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4話目!薫の章 硝子の中の景色
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「ねぇ、そこのニンゲン」
茂みの奥にいる彼は、僕らに恐る恐る問い掛ける。
「オイラを助けてくれたの?」
小鬼にそう言われ、僕はアキラくんに先程言われた事もあり「ええっと」と、つい言い淀んでしまう。
「助けたっていうか、その、君もあの人たちの大事なもの奪って悪いことしたよね? だから、それを返してもらって、君も見逃そうと思って……」
そうだ。盗んだものさえ返せば、彼らの気も収まるかもしれない。そしたら、小鬼を探すのはもう諦めるかも。そんな甘い考えを抱きながらそう説明すると、小鬼は盗んだ壺を大事そうに抱え、僕らに取られまいと体の影に隠した。
「だ、ダメだ! これだけは絶対返せない」
「どうして?」
小鬼がまた逃げ出さないように、あまり刺激しないようにそう聞くと、小鬼は「だって……」と、目をうるませて、ことの事情を説明してくれた。
「お、オイラの母ちゃん、病気なんだ……。どんな薬試しても治らなくて、このままじゃほんとに死んじゃうかもしれないんだ……。日に日に症状は悪化してて、オイラ、頼れる人もいないから、どうしたら良いかわからなくて……」
そう言って、小鬼はヒックヒックと声を上擦らせて泣き出してしまった。まん丸の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ち、地面を濡らす。
こんな可哀想な小鬼の話を聞いて、薬を取り上げる様な鬼の所業出来るはずもなく、僕は黙って呆然と立ち尽くした。
けれど、アキラくんはそうでないらしく、毅然とした態度のまま、小鬼から薬を取り上げようとした。
「それでも窃盗は犯罪です。今すぐ薬屋に返します。お返しください」
アキラくんが壺に手を伸ばそうとすると、小鬼は「さっきの話聞いてた!?」と、涙も引っ込むくらい驚いて、サッと壺を背中へと隠した。
「貴方の事情など知ったこっちゃありません。その薬を盗んだせいで、他にその薬を必要とする人達が苦しむんですよ。貴方一人の自己中な行動のせいで大勢が苦しむ、どっちが悪いかは明白ですよね」
アキラくんにとんでもなく鋭い指摘をされて、僕も小鬼も大ダメージを受けてしまった。胸に刺さった言葉がとてつもなく痛い。そんな僕らのことはお構い無しに、アキラくんは「それに」と、話を続ける。
「それに、その薬は人間用であって、おそらくですけど、妖怪には効きませんよ。よって、貴方の窃盗は、ただ多くの人を苦しめるだけの所業と言うわけです。さぁ、わかったら速やかにお返しください」
「そ、そんな……!」
小鬼はアキラくんの容赦ない言葉の事実に口をポカンと開いて、力なく立ち尽くした。それは、彼にとっては最後の希望だったのかもしれない。それがアキラくんの言葉によって、呆気なく打ち砕かれた。小鬼は、アキラくんが小鬼の背から壺を奪っても、何も反応しないくらいにはショックを受けていた。アキラくんはそんな小鬼をよそに、僕にその薬の入った壺を渡す。
「これ、さっきの人達に返しておいて下さい。……僕は、少し用事がありますので、一足先に失礼します」
「え、ちょっ――」
「では」
アキラくんは僕の制止も聞かずに、スタスタとどこかへと去って行ってしまう。僕は帰りはどうすれば良いのかとか、この小鬼をこのままにすべきかとか、色々聞きたいことが山ほどあるのに、中途半端に放置され、壺を持ったまましばらく呆然としていた。
少し落ち着いて冷静になったあと、チラリと小鬼を見る。小鬼は呆けていたが、どこか力を無くしたように、みるみるうちにしぼんでいき、その場にうずくまって肩を震わせて泣き出した。
僕はそんな彼にかける言葉もなく、少し後ろ髪を引かれたが、アキラくんに言われた通り、先にこの壺をさっきの人達に返そうと、その場を後にした。
