神様のお導き

ヤマト

文字の大きさ
86 / 173
4話目!薫の章 硝子の中の景色

4-6

しおりを挟む
 薬草を手に入れるための道のりは、そう生易しいものではなかった。薬草は山の高いところに生えているらしく、山を登らなければならなかった。中には河原の岩を飛んで渡ったり、急な崖をよじ登ったり、今にも崩れ落ちそうな橋を渡ったり、それはそれは深く険しいものだった。
 そして、ある程度進んだ山頂付近のところで、その辺り一帯を取り囲んでいる鬼たちの姿があった。
「あいつら、きっとこの付近一帯を縄張りにしてるんだ」
 鬼は小鬼とは全く比にならない程の大きな巨漢で、よく自分たちが想像する、あるべき姿の鬼だった。鬼は大酒飲みとはよく言うが、本当にお酒が好きならしく、昼間っから巨大な盃に酒を注ぎ、ゴクゴクと喉を鳴らして一気飲みしていた。
「ど、どうするの……?」
 僕や小鬼ではどうしたって太刀打ち出来ないだろう。不安になって、薫さんに助けを求めれば、薫さんは相変わらず淡々とした態度でスっと前に出た。
「今回は私が行きます」
 僕は薫さんの今回は、という言葉に引っ掛かりを覚える。
「次回からは自力で何とかしてください」
 無慈悲。薫さんは僕らにそう告げると、そのまま何の躊躇いもなく鬼たちが集うその場へと身を乗り出した。
「どっどっどっどうしよ~! オイラ、ここ一人でも行けるかな~!?」
「そこの人間が手助けはしてくれるでしょうから、なんとかなさい」
「そこの人間って僕のことぉ!?」
「最後まで責任を持てと言ったでしょう」
「そ、そうだけど~!?」
 薫さんの無茶振りに僕はパニックを起こし、小鬼も次からどうすれば良いかという不安でパニックを起こし、薫さんの背後で僕と小鬼の大合唱だ。
「まぁ、今からある程度の処置はしますが、期待はしないで下さいね」
 薫さんが何かよくわからないことを言っていたが、薫さんの背後でパニックを起こす僕らには何も聞こえていなかった。

「すいません」
 薫さんは酒を飲み交わす鬼たちの群れに堂々と割り込んで、声を掛けた。
「薬草を取りに、少しここを通りたいんですけど、通っても良いですかね」
 薫さんが彼らに声を掛けたことにより、鬼たちは一斉に薫さんの方へと視線を向けた。どれだけ自身に視線が集まろうとも物怖じせずに、薫さんは続ける。
「まぁ、貴方がたの許可が無くとも通らせてもらいますが」
 わざわざ挑発的な発言をする薫さんに、鬼たちは目を釣り上がらせて、薫さんの方への群がった。顔の大きさだけでも普通の人の倍以上ある。そんな大きな顔にある二つの目に睨まれても尚、薫さんは平然としている。
「おい、ニンゲン風情が調子に乗るなよ」
 一人の鬼が薫さんにそう威嚇の言葉を放つと、薫さんはその言葉が気に食わなかったようで、逆にそいつをギロリと睨み返した。
「私を人間なんかと一緒にしないでもらえます?」
 そのドスの効いた低い声と、美しい顔からは想像も出来ないような威圧的な表情に、思わずその鬼は「うっ」と、押し黙ってしまう。すると、他の鬼がその鬼をケラケラと笑い、彼を馬鹿にした。
「オイオイ、ビビってんのか? だっせ」
「う、うるさいっ!」
 仲間を馬鹿にした彼は、薫さんへと向き合い、顔がスレスレになるほど顔を近づかせ、薫さんへとある条件を提示した。
「兄ちゃん、ここを通りたきゃな、大量の食料か酒を持ってこい。そしたら、通してやらないこともないぞ」
 その条件に、薫さん冷ややかな目で彼を見て「いえ」と、その条件を拒んだ。
「そしたら、ここを通る度、毎回わざわざ大量の食料を渡さなきゃならないんでしょう? そういうまどろっこしいのは嫌いです。ここは鬼らしく、正々堂々勝負をしましょうよ」
 今度は薫さんが条件を提示し、その提示してきた条件に、鬼たちは目を丸くした。
「鬼なら力ずくでの戦闘は得意でしょう? 私は腕には自信があるのでね。一体一のタイマンでも、多勢相手でも、百人抜きでもなんでも良いですよ。ただし、私が勝ったら、これから先、無条件に何度でもここを通らせてもらいます。如何ですか?」
 薫さんの強気な発言に、鬼たちは一斉に顔を見合わせてから笑った。
「あっはっは! 聞いたかよ! このひょろっこいニンゲン様が俺たちに勝負を挑むってよ!」
「しかも百人抜きでもなんでも良いだぁ? 頭沸いてんのかよ」
「こりゃ傑作だぜ!」
 口癖に薫さんを馬鹿にして笑う鬼たち。その笑い声は耳の奥の鼓膜にもビリビリと響き、耳を塞ぎたくなるようなものだった。
「お、おい、あの人、あんなこと言ってるけど大丈夫なのかよ?」
 流石に不安に思った小鬼も僕の服の裾を引っ張って、不安そうに僕を仰ぎ見た。
「大丈夫、多分、彼の実力はあんな鬼たちじゃ相手にならないよ」
 実際、薫さんの実力を見たことは無いが、きっと薫さんも他の神様たちと同じく、この世の生物たちでは勝てるものはいないだろう。それでも、やっぱり少しの不安を覚えながら、僕は小鬼の肩を抱いて、薫さんの行く末を見守った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

処理中です...