神様のお導き

ヤマト

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6.5話目! 十三神巡り

6.5-10 テネブラエ編

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 僕とアキラくんは今、神殿の隠し地下にある一室のドアの前に居た。そのドアからは重低音のサウンドと女の人の激しいシャウトが聞こえてくる。
「今からこの中に入ります 」
「えっ、あ、はい……」
「どうせ声を掛けても、ノックしても聞こえないでしょうから、そのまま入ります」
「えっ!? 良いの!?」
「では、行きましょう」
 アキラくんは何の躊躇いもなしに、その重く冷たい扉を開けた。ゴゴゴゴゴ……というような重く無機質な音が地下に響き渡る。その扉を開けると、途端に物凄い音が耳を劈き、僕は思わず耳を塞いだ。耳を塞ぎながらも中の様子を確認すると、ゴシック調の大きなダブルベッドの上で、激しく飛び跳ねながらシャウトをしている一人の少女の姿があった。部屋は全体的に暗く、全て黒と赤のゴシックな家具で揃えてある。骸骨の模型と棺桶があるけど、あれは本物じゃないよね……?
 アキラくんは彼女に声を掛けることもなく、腕を組んでその様子を傍観していた。彼女は僕らに気付くことなく、叫び、歌い、飛び跳ねて、やっと一曲終わったところで、ベッドにダイブし、CDコンポを弄ろうとした。そこでやっとアキラくんが声を掛ける。
「こんにちは」
 彼女はそのままコンポの停止ボタンを押し、ギギギとぎこちない動きでアキラくんの方を見た。真っ黒な目がアキラくんの姿を映し出す。しばらく無言の状態が続き、静寂がその場を支配した。そして――
「どぅわっ!? 〇×△□#◎§☆*¥≒%&@仝!?」
 聞き取れない意味のわかない奇声を発し、ベッドの掛け布団をガシッと両手で掴み、その布団で自らの姿を隠した。
「ななななななななな!? いいいいいつからそこに!?」
 羞恥で顔を真っ赤にして布団の中に隠れる彼女を見て、僕は知らない人に日記を読まれたかのような反応をする彼女に、とても申し訳ない気持ちと罪悪感を抱いた。
「のののののノックは!?」
「しましたよ」
 しれっと平然と嘘をつくアキラくんに、僕は驚きながら彼を見た。しかし、彼は変わらず無表情。なんていう意地の悪さ……! 恐ろしい子……!
「大丈夫ですか?」
「だだだ大丈夫にみ、見える!?」
「いえ、全然」
「な、何なのよ! アンター!」
 淡々と正直に受け答えするアキラくんに、少女は苛立ち、キー! と、声を上げた。なんか、可哀想になってきたな……。
「もー! 何しに来たのよ!」
 布団に隠れながら威嚇する少女に、アキラくんは淡々と答える。
「先生から事前に聞いているはずですよ。今日は僕らが訪問するって」
「ええ……? そうだったっけ……?」
 少女は少し焦った様子で目を泳がせながら、自身の記憶を探り出す。そして、一頻り唸ったあと、何か思い当たる節があったようで「あ」と、短い声を上げていた。
「そ、そ、そうだった、そうだった。きょ、今日はいつものアレ、やりに来たんだったよね。う、うん、ももも、勿論、おぼ、覚えてるよ」
 絶対忘れてたよな、と思ったけど、敢えてそれは言わないことにした。これ以上なんか言ったら、彼女、パニックになってしまうかもしれない。
「あの、これ菓子折りです。ここに置いときますね」
 アキラくんは菓子折りを本当にすぐに足元の床に置くと、少女は「か、菓子折り!?」と、食いついて、少し喜んでいるようだった。それより、置く場所はそこで良いんだ……? 彼女はあまり他人に近付かれたく無いのかもしれない。ATフィールドがあるようだ。
「ふ、ふん……! か、菓子折りに免じて、いつもの質問にも答えてあげる!」
「ありがとうございます。でもその前に、彼の紹介をさせて下さい」
「ん?」
 アキラくんは少女に僕が見えるように体を横に退けて、僕のことを簡単に紹介してくれた。
「あ、あぁ……。拓斗ね。き、聞いてるわ……。わ、わわ私の名前はテネブラエ。闇の神よ。み、みんなテェテェとか闇子とか好きに呼んでるから、て、適当に呼んで」
「あ、ありがとうございます。じゃあテネブラエちゃんで……」
 彼女がどもるから、僕も釣られてどもってしまう。テネブラエちゃんは人見知りなうで、布団に蹲ったまま出てこないし、それを思うと本当にさっきのはっちゃけていた所を盗み見たのは本当に申し訳なく思った。
「では、貴女も早く一人になりたいでしょうから、さっさと質問を終わらせますね。まず、体調はどうですか?」
「た、体調……? あ、アンタたちが来たせいで最悪よ……!」
 そ、それは申し訳ないことをした。メンタル面は確かに最悪だろう。
「じゃあ他に日頃変わったことはありませんか。街の様子とか人々の様子とか」
「べ、別に……、近頃魔族がうるさい事くらいしか……。あ、あとはアレね。わ、私の好きなヴィジュアル系バンドがもうすぐアルバムを出すの……。ま、待ちきれないわ……」
「そうですか」
 アキラくん全く興味なさそう……! 完全無表情の無関心スルーをキメるアキラくんに、僕はテネブラエちゃんが可哀想になって、ついその事について聞いてしまった。
「どんなバンドなの?」
 しかし、それは聞いてはいけないことだった。
「ちょ、拓斗さん……!」
「え?」
「そそそそそそそそそそんなに気になる!? わ、私の好きなヴィジュアル系バンドは、こ、このバンドなんだけど」
 突然、テネブラエちゃんはガバッと布団を放り投げて、近くの棚からガサゴソと何枚かCDを取り出してきた。
「こ、このバンドは昔から音楽活動してるのに、全然化粧も薄くならなくて、音楽も変わらず激しめでめちゃくちゃ良いのよね! 普通だとメジャーになった瞬間、化粧が薄くなってポップな感じな曲歌い出すのに、それがないからめちゃくちゃ推せる! しかも、ライブでも古参のファンのために昔の曲も歌ってくれたりして、ファンサも良いのよ。そ、それでね、楽曲はいつもみんなで編曲してるの。だ、だからなのかしら、いつも曲にそのバンドのらしさがあって、変わらず良いのよね。も、もし興味あるなら、このバンド名の表記が変わったあたりから聴くのがオススメ! ここからは更に曲の完成度も増して、普通の人にも聴きやすいし。で、でもね! 昔の曲もめちゃくちゃ良いのよ! と、特にこの曲は――」
 や、やってしまった。何故アキラくんが華麗にスルーしていたのかわかった。なんかのいけないスイッチが入ってしまった。僕は、それから小一時間、彼女の熱心なバンドのプレゼンを聞くこととなった。



「拓斗さん、わかりましたね」
「はい……」
 彼女に解放されたあと、僕の手には彼女から焼き増ししてもらったバンドのアルバムが数枚握られていた。聴いたらまた会った時に感想を聞かせてほしいとのこと。
 僕は深く深く反省した。
「良いですか、拓斗さん。オタクと言うのはどんなジャンル問わず、少しでもそれに興味があると思わせたら、他人のことなんかお構い無しに早口で、どんな作品なのかどんな内容なのかどんな物なのか、聞いてもいないことをドンドン語り出す人種なんですから! 無闇やたらにやぶ蛇をつついちゃダメですよ!」
「はい……。肝に銘じておきます……」
 そういえば、碧ちゃんも漫画の話したら、似たような状態になるっけ……。オタク凄い……。
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