NightMare

マド

文字の大きさ
1 / 6

1・始まりの夜

しおりを挟む
 
あれ?
また忘れてる…………
大事なものでしょ?ずっと忘れないって約束してたのになぁ…
がんばって思い出そうとしてるけど…
………私からは教えてあげない
だってそれは


自分で思い出さなきゃ意味がないもん




                       *





 夏が終わって大分涼しくなった。夜になるとやっぱり冷えてくる。空にはお月様と散りばめられた星々。お月様がどことなく赤っぽくみえる。
「…っ…………?」
 すごい寒いわけじゃないんだけどな…身震いなんてしないでしょうに。
 
赤いお月様を眺めながら夜の街を歩く…

「こんばんは」
 ?
「……?(うさぎさん……?)」
 振り返って目の前にいたのは、洒落た服を着て頭にうさぎの耳を生やした男の人がいた。
…誰?
「こんな夜に出歩いてたら、危ないですよ?私みたいなのに話しかけられますよ?」
「……………」
「……聞こえてます…よね?」
「……誰…ですか?」
 少女は問う。
「これは失敬。申し遅れました。」
 うさぎがピシッと背を伸ばした。
「私はワンダーランドの主のアリスお嬢様の使いの者でございます。」
「ワンダーランド………?」
 まことしやかに言われても訳がわからない。ワンダーランド?アリス?そして前のうさぎはアリスの使いって……まるで…
「不思議の国のアリス…」
「? どうされましたか?」
「あなた、急いでないの?」
「?急ぐ……?」
 あ、だめだ。言葉が通じないのかな…
「まあ、確かに急いではいますよ。お嬢様の13のパーティーにお越しいただく
…………人間を集めています」
 人間…?
「アリスお嬢様曰く、こちらではない、別の世界にいる者をつれてこいとのこと。できれば面白い者がいいとおっしゃっていました。」
「…なんで私が行かなきゃならないの?」
「今ここで、歩いていられるほど余裕というものがあるのかと推測いたしました」
「…私だって理由があって歩いているの。」
「…と、いいますと?」
「大事なものを探してるの。いつの間にか忘れちゃった。限りなく遠い場所にあって、いつでもそばにいてくれるの。」
 そうだ。私だって不用心に歩いているわけじゃない。誰かと聞かれると答えられないけど…。
「もしかしたら、こちら側にいるかもしれませんよ…?ま、ただの勘ですけどね」
 そう言うと、うさぎがいつの間にかその手に一通の手紙を持っていた。
「招待状です。この紙があれば、私達の世界にも入ることができます。手紙を開いたら、そのとき世界に来ることとなるでしょう。」
 そう言って手紙を渡すとうさぎは消えてしまった。
手紙を眺める。白い封筒にロウを溶かして印を押した典型的な手紙だ。印が押されたところには、《Welcome to wonderland》と窪んでいた。



 家に着く頃には深夜1:00ぐらいになっていた。別に眠くもないけどね。
(さて………)
 私の家は私しか住んでいない。普通の一軒家。どうしてあるのかも忘れちゃった。思い出さなきゃ………かな。
机の引き出しの一つにはたくさんの手紙が入っている。たぶん自分が書いたものだろうから未開封。記憶喪失ってわけじゃないけど、忘れっぽいのかなあ…ボーッとしてるというか…
「開けようか……」
 一人しかいない部屋に、その声は消えていった。封を開け、中を取り出す。手紙には、こう書いてあった。
                                     *おめでとう*
       あなたはアリスお嬢様の13のパーティーに招かれました。
      こちら側に着いたら、おそらく鍵を持っているはず。
      すぐにそちらへ行き、案内を致しますので、鍵をなくさずに
      お待ちください。

                                                        案内人:使いのうさぎ



 光に包まれる部屋。遠のく意識とともに、少し、本当にかすかな声が聴こえた気がした。















                             


『 メア、ごめんね。』







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...