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7話目!灰冶の章 夢境の栞
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家の裏にある大きな広場。そこで僕はくろの黒乃に稽古をつけてもらっていた。黒乃は僕よりも二十センチも身長が高く、ガタイも良い。彼から繰り出される攻撃は速く、威力も高い。勿論、手加減してはくれているけど、それでも並の人よりも遥かに強いのだ。僕は避けるだけで精一杯で、なかなか反撃に出られずにいた。
「おいおい、避けるだけじゃ戦いは終わらねぇよ」
黒乃に挑発されて、僕はなんとか黒乃から隙を窺おうとした。冷静に。落ち着いて。焦ってはダメだ。黒乃が大振りに腕を引いたその時、僕はその僅かな隙を見逃さなかった。その隙を突き、僕は拳を構えた状態で前足を踏み込み、彼の間合いに入った。そのまま素早く彼の鳩尾に前拳を繰り出した。――筈だった。
「うわっ!?」
気付けば僕は地面に倒れ込み、空を見上げていた。真っ青な空の中に黒乃の姿が入り込み、僕をニヤニヤとした顔で見下ろしている。
「へへっ、惜しかったな」
どうやら僕は、前拳を繰り出した腕を掴まれて、そのまま地面に投げ倒されたようだった。今のは絶対イけると思ったのに……。
「悔しい」
「その悔しいって気持ちは大事だぞ」
黒乃は僕に手を差し出し、僕もその手を握り返す。黒乃の力強い手が僕の手を引っ張り上げて、僕は軽く宙を浮いたが、何とか立ち上がる。
「でも普通の奴相手ならお前ももう勝てると思うぜ」
「そうかなぁ?」
「まっ、相手が悪かったな!」
ガハハハハと豪快に笑う黒乃に僕は苦笑いした。そうやって黒乃と組手をしている時だった。そこに珍しいお客さんが来た。
「あら、精が出るわね」
「ん? 灰冶」
「灰冶さん!」
現れたのは灰冶さんで、大きな木を背にして腕を組んで立っていた。
灰冶さんは相変わらず抜群のモデルスタイルで、どんな服も見事に着こなす。彼は針山家の中でも圧倒的なスタイルの良さだと思う。みんな手足長いけど。
普段は白いジャケットに黒のシャツ、白のネクタイに白のスラックスを穿いていて、黒の革手袋を身につけている。それから、靴は黒の革靴。丁寧に磨き上げられていて、いつも埃一つない。コーディネートだけを書き出すと、普通の格好のようにも思えるけど、少しゴシックな雰囲気のある格好で、普通の格好とは一味違うのが彼だ。化粧も濃い黒のアイシャドウに、黒の口紅をしていて、雰囲気も相まって独特なスタイルだ。今日はそのコーディネートに白い中折帽子を被っていた。
「どこか出掛けるのか?」
黒乃さんはその僅かな違いで察したのか、灰冶さんにそう質問する。灰冶さんはニッコリと笑い、頷いた。
「えぇ、そうよ。今から街に錬金術の道具の仕入れに行くの。良かったら、彼も一緒にどうかと思って」
彼というのは僕のことだろうか? 僕は意外な人からの意外なお誘いに、目を瞬かせながら自分を指差した。
「えぇ、そう、貴方よ、拓斗。迷惑なお誘いだったかしら?」
「いっいえ! とんでもない! ただ、意外だっただけで!」
「あら、そうかしら? 私もそろそろ貴方とゆっくりお話したいと思っていたし、今後どうなるにせよ、街に出て見聞を広めておくに越したことはないでしょう?」
灰冶さんの気遣いに、僕はブンブンと首を縦に振った。
「首もげるぞお前」
ヘッドバンキングの如く激しく首を振る僕に、黒乃がボソリとツッコミを入れていた。僕はそんな黒乃に視線を向けた。黒乃はそれだけで僕が何を言おうとしたのか察したのか、シッシッと手で僕を払い除けるように動かした。
「いいよ、行ってこいよ。別にお前がいなくても俺は変わらずトレーニングするし、そういう機会はちゃんと有効に使う方が良い」
「あ、ありがとう! この埋め合わせはまたするから!」
「埋め合わせって……。別にンなもん要らねぇから、さっさと行って、自分の為に見識広めてこい。ん? 見聞か? ま、どっちでも良いや。行ってこい行ってこーい」
黒乃は僕を灰冶さんの所まで追いやると、ホントにすぐに自分のトレーニングに戻ってしまった。黒乃にとっては僕がいてもいなくても変わらないんだろうけど、僕は黒乃がいてくれるから頑張れるし、色々と教えて貰える。またお礼に何かしなきゃな。
