神様のお導き

ヤマト

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8話目!優輝の章 灰色から色付く世界

8-7

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「たっだいま~」
 優輝さんはやることをやったと満足そうな顔をして物陰に帰ってくる。僕は彼が帰ってくるや否や、疑問に思っていたことを口にした。
「あの子たち、姿とか声が周りの人から感知されなくなってたみたいだけど、もう見えるようになってるの?」
「当たり前じゃーん。姿形見えなかったら、家から抜け出す時、両親に叱られないでしょ?」
「…………」
 理由はともあれ、彼らの姿はちゃんと元に戻ったようで安心した。しかし、さっきの光景を見たことで、ライリーくんには優輝さんが少年たちと同じように未知の存在に見えていた。ライリーくんは僕の後ろに隠れながら、恐る恐る優輝さんに尋ねた。
「ゆ、ユウキさんって……何者なんですか?」
 その質問に優輝さんは冷めた態度のまま素っ気なく答えた。
「そんなのどうでも良いじゃん。それより今は、今夜あいつらの顔を拝みに行くのが先決じゃん」
 優輝さんに答えをはぐらかされ、ライリーくんは少し不信感を覚えながらも小さく頷いた。
「あ、あいつらの様子見に行くの?」
「あったり前じゃん、あんなクソガキ共の怯える姿とか傑作に決まってるもんね」
「なんと悪趣味な……」
「黙れ、もやし」
 僕はただ正直に感想を述べただけなのに、優輝さんにもやし扱いされてしまった。僕も最近鍛えてるから、そこまでもやしではなくなったはずなんだけどな……。僕は少し自信を無くした。
「それより、さっきの噂、本当なの?」
 僕はさっき優輝さんが言った噂の真偽がわからず、首を傾げてそう聞いた。
「んー、半分ホントで半分嘘だね~。昔から祠はあるし、そういう噂もあるよ。ただ、実際なんか出るかは真偽が別れるね」
「へー」
 優輝さんはその昔からある噂を利用して、彼らを誘導したのか。
「ああ言っとけば、あいつらは噂にビビって、ライリーのことをイジメなくなるでしょ。それに、僕みたいな未知の存在がバックにいるってわかって手も出しづらくなる。完璧でしょ」
 僕的には噂の効果より、優輝さん自身の効果の方がでかいと思うけどな。しみじみそう思っていると、ライリーくんが申し訳なさそうにおずおずと口を開いた。
「あ、あの……」
「何?」
 ライリーくんに気付いて、優輝さんは彼に視線を向けた。ライリーくんは彼に視線を向けられて、少し怯えながらも精一杯の誠意を込めて頭を下げた。
「お、オレ、行けません!」
「え、なんで?」
 僕も優輝さんも少し呆気に取られて、お互いに顔を見合わせた。
「オレ、母さん一人だから、心配掛けられないし……」
 そい言えば彼はそんなことを言っていた。父親を火事で亡くしているからと。確かにそんな事情があれば致し方ない気もする。しかし、優輝さんはさもどうでも良さそうに「へーき、へーき」と、彼が続けて謝ろうとする言葉を遮った。
「君の母さんには僕が話つけてあげるから」
「え?」
 優輝さんのやけに自信満々な態度に僕もライリーくんも首を傾げた。



「あらぁ! 優輝さんじゃないのー!」
 僕らはライリーくんに案内され、早速ライリーくんのお母さんに挨拶しに行った。すると、ライリーくんのお母さんは、優輝さんを知っているみたいでにこやかに歓迎してくれる。
「こんにちは、ご無沙汰してます」
 優輝さんは猫を被り、爽やかな笑みを浮かべて、礼儀正しく挨拶していた。
「え、母さん、ユウキさんと知り合いなの?」
 ずっと前からの知り合いと話すような態度の母親に、ライリーくんは唖然としてそう尋ねた。すると、ライリーくんのお母さんは、手で口を押さえて可笑しそうに笑った。
「何言ってるの。優輝さんは昔からのご近所さんじゃない。いつも優しくしてもらって」
「え」
「…………」
 驚き固まるライリーくんの反応を見て、僕は優輝さんを見た。優輝さんは素知らぬ顔で僕の視線から顔を逸らしていた。
 この人、やったな。
 恐らく、優輝さんはライリーくんのお母さんの記憶を改竄したか、灰冶さんが前にやっていた洗脳のようなことをやっている。多分、この人は誰が相手で周りに誰が居ようと、平気で神の力を行使する人だ。神と疑われても、神と知られても平気なのだろう。
「じゃあ今夜は僕の家でご飯を食べてくので、帰りは遅くなります。帰りはちゃんと僕が家まで送るので大丈夫ですよ」
「まぁ、優輝さんの家なら安心ね。ライリー、楽しんでくるのよ。優輝さんに迷惑掛けちゃダメよ?」
「え、あ……う、うん……」
 ライリーくんは未だこの状況が飲み込めず、ただ流されるままに頷くしか無かった。僕らはライリーくんのお母さんに挨拶した後、家から離れた。
「……い、今のって……」
 まだ小さいライリーくんにはさっきの状況はかなり恐ろしく感じただろう。彼は無意識のうちに僕の手を握り、僕の傍から離れようとしなかった。
「ちょっと記憶をいじっただけだよ。そんな怖がることないじゃん。お陰で、お母さんに心配掛けずに夜抜け出せることになったでしょ?」
 平然とそう言う優輝さんに、ライリーくんは少し怯えながらも「そ、そうだね……」と、小さく返事をした。彼の目には今優輝さんはどう映っているのだろうか。自分のために何かをしてくれようとはしているけれど、人は未知の存在に遭遇すると、恐怖を感じざるを得ない。良かれと思ってやっていることも、全て裏目に出てしまう。彼らにとって、神様と化け物は表裏一体なのかもしれない。
「あ、そうそう」
 突然、優輝さんが思い出したように声を上げた。
「一応その祠にはあいつらが着く前に行って、君が祠に来た証拠を添える必要があるからね。なんか自分の証明になる要らないもの用意しててね」
 優輝さんにそう言われ、ライリーくんはゴソゴソと自身のポケットを漁った。
「こ、これでも良いかなぁ……。家の鍵に付けてたものなんだけど……」
 ポケットから出てきたのは自身の名前がマジックで書かれたアクリルキーホルダーだった。それは碧ちゃんに勧められて観ていた日曜の朝にやっている戦隊モノのキーホルダーで、かなり使い古されているのか、所々傷だらけだった。
「うん、良いね。君とわかるものなら何でも良いよ」
 優輝さんにOKを貰い、ライリーくんはホッとしたように胸を撫で下ろした。
「じゃあ、時間になるまで、どっかの店で飯食いながら、時間潰す、よ……」
「よ……?」
 突然、優輝さんが固まった。僕とライリーくんは顔を合わせて、不思議そうに優輝さんを見た。すると、優輝さんは「あーーーーーー!!!!!」と、何か思い出したように頭を抱え、発狂し出した。
「白と晩御飯食べれないーーーーーー!!!!!」
 優輝さんはどこまで行っても優輝さんだった。
「こんなクソみたいな奴らと晩飯食うなんて最悪だーーーーーーーーーー!!!!!」
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