので我ら以上の待遇をするつもりであったが、あのお方はどうも、目立つことを避ける節があるでな、明日から始まる“大会“の観戦の席順を変えた方がいいのか迷っておる・・・」

「あぁ、そうですね。それにつきましては・・・・」

 ・・・・こうして、明日の打ち合わせと、謝礼の品の交渉をし得た私達は何とか、夕食の時間に間に合い、アトリーとの約束を守ることができた。

「ただいま、シリー・・・」

シリー「お帰りなさい、ラト、大丈夫?とても疲れているみたいだけど・・・・」

「あぁ、大丈夫だよ。君に会えただけで、元気が出てきた」ぎゅっ

シリー「あら、まぁまぁ、貴方ったら、子供達が見てますよ?」

「いいんだよ、今はシリーといる事の方が大事だ、それに、子供達はもう居なくなってるよ・・・」

シリー「まぁ、しょうがない人ね・・・ふふっ、お疲れ様・・・ラト・・・」チュッ

 宿に戻ると、家族は一つの客室の居間でお茶をして、私の帰りを待ってくれていたのだが、私が真っ先にシリーの元へ駆けつけて彼女に抱きつくと、両親も子供達も気をきかせて、部屋を退出していった。そして、皇帝達との交渉で疲れて帰ってきた私を、優しく癒してくれるシリーとしばらく過ごし、夕食をとった後・・・、私達は食後のお茶を楽しみ、子供達をそれぞれの客室に戻すと、大人達だけで今回のことの顛末を共有した。そして、父上達が宿に戻る前に頼んでいた事の報告を聞いた。

「それで、父上、今回の件に関わっていると思わしき人物達の特定の方はどうなっていますか?」

父上「ああ、それはだいぶ絞り込めたぞ、パーティー会場でアトリーが話している内容に分かりやすく反応して、顔色が悪くなった者達を、うちの使用人達がほとんど覚えて来ていたからな、その中でも具合を悪くして退場していった者達の素性の特定と、其奴らの友好関係も今、影達に調べさせている最中だ、それと同時に疑わしい人物達には1人ずつ影の監視をつけているが、今の所変わった動きはないようだ、多分だが、アトリーの言った言葉が犯罪を起こす事への恐怖を沸き立てて、協力者との連絡をためらっているの取ろうと影達からは報告が来ている。後はまた何か変わった動きがあればすぐに知らせが来るだろう」

 父上に頼んでいた仕事はすでに完璧に采配されており、後は相手の動きを待つだけの状態になっていた。それを聞き私はホッと一息吐いて、その後の指示を追加する。

「そうですか。では、一応こちらも今回の件の捜査に協力すると約束しておいたので、情報が入り次第、帝城の方にも最低限の情報を報告してください。皇帝との交渉で、表面上協力体制と取っていると思わせておいて、向こうの出方を観察させていただくようにしていただいたので、情報を漏らしている者が近くにいるとすれば、すぐに判明するでしょうし、相手がその情報を聞いてどのような行動に出るか予想も立てやすくなりますからね。・・・それに、相手側の今日の“毒“を使用したのがどうも引っ掛かります。いくら元ダンシャンスー公爵家の派閥の者が関わっていたとしても、“毒“を使用してまでことを起こすのは流石にやりすぎだと思うのですよ・・・」

父上「うむ、確かにな・・・ダンシャンスー公爵家が没落した理由の一つがアトリーだからといっても、自らの欲望のために自滅した者に対して、そこまでの思い入れが残っているかというのも疑わしいな・・・例の“神狼教“の関係者だとしても、あやつらの神殿や関係者施設を破壊したのはマルキシオス侯爵であってアトリー本人ではない、まだ子供のアトリーがそのような指示を出したとも考えてはおらんだろうし・・・これは、また別の勢力が絡んでおるやもしれんとラトは思っておるんだな?」

シリー「ラト、まさか、またあの“邪神教“が絡んでいると?」

 私の言葉に父上は私の考えている事を的確に言い当てて来ていて、それを聞いた隣にいるシリーが不安そうにそう尋ねてくる、そんな不安そうな彼女の肩を抱きながら、私の思っている事を話した、

「そうだね、今回の旅行前に何者かによる襲撃の可能性を知らされた時は、その予想もよぎったのだけど、今回の“毒“を使用した襲撃で、あの“邪神教“が関与している可能性は薄いと思うんだよ。こんな事を言うのは嫌なのだけど、あの“邪神“は自分の自らの手でアトリーを害したいと言った思いが強い、なのに、今回のような遠回しなやり方でアトリーを害そうとは思わないだろう、それに、あいつはアトリーに“毒“が効かない事を知っている、なのにわざわざ“毒“をアトリーに盛るような事はしないはずだ。そう考えると、今回は全く別の勢力が手を貸していように思う」

 すると、次は母上が私の話を聞いて、こう言ってきた・・・

母上「確かにそうね。それに、今日使われた“毒“の成分は致死性の高い猛毒だったと聞いたわ、こんな危険なものがそう簡単に出回っているとは思えないし、出所が判明すれば首謀者がたどれるかもしれないと思って、影にその情報も辿るように言ってあるから、その手を貸した勢力も判明するでしょう。後は何か分かり次第、そちらの対処もしていきましょう」

「それはその線で情報がたどることができたら、有力な情報になりそうですね。カイやハウイ君達も他にも思い当たる事があったら、随時惜しみなく調査の依頼を影に出しなさい、どこで、何が関わってくるか、それを考えるのも次期領主としても良い勉強になるからね」

 母上は独自に別の方向から調査をしているようで、それが今回の別の勢力の炙り出すことができるやもしれないと聞いて、これまで言葉を挟んで来なかった、カイとハウイ君にも積極的に調査に参加してほしいと言うと、それからは少しずつ意見を出して来たりして、ある程度意見が出尽くしたところで今日の話し合いを終わらせ、それぞれ客室に戻り、明日のために早々に就寝する事になった・・・

 そして、私達も就寝の準備をして、寝台に並んで入った時に、シリーがそっと私の腕にしがみつき、不安そうにこう聞いてきた。

シリー「ラト、明日は大丈夫ですよね?」

「あぁ、今の所そのような情報は入って来ていないし、今日パーティーに参加していた人達の中で協力者がいたとしても、流石に明日すぐに事を起こそうと思う者達はいないだろうさ、でも、警戒は常にしているから何があったとしても大丈夫だよ、私が必ず君も子供達も全員守るから・・・」

 そう言って、腕にしがみついてくるシリーを抱き寄せ、包み込むように抱きしめて、安心させるように背中を撫でると、シリーは、

シリー「ラト、私も何があっても貴方も子供達も皆んなを守りますわ、だから、貴方だけで無理をしないでちょうだいね?」

 と言って、ギュッと抱きしめ返してくれた。

「あぁ、2人一緒に皆んなを守ろう・・・」

 チュッ・・・

 そして、どちらともなく互いにキスをして目を瞑り眠ったのだった・・・・

(アトリーの願った家族旅行をこれ以上台無しになんてさせはしない・・・絶対に・・・)














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