63 / 173
1話目! 白の章 枯れない愛
1-5
しおりを挟む
白は拓斗がついうっかり飛ばしてしまったメッセージを脳内で受け取り、その時、一瞬だけ顔を顰めた。どうやらマリーの容態は急変したらしい。
「もうあのババアの寿命は数分そこらだ。オレを引き剥がす意味は無いと思うがなァ」
悪魔の言うことに嘘はない。確かにもう、間違いなく彼女は死ぬだろう。それでも――
「それでも、頼まれた以上、約束を破る訳にはいきません」
白はキッと悪魔を睨みつけ、悪魔に向かって手を翳した。
「オォ? 何だァ? 何するってんだ?」
悪魔は白のことを軽視しているようで、白を嘲り笑いながら、左右へゆらゆらと羽を揺らした。
「貴方がマリーさんから離れないと言うのなら、私にも考えがあります」
「ほう? それってェとォ?」
「こうです」
白がそう一言言い放つと、悪魔の身体は制御を無くし、翼も体も動かなくなり、地面へと強く叩きつけられた。
「ガッ!?」
更に、叩きつけられた右手の人差し指が曲がるはずもない方向へと勝手に曲がり、悪魔は手から迸る激痛に悲鳴を上げた。
「グッギャアアアアアアア!?」
「貴方が離れると言うまで、その指を一本ずつへし折ります」
「テッ、テメェッ!」
「二本目」
ベキッと、嫌な音を立てて、今度は右手の中指が手の甲に着くぐらいの勢いでへし折り曲がった。
「アァアアァアアアァアア!!」
白はそんな悪魔の悲痛な叫び声も諸ともせず、淡々とこう語った。
「昔、世界が滅びる前の映画で観たんですよ。自分を十字架で払おうとする人間の指を、悪魔が十字架を持つその手の指を一本一本へし折って、十字架を離させて殺すんです。それを悪魔にするのも一興かなって思って、今実行してみてるんですけど――気分は如何でしょう?」
薄らと笑みを作り小首を傾げる白に、悪魔は一瞬恐怖を覚え、身を強ばらせた。
「クッソがぁあああぁあああ! 悪趣味な真似したがってェエエエエエ! ぐっ!」
また、悪魔の指が奇妙な方向へとへし曲がる。今度は薬指が。
「早くして下さい。このままじゃ貴方の指が全部へし折れてしまいますよ。全部折れたら、もう――殺すしかありませんよね……?」
白はぬっと顔を悪魔へと近づけて、光の差さない瞳に悪魔を映した。悪魔は顔から冷や汗が吹き出し、いつの間にか呼吸もかなり荒くなっていた。
「わ、わかった! わかったから! 出ていく! 出ていくよ! だから殺さないでくれ! オレだってまだ人生を謳歌したい!」
やっと条件を飲み込んでくれた悪魔に、白は安心したようににっこりと笑ってみせた。
「最初からそう言ってくれれば良かったんですよ」
にっこりと笑う彼女だが、その目は全く笑っていない。彼女のおっかなさに悪魔は顔を引き攣らせてぎこち無く笑った。
「では、約束通りすぐにこの家から出ていって下さいね」
白はそう言って、くるりと踵を返し、家から出ていこうとした。が、その時――
「ケケッ! このクソマヌケが!」
白が悪魔に背中を向けた途端、体が自由になった悪魔は、その一瞬の隙を突いて白へと襲いかかり、その鋭い牙と爪で彼女を仕留めようとした。その牙と爪が白の白く柔らかな肌へとくい込んで、赤い血飛沫をまき散らせたはずだった。
「アレェ……?」
そう、そのはずだった。
血飛沫を撒き散らしたのは白ではなく悪魔の方で、悪魔の首から上は、ごとりと床へとボールのように転がった。下半身は床を這いつくばり、ピクピクと痙攣して身体の自由を失った。
「格の違いもわからず無様に敵に立ち向かうのは、三流のすることですよ」
白の手にはいつの間にか青白い刀身をした刀が握られていて、その刃には悪魔の血と思われる、紫色の液体が滴っていた。
悪魔の体と頭はパキパキと冷たい氷に覆われて、花と同様に砕けて、青白い粒子となって消えていく。
「ふぅ……。こんな光景、拓斗さんやマリーさんには見せられませんからね……」
白は、外に出てもらっていた二人のことを思い出しながら、刀をくるりと回して亜空間へと消しさった。
「さぁ、さっさと二人の許へ戻りましょう」