「ふふ、微笑ましいわね」
心を読まれているのかいないのか、よくわからないけど、灰冶さんにクスクスと笑われて、僕は少し恥ずかしくなって俯いた。
「さ、じゃあ早速行くわよ」
「はい!」
僕は灰冶さんに連れられて、テラの街へと繰り出した。今日は一体どんなものに出逢えるのだろう。
「おいおい、避けるだけじゃ戦いは終わらねぇよ」
黒乃に挑発されて、僕はなんとか黒乃から隙を窺おうとした。冷静に。落ち着いて。焦ってはダメだ。黒乃が大振りに腕を引いたその時、僕はその僅かな隙を見逃さなかった。その隙を突き、僕は拳を構えた状態で前足を踏み込み、彼の間合いに入った。そのまま素早く彼の鳩尾に前拳を繰り出した。――筈だった。
「うわっ!?」
気付けば僕は地面に倒れ込み、空を見上げていた。真っ青な空の中に黒乃の姿が入り込み、僕をニヤニヤとした顔で見下ろしている。
「へへっ、惜しかったな」
どうやら僕は、前拳を繰り出した腕を掴まれて、そのまま地面に投げ倒されたようだった。今のは絶対イけると思ったのに……。
「悔しい」
「その悔しいって気持ちは大事だぞ」
黒乃は僕に手を差し出し、僕もその手を握り返す。黒乃の力強い手が僕の手を引っ張り上げて、僕は軽く宙を浮いたが、何とか立ち上がる。
「でも普通の奴相手ならお前ももう勝てると思うぜ」
「そうかなぁ?」
「まっ、相手が悪かったな!」
ガハハハハと豪快に笑う黒乃に僕は苦笑いした。そうやって黒乃と組手をしている時だった。そこに珍しいお客さんが来た。
「あら、精が出るわね」
「ん? 灰冶」
「灰冶さん!」
現れたのは灰冶さんで、大きな木を背にして腕を組んで立っていた。
灰冶さんは相変わらず抜群のモデルスタイルで、どんな服も見事に着こなす。彼は針山家の中でも圧倒的なスタイルの良さだと思う。みんな手足長いけど。
普段は白いジャケットに黒のシャツ、白のネクタイに白のスラックスを穿いていて、黒の革手袋を身につけている。それから、靴は黒の革靴。丁寧に磨き上げられていて、いつも埃一つない。コーディネートだけを書き出すと、普通の格好のようにも思えるけど、少しゴシックな雰囲気のある格好で、普通の格好とは一味違うのが彼だ。化粧も濃い黒のアイシャドウに、黒の口紅をしていて、雰囲気も相まって独特なスタイルだ。今日はそのコーディネートに白い中折帽子を被っていた。
「どこか出掛けるのか?」
黒乃さんはその僅かな違いで察したのか、灰冶さんにそう質問する。灰冶さんはニッコリと笑い、頷いた。
「えぇ、そうよ。今から街に錬金術の道具の仕入れに行くの。良かったら、彼も一緒にどうかと思って」
彼というのは僕のことだろうか? 僕は意外な人からの意外なお誘いに、目を瞬かせながら自分を指差した。
「えぇ、そう、貴方よ、拓斗。迷惑なお誘いだったかしら?」
「いっいえ! とんでもない! ただ、意外だっただけで!」
「あら、そうかしら? 私もそろそろ貴方とゆっくりお話したいと思っていたし、今後どうなるにせよ、街に出て見聞を広めておくに越したことはないでしょう?」
灰冶さんの気遣いに、僕はブンブンと首を縦に振った。
「首もげるぞお前」
ヘッドバンキングの如く激しく首を振る僕に、黒乃がボソリとツッコミを入れていた。僕はそんな黒乃に視線を向けた。黒乃はそれだけで僕が何を言おうとしたのか察したのか、シッシッと手で僕を払い除けるように動かした。
「いいよ、行ってこいよ。別にお前がいなくても俺は変わらずトレーニングするし、そういう機会はちゃんと有効に使う方が良い」
「あ、ありがとう! この埋め合わせはまたするから!」
「埋め合わせって……。別にンなもん要らねぇから、さっさと行って、自分の為に見識広めてこい。ん? 見聞か? ま、どっちでも良いや。行ってこい行ってこーい」
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「さ、じゃあ早速行くわよ」
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僕は灰冶さんに連れられて、テラの街へと繰り出した。今日は一体どんなものに出逢えるのだろう。
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