83 / 173
4話目!薫の章 硝子の中の景色
4-3
しおりを挟む
僕は必死に考えた。何故薫さんがここに居るのか。アキラくん、用事があるって言ってたし、もしかして、僕が家に帰るために薫さんを呼んでくれたのだろうか。それとも、まだここに何か用事があって、代わりに薫さんを連れて来てくれたのだろうか。あまり薫さんとは仲良くなくて、つい緊張してしまい、あらぬ考えを張り巡らせてしまう。かと言って、別に仲が悪いわけでもないのだが、彼はどうも威圧感があり、近寄り難い雰囲気を纏っていて、正直、自分から話し掛けるのには少しの勇気を要する。しかし、だからと言って、今薫さんに話しかけないのもおかしいわけで、僕はない勇気を振り絞って、薫さんに話しかけた。
「え、えっと薫さん、どうしてここに!?」
緊張のあまり、声が裏返ってしまったが、薫さんはそのことについては気にする様子もなく、僕の質問に答えてくれた。
「それが、実は――」
それは、拓斗が壺を返しに行っている時のことだった。
「薫さん」
薫は自室で本を読んでいたのだが、アキラがドアをノックして来たので、ドアを開けて、その場で用件を聞くことにした。
「少し、お願いがあるのですが」
アキラからのお願いというのは少し珍しく、薫は不思議に思って、そのまま彼の言葉に耳を傾けた。
「実は、かくかくしかじかで、鬼の子供の母親が病気らしいんです。もし宜しければ助けてあげてくれないでしょうか」
アキラらしからぬお願い事に、薫は一瞬、眉間に皺を寄せた。普段の彼は、そういったお願いをするような人ではない。もっと合理的なお願い事ならたまにしてくるが、こういった慈善的なことはほとんど口にしない。いや、それどころかこんなことをお願いしてくるのは初めてではないだろうか。
薫はアキラの言動に違和感を覚えつつも、その質問に質問で返事をした。
「どうして私がそんなことしなくちゃいけないんですか」
何のメリットがあって自分がそんなことしなければならないのだと、薫はアキラに問うた。すると、アキラは平然とした態度のまま、あっけらかんとしてこう言った。
「だって、薫さん、妖怪好きでしょう?」
アキラの的外れな答えに、薫は思わず拍子抜けしてしまう。しかも、いつの間にか現れた桜に「そーだそーだ」と、後ろから同意されていた。
「貴方たちねぇ……私をなんだと――」
「え、好きでしょう? 妖怪とかクリーチャー」
「人間に厳しく人外に甘い男――その名も薫!」
有無を言わさぬ二人の強力な圧に、薫はつい気圧されて押し黙る。それを良いことに、アキラは更に言葉を続ける。
「それに、今回の件は拓斗さんと一緒に解決して欲しいんですよ。薫さんは人間嫌いですけど、人間全体を嫌いになるんじゃなく、ちゃんとその人の性格一人一人を見極めて、嫌いなら嫌いになって欲しいんです。あわよくば、拓斗さんのこと、ちゃんと知って好きになってほしいんですよね。僕は」
「…………」
アキラのまっすぐな瞳に見つめられて、薫は少し黙って何かを考えていた。それが良い事なのか、はたまた悪いことなのか。それは薫にしかわからない。
「はぁ……。なんか、アキラ、貴方少し変わりましたね」
「……そうでしょうか?」
「えぇ、以前はそこまで他人に干渉的ではなかったのに……」
「そういやそうね」
薫の意見に桜も賛同し、アキラはそのことについて不思議そうに首を傾げていた。
「まぁ、貴方が一番彼と接していますからね。彼の肩を持つ気持ちもわかります。……良いでしょう。ただし、今回だけですからね。もしまた次回同じようなことがあっても、同じように助けるかはわかりませんからね」
渋々という感じではあるものの、薫から承諾を得て、アキラは少し顔を綻ばせて喜んだ。
「ありがとうございます」
「薫やーさーしーいー野菜生活ー」
丁寧にお礼を言うアキラに対し、茶化すだけ茶化してくる桜との温度差に、薫は「黙れ」と、桜を一蹴した。
「ただ、拓斗のことを好きになれるかどうかは彼次第ですからね」
「ええ、わかってます」
「――と、言うわけです」
僕は薫さんの話を聞いて、感涙していた。
「あ、アキラくん……あんなツンデレなこと言って、本当は僕を……」
口元を手で抑えて感涙する僕に、薫さんは呆れた表情で、蔑むような瞳で僕のことを黙って見つめていた。もうアキラくんに足を向けて寝ることはできないな。そう思ってn回目。
「それで、その小鬼ってのはどこに居るんですか」
薫さんにそう聞かれ、僕はハッとして辺りをキョロキョロと見渡した。
