神様のお導き

ヤマト

文字の大きさ
122 / 173
6.5話目! 十三神巡り

6.5-10 テネブラエ編

しおりを挟む
 僕とアキラくんは今、神殿の隠し地下にある一室のドアの前に居た。そのドアからは重低音のサウンドと女の人の激しいシャウトが聞こえてくる。
「今からこの中に入ります 」
「えっ、あ、はい……」
「どうせ声を掛けても、ノックしても聞こえないでしょうから、そのまま入ります」
「えっ!? 良いの!?」
「では、行きましょう」
 アキラくんは何の躊躇いもなしに、その重く冷たい扉を開けた。ゴゴゴゴゴ……というような重く無機質な音が地下に響き渡る。その扉を開けると、途端に物凄い音が耳を劈き、僕は思わず耳を塞いだ。耳を塞ぎながらも中の様子を確認すると、ゴシック調の大きなダブルベッドの上で、激しく飛び跳ねながらシャウトをしている一人の少女の姿があった。部屋は全体的に暗く、全て黒と赤のゴシックな家具で揃えてある。骸骨の模型と棺桶があるけど、あれは本物じゃないよね……?
 アキラくんは彼女に声を掛けることもなく、腕を組んでその様子を傍観していた。彼女は僕らに気付くことなく、叫び、歌い、飛び跳ねて、やっと一曲終わったところで、ベッドにダイブし、CDコンポを弄ろうとした。そこでやっとアキラくんが声を掛ける。
「こんにちは」
 彼女はそのままコンポの停止ボタンを押し、ギギギとぎこちない動きでアキラくんの方を見た。真っ黒な目がアキラくんの姿を映し出す。しばらく無言の状態が続き、静寂がその場を支配した。そして――
「どぅわっ!? 〇×△□#◎§☆*¥≒%&@仝!?」
 聞き取れない意味のわかない奇声を発し、ベッドの掛け布団をガシッと両手で掴み、その布団で自らの姿を隠した。
「ななななななななな!? いいいいいつからそこに!?」
 羞恥で顔を真っ赤にして布団の中に隠れる彼女を見て、僕は知らない人に日記を読まれたかのような反応をする彼女に、とても申し訳ない気持ちと罪悪感を抱いた。
「のののののノックは!?」
「しましたよ」
 しれっと平然と嘘をつくアキラくんに、僕は驚きながら彼を見た。しかし、彼は変わらず無表情。なんていう意地の悪さ……! 恐ろしい子……!
「大丈夫ですか?」
「だだだ大丈夫にみ、見える!?」
「いえ、全然」
「な、何なのよ! アンター!」
 淡々と正直に受け答えするアキラくんに、少女は苛立ち、キー! と、声を上げた。なんか、可哀想になってきたな……。
「もー! 何しに来たのよ!」
 布団に隠れながら威嚇する少女に、アキラくんは淡々と答える。
「先生から事前に聞いているはずですよ。今日は僕らが訪問するって」
「ええ……? そうだったっけ……?」
 少女は少し焦った様子で目を泳がせながら、自身の記憶を探り出す。そして、一頻り唸ったあと、何か思い当たる節があったようで「あ」と、短い声を上げていた。
「そ、そ、そうだった、そうだった。きょ、今日はいつものアレ、やりに来たんだったよね。う、うん、ももも、勿論、おぼ、覚えてるよ」
 絶対忘れてたよな、と思ったけど、敢えてそれは言わないことにした。これ以上なんか言ったら、彼女、パニックになってしまうかもしれない。
「あの、これ菓子折りです。ここに置いときますね」
 アキラくんは菓子折りを本当にすぐに足元の床に置くと、少女は「か、菓子折り!?」と、食いついて、少し喜んでいるようだった。それより、置く場所はそこで良いんだ……? 彼女はあまり他人に近付かれたく無いのかもしれない。ATフィールドがあるようだ。
「ふ、ふん……! か、菓子折りに免じて、いつもの質問にも答えてあげる!」
「ありがとうございます。でもその前に、彼の紹介をさせて下さい」
「ん?」
 アキラくんは少女に僕が見えるように体を横に退けて、僕のことを簡単に紹介してくれた。
「あ、あぁ……。拓斗ね。き、聞いてるわ……。わ、わわ私の名前はテネブラエ。闇の神よ。み、みんなテェテェとか闇子とか好きに呼んでるから、て、適当に呼んで」
「あ、ありがとうございます。じゃあテネブラエちゃんで……」
 彼女がどもるから、僕も釣られてどもってしまう。テネブラエちゃんは人見知りなうで、布団に蹲ったまま出てこないし、それを思うと本当にさっきのはっちゃけていた所を盗み見たのは本当に申し訳なく思った。
「では、貴女も早く一人になりたいでしょうから、さっさと質問を終わらせますね。まず、体調はどうですか?」
「た、体調……? あ、アンタたちが来たせいで最悪よ……!」
 そ、それは申し訳ないことをした。メンタル面は確かに最悪だろう。
「じゃあ他に日頃変わったことはありませんか。街の様子とか人々の様子とか」
「べ、別に……、近頃魔族がうるさい事くらいしか……。あ、あとはアレね。わ、私の好きなヴィジュアル系バンドがもうすぐアルバムを出すの……。ま、待ちきれないわ……」
「そうですか」
 アキラくん全く興味なさそう……! 完全無表情の無関心スルーをキメるアキラくんに、僕はテネブラエちゃんが可哀想になって、ついその事について聞いてしまった。
「どんなバンドなの?」
 しかし、それは聞いてはいけないことだった。
「ちょ、拓斗さん……!」
「え?」
「そそそそそそそそそそんなに気になる!? わ、私の好きなヴィジュアル系バンドは、こ、このバンドなんだけど」
 突然、テネブラエちゃんはガバッと布団を放り投げて、近くの棚からガサゴソと何枚かCDを取り出してきた。
「こ、このバンドは昔から音楽活動してるのに、全然化粧も薄くならなくて、音楽も変わらず激しめでめちゃくちゃ良いのよね! 普通だとメジャーになった瞬間、化粧が薄くなってポップな感じな曲歌い出すのに、それがないからめちゃくちゃ推せる! しかも、ライブでも古参のファンのために昔の曲も歌ってくれたりして、ファンサも良いのよ。そ、それでね、楽曲はいつもみんなで編曲してるの。だ、だからなのかしら、いつも曲にそのバンドのらしさがあって、変わらず良いのよね。も、もし興味あるなら、このバンド名の表記が変わったあたりから聴くのがオススメ! ここからは更に曲の完成度も増して、普通の人にも聴きやすいし。で、でもね! 昔の曲もめちゃくちゃ良いのよ! と、特にこの曲は――」
 や、やってしまった。何故アキラくんが華麗にスルーしていたのかわかった。なんかのいけないスイッチが入ってしまった。僕は、それから小一時間、彼女の熱心なバンドのプレゼンを聞くこととなった。



「拓斗さん、わかりましたね」
「はい……」
 彼女に解放されたあと、僕の手には彼女から焼き増ししてもらったバンドのアルバムが数枚握られていた。聴いたらまた会った時に感想を聞かせてほしいとのこと。
 僕は深く深く反省した。
「良いですか、拓斗さん。オタクと言うのはどんなジャンル問わず、少しでもそれに興味があると思わせたら、他人のことなんかお構い無しに早口で、どんな作品なのかどんな内容なのかどんな物なのか、聞いてもいないことをドンドン語り出す人種なんですから! 無闇やたらにやぶ蛇をつついちゃダメですよ!」
「はい……。肝に銘じておきます……」
 そういえば、碧ちゃんも漫画の話したら、似たような状態になるっけ……。オタク凄い……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...