神様のお導き

ヤマト

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6話目!黒乃の章 記憶の足跡

6-9

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 リリーはミヤから聞こえてきた声に目を丸くして、ミヤの方を見た。
「え、今、ミヤ、あたしの名前を呼んで……」
「みゃ? そうにゃのかみゃ?」
「ええ!? ミヤが喋ってる!?」
 突然、ミヤが言葉を喋れるようになり、リリーは口を大きく開けて驚いた。
「みゃみゃ? リリー、みゃーの言葉がわかるのかにゃ?」
「え、え!? わー!? すごい! ミヤがホントに喋ってる! あたしの言葉もわかるの!?」
「みゃ? わかるみゃ」
「すごいすごーい! ミヤ凄いよ!!」
 リリーはやっと笑顔になって、ミヤの前で笑ってくれた。それを見て、ミヤはホッと一息吐いた。
「あのみゃ、リリー」
「なぁに? ミヤ」
「みゃーは確かに病気で死んでしまったけれど、みゃーはとっても幸せだったみゃ」
「ミヤ……」
 ミヤはリリーとの思い出をポツリポツリと語り出す。
「みゃーは最初は外で暮らしてたみゃ。けれどみゃーは事故で片目を失って、性格もこんみゃんだから、猫たちの中でも浮いていたみゃ。そんなある日、怖いニンゲン共に捕まって、見世物になったみゃ。けど、その見世物も他の猫にはニンゲン共は寄っていくのに、みゃーの顔を見ると、皆、哀れみの目を向けて困った顔をして離れて行ってたみゃ。なのに――」

 讓渡会に来ていたリリーと両親は、様々な猫を見ていた。そんな時、リリーは人が全く寄っていないミヤの姿を見つける。リリーはすぐさまミヤに駆け寄り、彼女の顔を見た。すると――
「あたしこの子にする!」
 みんなミヤに哀れみの目を向けていたのに、リリーだけは違ったのだ。ミヤを見てパッと笑顔を作ってすぐにミヤを抱いたのだ。
「その子、片目がないわよ?」
 ミヤの顔を見て、母親が少し困ったようにそう言うと、リリーは不思議そうな顔をしてこう言った。
「どうして? 片目無くてもこの子は可愛いよ! それに漫画のキャラクターみたいでカッコ良いじゃない!」
 誰もが否定したその目をリリーだけはチャームポイントとして見てくれたのだ。

「嬉しかった……。みゃぜだかわからみゃいけど、胸の真ん中辺りがポカポカしたみゃ……」

 その日からリリー達は厳密な審査を受け、数日後、ミヤを家族として迎え入れることとなる。
「あたしね、ずっとこの子の名前考えてた! この子はみゃーみゃー鳴くからミヤ! ミアじゃないよミヤだよ!」
「ふふ、はいはい、わかったわかった」
「今日からこの家の一員だぞ、ミヤ」

「みゃーが何みゃのか最初はよくわかってみゃかったけど、みゃーはリリーが付けてくれたこの名前を気に入っているみゃ」

 沢山の人に迎え入れられて、ミヤは最初のうちは困惑して警戒していた。けれど、毎日のように自分の顔を覗き込み、体を撫でたり、触ったり、それから、たくさんのご飯やおやつを与えてくれるリリーやその家族に、ミヤは少しずつ警戒心を解いていった。
 それからというもの、リリーとミヤはいつも一緒だった。一緒に遊んだり、一緒に日向ぼっこしたり、一緒に寝たり……。外からの生活が一変して、とても温かい日々に塗り変えられていく。それは全てリリーのおかげ。 だから、ミヤは彼女が喜べば一緒に喜ぶし、彼女が泣けば、その涙を拭って傍に居てあげる。彼女が怒れば、その場から逃げることもあったけど、最後にはいつも一緒だった。

「確かに、家に迎えられてからは外にも出れなくて退屈だとも思ったみゃ。けど、それ以上に、リリーと一緒にいる時間が幸せだったみゃ。リリーに抱きしめられた時の温かい手も、腕も、鼻を擽る長い髪も、全部、全部好きだみゃ」
「ぅん……っ。うんっ!」
 リリーはミヤとの思い出話にまた涙を流しながら、何度も何度も深く頷いた。
「泣き虫で、でも優しいリリーが大好きだみゃ」
「あたっ……あたし、もっ……グスッ……あたしも、ミヤが大好きっ……!」
「だからもうみゃかないで。みゃーはリリーの笑顔が大好きだみゃ。幸せをくれてありがとう」
 ミヤはそっと、リリーの鼻に自分の鼻を近付けた。さよならの合図。
「もしまた元気にみゃったら、あの見世物の場所に行って、みゃーみたいな子を幸せにしてほしいみゃ。そしたらリリーも寂しくないし、みゃーも幸せだみゃ」
 段々とミヤの姿が薄くなっていく。それはミヤがこの世から未練が無くなり、天へと還っていく証拠。ミヤの体が徐々に空へと舞い上がり、リリーの傍から離れていく。リリーはそれをとめるように、必死にミヤの体を掴もうと手を伸ばした。
「ミヤ! 待って! 行かないでぇっ! 傍にいてよっ! 一人にしないでぇっ!」
「それはできみゃいみゃ。でもみゃーは、ずっとリリーのことを天から見守っているみゃ。リリーがこれから先大人になっても、ずっと、ずぅっと」
「ミヤ……」
 ミヤの体は、とうとうリリーの背よりも高くなり、リリーが手を伸ばしても届かなくなってしまった。リリーももうミヤが旅立つことを察して、溢れる涙をゴシゴシと服の袖で拭った。
「ミヤ、ありがとう! ずっとずっと忘れないから! あたしと一緒にいてくれてありがとう! 大好きだよ!!!」
「みゃあ。リリーからその言葉が聞けて良かったみゃ。みゃーもリリーが大好き。みゃーにたくさんの幸せをくれた分、リリーも幸せになるんだみゃ。バイバイ、みゃーの可愛い子」
 ミヤの体はとうとう目には見えなくなり、光の中へと消えていった。
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