「た、多分、さっきまでこの辺りにいたので、この辺に居るはずなんですけど……」
僕は辺りをぐるりと見渡して、あの小さな小鬼の姿を探し出す。すると、小鬼はさっきよりも更に小さくなって、膝を抱えて丸まっており、服の色も相俟って、茂みと見事に同化していた。
「え、えっと薫さん、どうしてここに!?」
緊張のあまり、声が裏返ってしまったが、薫さんはそのことについては気にする様子もなく、僕の質問に答えてくれた。
「それが、実は――」
それは、拓斗が壺を返しに行っている時のことだった。
「薫さん」
薫は自室で本を読んでいたのだが、アキラがドアをノックして来たので、ドアを開けて、その場で用件を聞くことにした。
「少し、お願いがあるのですが」
アキラからのお願いというのは少し珍しく、薫は不思議に思って、そのまま彼の言葉に耳を傾けた。
「実は、かくかくしかじかで、鬼の子供の母親が病気らしいんです。もし宜しければ助けてあげてくれないでしょうか」
アキラらしからぬお願い事に、薫は一瞬、眉間に皺を寄せた。普段の彼は、そういったお願いをするような人ではない。もっと合理的なお願い事ならたまにしてくるが、こういった慈善的なことはほとんど口にしない。いや、それどころかこんなことをお願いしてくるのは初めてではないだろうか。
薫はアキラの言動に違和感を覚えつつも、その質問に質問で返事をした。
「どうして私がそんなことしなくちゃいけないんですか」
何のメリットがあって自分がそんなことしなければならないのだと、薫はアキラに問うた。すると、アキラは平然とした態度のまま、あっけらかんとしてこう言った。
「だって、薫さん、妖怪好きでしょう?」
アキラの的外れな答えに、薫は思わず拍子抜けしてしまう。しかも、いつの間にか現れた桜に「そーだそーだ」と、後ろから同意されていた。
「貴方たちねぇ……私をなんだと――」
「え、好きでしょう? 妖怪とかクリーチャー」
「人間に厳しく人外に甘い男――その名も薫!」
有無を言わさぬ二人の強力な圧に、薫はつい気圧されて押し黙る。それを良いことに、アキラは更に言葉を続ける。
「それに、今回の件は拓斗さんと一緒に解決して欲しいんですよ。薫さんは人間嫌いですけど、人間全体を嫌いになるんじゃなく、ちゃんとその人の性格一人一人を見極めて、嫌いなら嫌いになって欲しいんです。あわよくば、拓斗さんのこと、ちゃんと知って好きになってほしいんですよね。僕は」
「…………」
アキラのまっすぐな瞳に見つめられて、薫は少し黙って何かを考えていた。それが良い事なのか、はたまた悪いことなのか。それは薫にしかわからない。
「はぁ……。なんか、アキラ、貴方少し変わりましたね」
「……そうでしょうか?」
「えぇ、以前はそこまで他人に干渉的ではなかったのに……」
「そういやそうね」
薫の意見に桜も賛同し、アキラはそのことについて不思議そうに首を傾げていた。
「まぁ、貴方が一番彼と接していますからね。彼の肩を持つ気持ちもわかります。……良いでしょう。ただし、今回だけですからね。もしまた次回同じようなことがあっても、同じように助けるかはわかりませんからね」
渋々という感じではあるものの、薫から承諾を得て、アキラは少し顔を綻ばせて喜んだ。
「ありがとうございます」
「薫やーさーしーいー野菜生活ー」
丁寧にお礼を言うアキラに対し、茶化すだけ茶化してくる桜との温度差に、薫は「黙れ」と、桜を一蹴した。
「ただ、拓斗のことを好きになれるかどうかは彼次第ですからね」
「ええ、わかってます」
「――と、言うわけです」
僕は薫さんの話を聞いて、感涙していた。
「あ、アキラくん……あんなツンデレなこと言って、本当は僕を……」
口元を手で抑えて感涙する僕に、薫さんは呆れた表情で、蔑むような瞳で僕のことを黙って見つめていた。もうアキラくんに足を向けて寝ることはできないな。そう思ってn回目。
「それで、その小鬼ってのはどこに居るんですか」
薫さんにそう聞かれ、僕はハッとして辺りをキョロキョロと見渡した。
「た、多分、さっきまでこの辺りにいたので、この辺に居るはずなんですけど……」
僕は辺りをぐるりと見渡して、あの小さな小鬼の姿を探し出す。すると、小鬼はさっきよりも更に小さくなって、膝を抱えて丸まっており、服の色も相俟って、茂みと見事に同化していた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる