【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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逢い引き

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 大好きなその名を呼ぶだけで、薫子の胸がギュッと絞られるように苦しくなる……

 後ろの帯を潰さないように軽く背中から抱き締められているにも関わらず、悠に包み込まれていると感じているだけで、悠の熱が流れ込むように薫子の躰を熱くさせた。

 来て、くれた。悠が、ここに……来てくれた……

 後ろから回された悠の引き締まった腕にそっと手を添える。
白い長袖のシャツを通して伝わる悠の少し骨張った腕の感触と低い体温の熱が、これは現実なのだと薫子に気付かせてくれる。

「来てくれて、嬉しい……」

 噛みしめるように呟いた。

「薫子……」

 着物に合わせて高めに結い上げている為に露わになった薫子の細く白いうなじに悠が顔を埋める。

 熱く甘い吐息とともに、悠の漆黒の髪がサラサラと薫子の首筋に降り掛かる。こそばゆく、躰の芯が熱くなるような感覚に薫子は身を震わせた。

 突然、強い風が吹き付ける。薫子の前髪と悠の髪の毛を乱れさせ、周りの木々がざわざわと揺れ、水面に波紋が広がる。

 まるで、何かの警告を示しているように感じた薫子は、夢から醒めたようにハッとした。

 あっ……私達、こんなところで抱き合って……

 ふたりが抱き合っているところを誰かに見られてしまうかもしれない。

「ゆ、悠……ここ、外…」

 薫子は、悠の腕の中から離れようとした。

「だめ……」

 悠が離れようとした薫子の両腕をぐっと引き寄せ、細いうなじをなぞるように、下から上へとツーッと舌を這わせた。

「ぁあっ……悠っっ……!!!」

 ゾクゾクと震えが走り、目尻に涙が溜まる。

 いつもは私が嫌がることは絶対にしない悠が、こんなことするなんて……

「俺以外の男と……親しくしてた、罰……」

 遼ちゃんといたところ、見られてたんだ……

 遼が立ち去ったすぐ後、悠から抱きしめられたのだから当然と言えば当然のことなのだが、その事に薫子は酷く落ち込んだ。

「んぅふぅっ……ハァ…やぁっ……」

 薫子がうなじが弱いのを知っているかのように、悠がそこを執拗に責め立てる。悠の舌が羽で撫でるような微妙な柔らかさでうなじを上下する度に、薫子の首筋から背中にかけて痺れるような震えが走り、それが下腹部の奥の方にジンとした疼きのようなものを生み出す。

 今までにもこんな感覚を感じた事はあったが、これほどの強い疼きを感じたことはなかった。

 遼ちゃんのこと……悠に、ちゃんと……話さ、なくちゃ……

「ンッ……親しく、なんって…」
「してた」

 否定しようとした薫子の両肩に悠が手を置く。肩をまわして躰ごと半回転させられると、悠と向かい合わせとなった。

 真正面に立つ悠の、髪の色と同じ黒曜石のような漆黒の瞳に映る真剣な眼差しが、薫子の瞳を捉えて離さない……不謹慎にもそれを、美しい……と思ってしまった。

 いつもは感情の見えない悠の表情が、今は眉間に皺が寄り、少し曇ったように見える。と言っても、かなり小さな変化なので、その変化に気付く人はまずいないが。

「随分あの男と仲良くしてたみたいだったけど……お見合いの席で初めて会って、あんなことするなんて……一体、何者……?」

 中等部から入学した悠は、小等部卒業後に引っ越してしまった遼とは面識がないのだ。

 会話までは聞かれていなかったみたい……

 悠の言葉に安堵したが、デコピンされたり、顎を強打したところやアヒル口、頬を思いっきり引っ張られたことを思い出して、薫子は顔面蒼白になる。

 あ、あんなところを……悠に見られてたなんて……恥ずかし過ぎて、逃げ出したい……
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