粒子となって消えゆく悪魔の残像を背にして、白はその場から足早に去って行った。
「もうあのババアの寿命は数分そこらだ。オレを引き剥がす意味は無いと思うがなァ」
悪魔の言うことに嘘はない。確かにもう、間違いなく彼女は死ぬだろう。それでも――
「それでも、頼まれた以上、約束を破る訳にはいきません」
白はキッと悪魔を睨みつけ、悪魔に向かって手を翳した。
「オォ? 何だァ? 何するってんだ?」
悪魔は白のことを軽視しているようで、白を嘲り笑いながら、左右へゆらゆらと羽を揺らした。
「貴方がマリーさんから離れないと言うのなら、私にも考えがあります」
「ほう? それってェとォ?」
「こうです」
白がそう一言言い放つと、悪魔の身体は制御を無くし、翼も体も動かなくなり、地面へと強く叩きつけられた。
「ガッ!?」
更に、叩きつけられた右手の人差し指が曲がるはずもない方向へと勝手に曲がり、悪魔は手から迸る激痛に悲鳴を上げた。
「グッギャアアアアアアア!?」
「貴方が離れると言うまで、その指を一本ずつへし折ります」
「テッ、テメェッ!」
「二本目」
ベキッと、嫌な音を立てて、今度は右手の中指が手の甲に着くぐらいの勢いでへし折り曲がった。
「アァアアァアアアァアア!!」
白はそんな悪魔の悲痛な叫び声も諸ともせず、淡々とこう語った。
「昔、世界が滅びる前の映画で観たんですよ。自分を十字架で払おうとする人間の指を、悪魔が十字架を持つその手の指を一本一本へし折って、十字架を離させて殺すんです。それを悪魔にするのも一興かなって思って、今実行してみてるんですけど――気分は如何でしょう?」
薄らと笑みを作り小首を傾げる白に、悪魔は一瞬恐怖を覚え、身を強ばらせた。
「クッソがぁあああぁあああ! 悪趣味な真似したがってェエエエエエ! ぐっ!」
また、悪魔の指が奇妙な方向へとへし曲がる。今度は薬指が。
「早くして下さい。このままじゃ貴方の指が全部へし折れてしまいますよ。全部折れたら、もう――殺すしかありませんよね……?」
白はぬっと顔を悪魔へと近づけて、光の差さない瞳に悪魔を映した。悪魔は顔から冷や汗が吹き出し、いつの間にか呼吸もかなり荒くなっていた。
「わ、わかった! わかったから! 出ていく! 出ていくよ! だから殺さないでくれ! オレだってまだ人生を謳歌したい!」
やっと条件を飲み込んでくれた悪魔に、白は安心したようににっこりと笑ってみせた。
「最初からそう言ってくれれば良かったんですよ」
にっこりと笑う彼女だが、その目は全く笑っていない。彼女のおっかなさに悪魔は顔を引き攣らせてぎこち無く笑った。
「では、約束通りすぐにこの家から出ていって下さいね」
白はそう言って、くるりと踵を返し、家から出ていこうとした。が、その時――
「ケケッ! このクソマヌケが!」
白が悪魔に背中を向けた途端、体が自由になった悪魔は、その一瞬の隙を突いて白へと襲いかかり、その鋭い牙と爪で彼女を仕留めようとした。その牙と爪が白の白く柔らかな肌へとくい込んで、赤い血飛沫をまき散らせたはずだった。
「アレェ……?」
そう、そのはずだった。
血飛沫を撒き散らしたのは白ではなく悪魔の方で、悪魔の首から上は、ごとりと床へとボールのように転がった。下半身は床を這いつくばり、ピクピクと痙攣して身体の自由を失った。
「格の違いもわからず無様に敵に立ち向かうのは、三流のすることですよ」
白の手にはいつの間にか青白い刀身をした刀が握られていて、その刃には悪魔の血と思われる、紫色の液体が滴っていた。
悪魔の体と頭はパキパキと冷たい氷に覆われて、花と同様に砕けて、青白い粒子となって消えていく。
「ふぅ……。こんな光景、拓斗さんやマリーさんには見せられませんからね……」
白は、外に出てもらっていた二人のことを思い出しながら、刀をくるりと回して亜空間へと消しさった。
「さぁ、さっさと二人の許へ戻りましょう」
粒子となって消えゆく悪魔の残像を背にして、白はその場から足早に去って行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる