96 / 173
5話目!桜の章 恋情フォルティッシモ!
5-6
しおりを挟む
桜の言う通り、床に転がる兵士たちはちょっとやそっとじゃ起きないようで、たまにうっかり物音などを立ててしまったり、兵士に躓いたりしたけれど、誰一人としてピクリとも起きる気配はなかった。完全に熟睡している兵士たちの中を練り歩き、僕らは豪華な一室の部屋の前へと辿り着いた。
「ここが王子の部屋です」
カマルさんは一度だけ王子の部屋に入ったことがあるようで、その部屋の装飾をよく覚えていた。桜は扉の前で寝ている兵士を横に退けて、思いっきりドアを開け放した。
「頼もー!」
全員寝ているからそんなこと言っても、誰も返事をしてくれないにも関わらず、桜は大声でそう言った。寝ているとは言え、起きてしまうかもしれないから、もう少し慎重に動いて欲しいものだ。けれど、この魔法に関して一番理解しているのも彼女だし、間違ってもそんなことは口にはしなかった。
大きな扉を開けると、豪華な天蓋ベッドの上で寝ている王子らしき人の姿があった。カマルさんは彼を見るなり、彼の傍へすぐさま駆け寄り、彼に寄り添った。
「あぁ……王子……。もう二度と会えないかと思ってました……」
カマルさんの瞳は少しだけ潤んでおり、王子と再会出来たことが、本当に嬉しかったのだと感じさせられた。でも、すぐさま王子に向き直り、カマルさんは王子を起こすために必死に呼びかけた。
「王子、起きて下さい! 王子!」
しかし、王子に声を掛けても、体を揺さぶっても、ピクリともせず、全く起きる気配がない。まぁ、そうだろう。そこら辺に転がっている兵士だって、僕らが何をしたって起きなかったのだから。
桜がカマルさんの隣へ来て、「どいてちょえだい」と、カマルさんを王子の前から退かせた。桜は王子の顔の前に手を持ってきて、パチンと指を鳴らした。すると、その音と同時に王子は突然夢から覚めたように体をビクリと動かして、ハッとして目を覚ました。
「ッ……! なんだ……!?」
目を覚まし、慌てた様子で辺りを見渡す王子に、カマルさんはいてもたってもいられず、勢い良く王子に抱きついた。
「王子!」
抱きつかれた王子は目の前にいるカマルさんに目を丸くして驚いたあと、喜びに満ちた顔でカマルさんを抱き締め返した。
「カマル! なぜここに!?」
「王子を助けに来たんですよ! この方たちと一緒に!」
カマルさんは自身の体を引いて、王子に僕らの姿が見えるようにして、僕らを簡単に紹介してくれた。
「あぁ、カマルを助けて下さりありがとうございました。なんとお礼を言ったら良いか……」
感慨深そうに僕らにお礼を言う王子だが、桜が王子の言葉を遮った。
「待った待った! 込み入った話は後で! 今はさっさとこの城から抜け出すわよ! バーがもう閉店時間で、バーのマスターに開店時間まで店内貸切にしてもらってるから、バーに戻るわよ!」
僕らは桜の言葉に頷き、すぐにその場を後にした。
バーに戻ると、さっきまで僕らがいた部屋の中が大変なことになっていた。
「…………」
桜はその光景に絶句した。桜に睨まれたその部屋にいたあの二人も我に返ったように絶句した。
テーブルの上には数え切れないほどの量の食器が重ねられており、白さんと銀さんの手にはデザートを食べるためのスプーンが握られていた。この短時間で自分の座高と同じ高さぐらいの食器の量の食べ物を二人は平らげており、それに対して桜も予想外だったらしい。そして白さんと銀さんも彼女の表情を見て、自分たちが食べすぎたという事実に凍りついていた。
「ちょ、ちょっと食べすぎちゃったかな?」
「そ、そうかもね……。ちょっとね……」
目線を泳がせながら言い訳しようとする白さんと銀さんに、桜は目を釣り上げて、大きな怒鳴り声を上げた。
「ちょっとって量じゃないわよぉおおおおおおおお!!!」
「ヒィッ」
「うっ……」
「良いこと!? このバーは閉店時間から開店時間まで貸切にしてもらうからお金はかなり上乗せして払ってる! でもね! ご飯は! こんなに食べちゃって上乗せ分だけじゃ足りないし、そもそも! 食材の在庫にだって限りがあんの! 仕入れとかどうすんのよ!? 明日も営業すんのよ!? わかってる!?」
その後、しばらくの間、白さんと銀さんは桜に叱られていた。なんか、白さんはしっかりしてて、どちらかと言えば叱る側のことが多いから、桜に叱られているのは新鮮に見えた。
そして、桜の説教が終わったところで、王子にこれまでの経緯を説明した。
「ここが王子の部屋です」
カマルさんは一度だけ王子の部屋に入ったことがあるようで、その部屋の装飾をよく覚えていた。桜は扉の前で寝ている兵士を横に退けて、思いっきりドアを開け放した。
「頼もー!」
全員寝ているからそんなこと言っても、誰も返事をしてくれないにも関わらず、桜は大声でそう言った。寝ているとは言え、起きてしまうかもしれないから、もう少し慎重に動いて欲しいものだ。けれど、この魔法に関して一番理解しているのも彼女だし、間違ってもそんなことは口にはしなかった。
大きな扉を開けると、豪華な天蓋ベッドの上で寝ている王子らしき人の姿があった。カマルさんは彼を見るなり、彼の傍へすぐさま駆け寄り、彼に寄り添った。
「あぁ……王子……。もう二度と会えないかと思ってました……」
カマルさんの瞳は少しだけ潤んでおり、王子と再会出来たことが、本当に嬉しかったのだと感じさせられた。でも、すぐさま王子に向き直り、カマルさんは王子を起こすために必死に呼びかけた。
「王子、起きて下さい! 王子!」
しかし、王子に声を掛けても、体を揺さぶっても、ピクリともせず、全く起きる気配がない。まぁ、そうだろう。そこら辺に転がっている兵士だって、僕らが何をしたって起きなかったのだから。
桜がカマルさんの隣へ来て、「どいてちょえだい」と、カマルさんを王子の前から退かせた。桜は王子の顔の前に手を持ってきて、パチンと指を鳴らした。すると、その音と同時に王子は突然夢から覚めたように体をビクリと動かして、ハッとして目を覚ました。
「ッ……! なんだ……!?」
目を覚まし、慌てた様子で辺りを見渡す王子に、カマルさんはいてもたってもいられず、勢い良く王子に抱きついた。
「王子!」
抱きつかれた王子は目の前にいるカマルさんに目を丸くして驚いたあと、喜びに満ちた顔でカマルさんを抱き締め返した。
「カマル! なぜここに!?」
「王子を助けに来たんですよ! この方たちと一緒に!」
カマルさんは自身の体を引いて、王子に僕らの姿が見えるようにして、僕らを簡単に紹介してくれた。
「あぁ、カマルを助けて下さりありがとうございました。なんとお礼を言ったら良いか……」
感慨深そうに僕らにお礼を言う王子だが、桜が王子の言葉を遮った。
「待った待った! 込み入った話は後で! 今はさっさとこの城から抜け出すわよ! バーがもう閉店時間で、バーのマスターに開店時間まで店内貸切にしてもらってるから、バーに戻るわよ!」
僕らは桜の言葉に頷き、すぐにその場を後にした。
バーに戻ると、さっきまで僕らがいた部屋の中が大変なことになっていた。
「…………」
桜はその光景に絶句した。桜に睨まれたその部屋にいたあの二人も我に返ったように絶句した。
テーブルの上には数え切れないほどの量の食器が重ねられており、白さんと銀さんの手にはデザートを食べるためのスプーンが握られていた。この短時間で自分の座高と同じ高さぐらいの食器の量の食べ物を二人は平らげており、それに対して桜も予想外だったらしい。そして白さんと銀さんも彼女の表情を見て、自分たちが食べすぎたという事実に凍りついていた。
「ちょ、ちょっと食べすぎちゃったかな?」
「そ、そうかもね……。ちょっとね……」
目線を泳がせながら言い訳しようとする白さんと銀さんに、桜は目を釣り上げて、大きな怒鳴り声を上げた。
「ちょっとって量じゃないわよぉおおおおおおおお!!!」
「ヒィッ」
「うっ……」
「良いこと!? このバーは閉店時間から開店時間まで貸切にしてもらうからお金はかなり上乗せして払ってる! でもね! ご飯は! こんなに食べちゃって上乗せ分だけじゃ足りないし、そもそも! 食材の在庫にだって限りがあんの! 仕入れとかどうすんのよ!? 明日も営業すんのよ!? わかってる!?」
その後、しばらくの間、白さんと銀さんは桜に叱られていた。なんか、白さんはしっかりしてて、どちらかと言えば叱る側のことが多いから、桜に叱られているのは新鮮に見えた。
そして、桜の説教が終わったところで、王子にこれまでの経緯を説明した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる