神様のお導き

ヤマト

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8話目!優輝の章 灰色から色付く世界

8-11

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「あーあ、もっといたぶってやれば良かったのにー」
 茂みからつまんなそうな顔をして優輝さんが出てきた。彼は子供に対しても容赦がなく、大人気ない。
「まさか、君が飛び出てくるなんて予想外だよー。君のこと侮ってた」
 優輝さんはライリーくんを見て、少し見直したようだった。以前より少し棘が無い。
「と、言うか、噂は本当だったんですね。あんな化け物がいるなんて……」
 僕は先程の竜の姿をした炎を思い出して、そう呟いた。すると、優輝さんは眉を下げて、僕を哀れむように見た。
「君、まだ気付いてないの?」
「え? 何が?」
 僕は優輝さんの言っていることがわからず、首を傾げた。すると、突然またあの大きな青い炎が現れて、僕とライリーくんはギョッとして身構えてしまう。
「さっきの!」
 僕はライリーくんを守ろうと、ライリーくんをギュッと抱きしめた瞬間――
「わっ!」
 甲高い可愛らしい女の子の声が耳元に聞こえてきた。僕はその声に聞き覚えがあり、その声が聞こえた方向に恐る恐る視線を向けた。そこには、以前十三神巡りで出会ったフランマの姿があった。
「どう? ビックリした!? アタシの演技、なかなかのもんだったでしょー!」
 にっこりとしたあどけない笑みを浮かべ、僕らに手を振るフランマ。僕はポカーンとして間の抜けた顔で彼女を見た。ライリーくんも突然現れた似ても似つかない少女の姿に、僕の腕から抜け出して、フランマの頭の先からつま先まで隅々まで観察していた。
「ドラゴンの……女の子……?」
 困惑するライリーくんに、僕は簡単に彼女の説明をした。
「え!? 神様!?」
 ライリーくんは突然の神様の登場に信じられないと驚いていたが、それは僕も同じだ。何故こんなところに彼女の姿が。その疑問は優輝さんが説明してくれた。
「そもそもこの祠って、彼女のものなんだよね」
「え? でもフランマにはフランマの神殿があるんだよね?」
 僕はこの目で見てはいないが、神様にはそれぞれ神殿があるとアキラくんから聞いていた。
「本体は神殿だけど、それ以外にも小さな祠が世界中にいくつもあるんだよ。神殿一個だけじゃ、他の国の人がそこまで行くのにめちゃくちゃしんどいでしょ。その祠がある場所なら彼らはすぐに空間転移で飛んでけるしね」
 そう言われたら、そうなのか……? よく分からないけど、神殿とは別に、神様を祀る小さな祠がいくつも点在しているという認識で良いのだろうか。
「今回、その祠が変な噂立ってたから、噂を利用したついでに彼女にも今回の作戦に協力して貰ったんだよね」
「今回の作戦……?」
 僕とライリーくんは同じタイミングで同じように質問した。
「そ。今回のことはぜーんぶ茶番。あいつらが祠に行こうが行くまいが、前も言ったように、僕という未知の存在なバックにいることと、噂の効果であいつらがライリーを虐めることはほぼなくなってたけど、もしあいつらが祠に行った時のために第二の作戦を用意してたわけ」
「祠に男の子たちが来たら、アタシが彼らに勝負を仕掛けて脅かして欲しいってユッキーから言われてたの!」
 フランマの説明はよく分かったけど、フランマって優輝さんのことユッキーって呼んでるんだ……。
「でも勝負と言えばあの質問、もし正解してたらどうするつもりだったの?」
 勝負はとても哲学的な質問だった。一応命の重さは平等だという答えが正解だったけど、今回はたまたま彼らが間違えた答えを答えていた。それに対して、もし彼らが正解を答えていたらどうしていたつもりだったのだろう。もし、正解してそのまま彼らを家に帰していれば、噂なんてこんなものかと慢心して、ライリーくんを虐めることを続けていたかもしれない。
 フランマはニカッと八重歯を見せて笑って、僕の質問にこう答えた。
「それに関しては何答えても不正解にするつもりだったから問題ないよ!」
「え!?」
 僕とライリーくんはとても理不尽な答えに目を丸くした。
「命の重さが平等だと答えたら、人は皆、命を奪い食料の糧として生きている。それは罪の重さであり、魂に課せられた業の重さ。奪った命の分、命は不平等となる。そして、外道の魂は軽く、善を重ねるものの命は重い。そんな汝らは人を虐めて精神的に追い込んでいるらしいな! 汝らの魂こそ軽いものよ! 身の程を知れ! ――ってな感じでね。この手の問題は答えがないからね」
 フランマはさっきの竜の姿をした炎の口調を真似して言っていたが、とてもさっきのような渋くどっしりとした声ではなかった。可愛らしい女の子ががんばって低い声を出しているだけだった。そこらへんの声の原理は置いといて、まさかそんな答えを用意していたとは思わなかった。僕もライリーくんも呆気に取られて、呆然としていた。呆気に取られる僕らを他所に、優輝さんが説明を続ける。
「そんで、適当に軽く彼らを焼いて貰って、気を見計らって、僕か君が止めに入って万事解決ーっていうのを目論んでたのね。そしたら、ライリーが飛び出していくからビックリしたね」
 優輝さんはライリーくんが彼らを助けることだけは決してしないと踏んでいたのか、そう言って肩を竦めていた。フランマも優輝さんの横から「アタシもアタシも!」と、優輝さんにうんうんと頷いていた。
「そんな勇気のある優しい子には~」
 フランマはライリーくんの手を取ると、そこにボウと、小さな炎を灯した。フランマに握られたライリーくんの手は小さな炎に包まれていたが、ライリーくんは熱がることもせず、その手に灯った炎を見つめていた。
「熱くない……。温かい……」
 その炎はゆらゆらと燃えて、やがてだんだんと小さくなり、彼の手に吸収されるようにゆっくりと消えていった。
「これでキミも炎使い!」
「え!?」
 フランマはライリーくんから手を離して、いだすらにそう笑った。
「アタシの力を少し分けてあげたよ! 所謂契約だね! これからキミは好きな時に炎の力を借りることができる! それをどこまで伸ばせるかはキミ次第だけどね!」
「…………!」
 ライリーくんは突然の神様からの贈り物に驚き、嬉しさと驚きで変な顔になっていた。
「あはは、君も皮肉屋だねぇ~。炎で焼かれた親のことがトラウマになって、目の前で焼かれる人見たくないって彼は言ってるのに、そんな彼に炎の力なんて~」
「ユッキー! 魔法は人に使う事だけじゃないよ! 火の魔法なら料理だって簡単に作れるし、旅した時焚き火だってすぐつけられて便利なんだからねー!」
 優輝さんに対してムッとするフランマの言葉に、ライリーくんはあははと、声を出して笑った。
「確かに、そうかもしれませんね」
 彼がちゃんと笑ったのは初めて見るかもしれない。これから彼にどんな運命が待っているかは、きっと神様にしかわからない。それでも、これから彼の歩む道が光で照らされていることを祈るばかりだ。
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