しかし、壺を先程の人達に返し、先程小鬼がいた場所に戻ってくると、何故か薫さんがそこにいた。
茂みの奥にいる彼は、僕らに恐る恐る問い掛ける。
「オイラを助けてくれたの?」
小鬼にそう言われ、僕はアキラくんに先程言われた事もあり「ええっと」と、つい言い淀んでしまう。
「助けたっていうか、その、君もあの人たちの大事なもの奪って悪いことしたよね? だから、それを返してもらって、君も見逃そうと思って……」
そうだ。盗んだものさえ返せば、彼らの気も収まるかもしれない。そしたら、小鬼を探すのはもう諦めるかも。そんな甘い考えを抱きながらそう説明すると、小鬼は盗んだ壺を大事そうに抱え、僕らに取られまいと体の影に隠した。
「だ、ダメだ! これだけは絶対返せない」
「どうして?」
小鬼がまた逃げ出さないように、あまり刺激しないようにそう聞くと、小鬼は「だって……」と、目をうるませて、ことの事情を説明してくれた。
「お、オイラの母ちゃん、病気なんだ……。どんな薬試しても治らなくて、このままじゃほんとに死んじゃうかもしれないんだ……。日に日に症状は悪化してて、オイラ、頼れる人もいないから、どうしたら良いかわからなくて……」
そう言って、小鬼はヒックヒックと声を上擦らせて泣き出してしまった。まん丸の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ち、地面を濡らす。
こんな可哀想な小鬼の話を聞いて、薬を取り上げる様な鬼の所業出来るはずもなく、僕は黙って呆然と立ち尽くした。
けれど、アキラくんはそうでないらしく、毅然とした態度のまま、小鬼から薬を取り上げようとした。
「それでも窃盗は犯罪です。今すぐ薬屋に返します。お返しください」
アキラくんが壺に手を伸ばそうとすると、小鬼は「さっきの話聞いてた!?」と、涙も引っ込むくらい驚いて、サッと壺を背中へと隠した。
「貴方の事情など知ったこっちゃありません。その薬を盗んだせいで、他にその薬を必要とする人達が苦しむんですよ。貴方一人の自己中な行動のせいで大勢が苦しむ、どっちが悪いかは明白ですよね」
アキラくんにとんでもなく鋭い指摘をされて、僕も小鬼も大ダメージを受けてしまった。胸に刺さった言葉がとてつもなく痛い。そんな僕らのことはお構い無しに、アキラくんは「それに」と、話を続ける。
「それに、その薬は人間用であって、おそらくですけど、妖怪には効きませんよ。よって、貴方の窃盗は、ただ多くの人を苦しめるだけの所業と言うわけです。さぁ、わかったら速やかにお返しください」
「そ、そんな……!」
小鬼はアキラくんの容赦ない言葉の事実に口をポカンと開いて、力なく立ち尽くした。それは、彼にとっては最後の希望だったのかもしれない。それがアキラくんの言葉によって、呆気なく打ち砕かれた。小鬼は、アキラくんが小鬼の背から壺を奪っても、何も反応しないくらいにはショックを受けていた。アキラくんはそんな小鬼をよそに、僕にその薬の入った壺を渡す。
「これ、さっきの人達に返しておいて下さい。……僕は、少し用事がありますので、一足先に失礼します」
「え、ちょっ――」
「では」
アキラくんは僕の制止も聞かずに、スタスタとどこかへと去って行ってしまう。僕は帰りはどうすれば良いのかとか、この小鬼をこのままにすべきかとか、色々聞きたいことが山ほどあるのに、中途半端に放置され、壺を持ったまましばらく呆然としていた。
少し落ち着いて冷静になったあと、チラリと小鬼を見る。小鬼は呆けていたが、どこか力を無くしたように、みるみるうちにしぼんでいき、その場にうずくまって肩を震わせて泣き出した。
僕はそんな彼にかける言葉もなく、少し後ろ髪を引かれたが、アキラくんに言われた通り、先にこの壺をさっきの人達に返そうと、その場を後にした。
しかし、壺を先程の人達に返し、先程小鬼がいた場所に戻ってくると、何故か薫さんがそこにいた。
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