神様のお導き

ヤマト

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5話目!桜の章 恋情フォルティッシモ!

5-1

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 今日も白さんと銀さんの心地よい歌声と美しい音色が家中に響き渡る。僕は仕事が終わったあとは、その歌声を聴きながら、居間でコーヒーを飲みつつ、この世界の知識をつけるために読書するのが日課になっていた。白さんと銀さんの歌声と楽器の音色は耳に心地よく、読書のBGMとするにはうってつけだった。リラックスしながらゆっくりと読書をする、働き詰めだったあの日々からすると、まるで夢のような時間だ。
 けれど、その夢も呆気なく崩れ去ることになる。
「タークトタクト! 買い物に行きましょー!」
「うげっ」
 桜、来襲。
「うげって何よ、うげって!」
 桜は僕が読書していることにも構わず、僕から本を取り上げて、その本の中身にざっと目を通した。
「あんたこんな意味わからん本読んでんの~?」
「世界の情勢の本だよ! 僕はこの世界のことまだあんまりよくわかってないから勉強してるんだ」
「ふ~ん? もっと面白い小説とか読んだら良いのに~」
「僕からしたら、全部ゲームや漫画みたいな話でとっても面白いんだよ」
 僕と桜は友達のようになんでも言い合える。こんな他愛もない話を気軽に出来るのは桜くらいのものだろう。桜はこの家の中では毛色が少し違っていて、とても人間味があって親しみやすい。だから、こんな軽口も気軽に言い合える。
「ま、とりあえず、世界のお勉強はそのくらいにしといて、買い物とデザート、食べに行きましょ」
 そう言って、バチンとウィンクする桜に、僕は渋々従うのであった。



 買い物とは言え、荷物を持たなくて良いのは素晴らしいことだ。桜はよくわからないものを色々買っていたが、桜の部屋は一体どうなっているのだろう。桜が買うものを見ていると、自然と興味が湧いた。
「それ、何に使うの?」
「これは美顔器よ。アンタがいた時代にもそういうのあったでしょ?」
「え、うん。あったけど、女の子じゃないからそういうの詳しくなくて……」
「アンタも美容の知識くらい少しは身につけた方が良いわよ。彼女とかできた時に理解ある彼氏くんのが好感持てるし」
「はぁ……」
 なんか知らないけどダメ出しされた。
 僕と桜は様々なジャンルの店を周り、もう三時のおやつ時になろうとしていた頃――
「じゃ、買い物はこれくらいにしといて、デザート食べに行きましょ!」
「いいね!」
「甘いもの大好きなタクトくんには、満足いただけるお店かと思いますぞ! 知る人ぞ知る隠れた名店へご案内~!」
「いえーい! さすが桜様~!」
 僕と桜は意味の無い、中身の無い会話をしながら人気のない路地裏へと差し掛かった。知る人ぞ知るという店だから、辺鄙な場所にでもあるのだろう。こういう道に差し掛かると、銀さんと出会ったあのスラム街の子達を思い出す。彼らは今どうしているだろう。元気かな。
 僕がぼんやりとそう考えていると――
「どいて下さい!」
 突然、道の奥の角から現れた女の人が僕達の方へと全速力で走ってきた。突然のことに僕は動けず、悠々と横に移動する桜を他所にその場で固まってしまった。彼女は全力疾走していた為、急には止まれず、僕に勢い良くぶつかり僕も彼女もぶつかった衝撃で地面に倒れてしまう。
「大丈夫?」
 桜は僕らを見下ろしてそう尋ねるが、女の人はその返事よりも先に僕に謝ってきた。
「ご、ごめんなさい! その、私急いでて――」
 彼女がそこまで言うや否や、彼女の後ろの方から数人の兵士がこちらに走ってきた。
「居たぞ!」
「捕まえろ!」
 人数は三人。彼らは彼女を追いかけていたらしく、僕らの方へと突進してくる。彼女は立ち上がり逃げようとしたが、彼女を庇うようにして桜が兵士の前に立ち塞がった。
「ちょっと、ちょっと、アンタたち! か弱い女の子一人に厳つい兵士が三人がかりで何の用よ!」
「な、なんだ、貴様は!」
「その女の仲間か!? そこをどけ!」
「邪魔するなら容赦はしないぞ!」
 桜の問に彼らは答えることはなく、とにかくそこをどくように桜に言った。しかし、それは桜には悪手だったようで、逆に彼女を怒らせてしまうことになる。
「だーかーらー! 何の用かって聞いてんの! アンタら耳ついてないわけぇ?」
 桜が自分の耳を指差して、挑発的な態度を取ったため、今度は兵士たちが激昂した。
「貴様、我々を愚弄するつもりか!」
「邪魔伊達するなら容赦はしない!」
「かかれ!」
 もうどちらもすごく短気で短絡的。兵士たちは桜に向かって襲いかかってきた。流石に武器は抜かなかったけれど、それでも女の子相手に三人がかりとは如何なものか。僕は咄嗟にしゃがみこんでいた体勢を立て直して、しゃがんでいた低い位置から手前の兵士に向かって脚を回して足払いをした。前に大鬼に教えてもらった喧嘩のやり方のひとつだ。一応何かの役に立つかと思って、その日から毎日ずっと練習していた。
 兵士は見事に体勢を崩し、前のめりに倒れ込み掛ける。桜はそれを見て「ナイス!」と、僕にウィンクを送ると、体勢を崩した兵士の後頭部に肘鉄をお見舞いした。
「おのれ···!」
 兵士たちも素手では勝てないと判断したのか、とうとう腰に吊るしていた剣を抜き、桜に向かって襲いかかった。桜の後ろに隠れていた女の人は「あぁっ!」と、恐怖で目を瞑り、自身を庇うように手を翳した。
 しかし、そんな恐怖に怯えることなど何の意味もない。桜は兵士たちの猛攻を避け、右手を前に翳した。
「アンタらがそういうつもりなら、あたしだって!」
 桜は翳した手の指をパチンと鳴らす。すると、その瞬間、兵士の周りをを綺麗な鱗粉のようなものが舞い、それを吸い込んだ兵士たちは、みるみるうちに膝から崩れ落ちていった。そのまま地面に倒れ動かなくなった兵士たちをよく観察すると、兵士たちはいびきを掻いて、ヨダレを垂らし、幸せそうに眠っていた。
「か弱い乙女を襲う不届き者はこうよ!」
 桜は腰に手を当て、仁王立ちでふんぞり返る。そんな桜を見て、僕は「おー」と、拍手をし、後ろにいた女の人は「凄い······」と、驚愕した。
「さ、今のうちに逃げるわよ!」
 桜は彼女の手を引き、細い道を駆け出した。
「え、ちょ、待ってよ!」
 置いてかれた僕はすぐさま立ち上がり、桜の背中を追いかけて、細い道の更に向こうへと向かうのだった。
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