神様のお導き

ヤマト

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8.5話目!はじめてのおつかい アキラより

8.5-10

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 拓斗さんは袋が軽くなったお陰で、やっと片手で持てるようになった。残りはお菓子と化粧品だけだ。けれど、もう片方の手には別の袋が下げられている。少し帰りが遅かったので、自分用に何か買ってきたのかもしれない。

 次は桜さんの所へ向かった。拓斗さんはリラックスした様子でドアをノックし、桜さんが出てくるのを待った。
「はーい」
 桜さんは軽く返事をしてガチャリとドアを開いた。
「あら、タクト、おかえり~」
「ただいま。頼まれたもの、一応買ってきたよ。ただ――」
「ただ?」
 途中で視線を逸らして言い淀む拓斗さんに、桜さんは首を傾げた。
「その、ブラウンってどのブラウンを買えば良いのか分からなくて、合ってるかわからないんだけど……」
 そう言って、自信なさそうに顔を引き攣らせて恐る恐る化粧品を袋から取り出した。桜さんはそれをひょいと奪い取り、パッケージを確認した。
「うんうん、ちゃんとキュンメイクのクリミナルタッチアイライナーね。それから、色はー……」
 まじまじとパッケージを見て色の名前を確認する桜さんを見て、拓斗さんはゴクリと息を飲んだ。
「ブラウン。そう、ブラウン! 合ってるわよ」
 ニコッと笑う桜さんに、拓斗さんはホッと息を吐いて胸を撫で下ろした。
「なんかたくさんの種類のブラウンがあって、本当にそれかわからなかったんだよね」
「なーに言ってんの。ブラウンと言ったらブラウンよ。女子はね、男子と違って同系色の色を一纏めに呼んだりしないの。こんだけ種類があれば、ちゃんと一つ一つそれぞれの名前で呼ぶわよ。またひとつ賢くなったわね、タクト」
 クスクスと笑って拓斗さんの額を小突く桜さん。彼らはとても親密な様で、友人そのものの関係だった。
「そうだ、タクト、口開けて」
 突然、桜さんにそう言われて、拓斗さんは考える暇もなく、言われるがままに口を開けた。すると、桜さんは拓斗さんの口の中に、何か固形の四角いものを放り込んだ。拓斗さんは突然口に入れられた何かに、反射的に咀嚼した。
「ん、これ……」
「どう? 美味しい?」
「甘くて美味しい!」
 どうやらそれはお菓子だった様で、拓斗さんは酷く喜んでいた。彼は甘いものが大好きですからね。
「今行きつけのお店で売ってる限定ものなんだ~。またアンタも一緒に連れてってあげる!」
「良いの!? 楽しみ!」
「ふふ、じゃあ、今回はお使いありがとう。見たところまだ他の家族のとこに回らなきゃならないみたいだし、頑張ってね~」
「うん、ありがとう! またね」
 拓斗さんは桜さんに別れを告げて、次の人の所へと向かった。

 次は白さんと銀さんの部屋に行き、未だゲームに熱中する二人の後ろに座った。
「拓斗さん! おかえりなさい」
 どうも今回はキリよくゲームを終えたようで、白さんと銀さんはコントローラーを床に置いて、すぐに後ろを振り返って拓斗さんを見た。
「二人のお菓子買ってきましたよ」
「わーい」
 銀さんが棒読みで喜んでみせる。この人は声に抑揚がないし、表情もほとんど変わらないので、実際どう思っているかは心を読まない限り謎だ。まぁ僕程度じゃ、銀さんの心を読めるほどの力は無いのですが。
「あの、パッキーが期間限定の味が出てまして……」
「期間限定!?」
「おお……!」
 拓斗さんの期間限定という言葉に二人が食いついた。やはり、この二人は食いしん坊だけあって、期間限定に弱い。
「それでお二人からはパッキーとしか聞いてなくて、普通のとどっちを買えば良いのか分からなかったので、両方とも買ってきました!」
 袋から二種類のお菓子が取り出される。ちゃんとどちらも二個ずつ取り揃えていて、白さんと銀さんは声を揃えて「おお!」と、歓声を上げた。
「わーい! ありがとうございます! 拓斗さん!」
「ありがとう、拓斗」
 二人はさっそく期間限定の箱を取り、嬉しそうにそのパッケージを見ていた。
「冬の口付け味ですかー! 毎年出るんですよね! これ美味しいんですよ!」
「ん。ん」
 銀さんは既に箱を開けてパッキーを食べ始めており、部屋の中に甘ったるい匂いが充満していた。
「あ、そうだ、お礼!」
 パッキーに夢中になるあまり、白さんはお礼のことを忘れていて、思い出したように声を上げた。
「拓斗さん、これお駄賃」
 白さんから拓斗さんに渡されたのは少し高級そうな万年筆と分厚い鍵付きの本。
「拓斗さん、今の生活について日記を付けたいと言ってましたし、銀と要らないものを漁っていたんです。使っていない万年筆と鍵付きの日記帳があったので、是非、と思いまして」
 拓斗さんは高級感のある万年筆と日記帳にキラキラと子供のように目を輝かせた。この人は今日だけで何度目を輝かせるのだろう。つくづく無邪気で純粋な方だと思う。
「良いんですか!? こんな高そうなもの!」
「良いんですよ。誰も使ってませんから。誰かに使われた方が物も喜びますからね」
「ありがとうございます!」
 白さんと銀さんにお礼を言うと、拓斗さんは大事そうにその二つを抱えた。そして、二人に別れの挨拶を済ませ、残りのお菓子を渡しに向かうのだった。
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