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鉢合わせ
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薫子は、斜め向かいに座る大和を改めて見つめた。目の下には隈があり、眠れていないであろうことが窺えた。
あの日、大和はどうして悠の家の前に立っていたの? 何があったの?
それは、親友である悠や私にも話せないことなの?
「ねぇ、大和...顔色が良くないけど、大丈夫?」
少しでも話の糸口を掴みたくて、薫子はそう言った。大和が何か話してくれることを期待しながら......
大和は掠れた声で笑った。
「あぁ...ちょっと体調崩してて。それで、かな」
この話はこれで終わりだと言わんばかりに、薫子から目を逸らす。これ以上聞けない雰囲気を感じ、薫子も口を閉ざすしかなかった。
大和はその気まずさを誤魔化すように、遼に話しかけた。
「それにしても、あのパーティーで会った時には遼が態度全然違うから別人になっちまったのかと思ってたけど、やっぱ遼は遼だったな」
遼に笑いかけた大和だが、長年の付き合いからただ気丈に振る舞っているのだと薫子には分かり、それが余計に胸を痛くさせる。
「それ、どういう意味だよ! 仕方ねぇだろ、薫子の親父さんの前で素の俺見せるわけにいかねぇんだから......将来、義理の父親になるわけだし、いい顔しとかねぇと」
その言葉に薫子はビクッとした。
隣に、悠がいるのに......
唇を噛み締めたまま俯いていると、フォークとナイフを持つ手に自然に力が込もる。
ふと、靴に何か触れる感触がした。何かの拍子に誰かの足が当たったのかと思っていたら、もう一度それは離れてから触れた。
悠、だ......
悠が、自分を安心させるために合図を送ってくれているのだと思うと、薫子は嬉しさで胸がいっぱいになった。
部屋に忍んで来た時の悠の言葉を思い起こす。
『俺には薫子しか見えてないから。他の女性も、君の婚約者も、君の父親も...何も。
だから、心配しないで欲しいってことを伝えに来た』
悠はどんなことがあろうと真っ直ぐに私を信じてくれる。私だけを見ていてくれる。
......そう伝えてくれることが何よりも嬉しい。
貴方への愛おしさが、私の中でまた膨らんでいく。
幸い、カフェテリアのテーブルには白いテーブルクロスがかけられており、覗こうと思わない限り、足の動きまで見られることはない。
そう、わかっていても......薫子には、悠の靴に触れることなど出来なかった。
悠に、自分も貴方を信じてると伝えたいのに、目の前に遼が、周りに好奇の目があると思うと、足が震えて指先ひとつ動かせずにいた。
悠は、ちゃんと私に伝えてくれているのに。言葉と行動で、私を安心させようとしてくれているのに......
そんな悠の愛情に、私はなにひとつ応えることが出来ないでいる。
本当に好きなのに。
......でも、本当に好きだからこそ、心から悠を愛しているからこそ......私には、無理なの。お願い、どうか...分かって......
遼が突然テーブルに両肘を投げ出し、手を組んで顎を載せ、悠の顔をじっと凝視する。
見つめられている悠はもちろん、向かいに座る薫子、そして隣に座っている大和ですらその視線に気づき、皆一様にゴクリと喉を鳴らした。
何かが始まりそうな気配に、カフェテリアを包み込む空気も緊張感に包まれる。
「何ですか...」
悠が漆黒の瞳を真っ直ぐに遼に向けた。その途端、薫子の心臓が握りつぶされているかのように苦しくなる。
.....もしかして、遼ちゃん。悠がテーブルの下で私に合図を送っていたことに気づいたのかな。
私と悠が、恋人同士だと知られてしまったのかもしれない......
そう考えたら、フォークとナイフを持つ手が小刻みに震え出し、冷たい汗が額から滲み出るのを感じる。
遼ちゃん、何を言うつもりなの......
あの日、大和はどうして悠の家の前に立っていたの? 何があったの?
それは、親友である悠や私にも話せないことなの?
「ねぇ、大和...顔色が良くないけど、大丈夫?」
少しでも話の糸口を掴みたくて、薫子はそう言った。大和が何か話してくれることを期待しながら......
大和は掠れた声で笑った。
「あぁ...ちょっと体調崩してて。それで、かな」
この話はこれで終わりだと言わんばかりに、薫子から目を逸らす。これ以上聞けない雰囲気を感じ、薫子も口を閉ざすしかなかった。
大和はその気まずさを誤魔化すように、遼に話しかけた。
「それにしても、あのパーティーで会った時には遼が態度全然違うから別人になっちまったのかと思ってたけど、やっぱ遼は遼だったな」
遼に笑いかけた大和だが、長年の付き合いからただ気丈に振る舞っているのだと薫子には分かり、それが余計に胸を痛くさせる。
「それ、どういう意味だよ! 仕方ねぇだろ、薫子の親父さんの前で素の俺見せるわけにいかねぇんだから......将来、義理の父親になるわけだし、いい顔しとかねぇと」
その言葉に薫子はビクッとした。
隣に、悠がいるのに......
唇を噛み締めたまま俯いていると、フォークとナイフを持つ手に自然に力が込もる。
ふと、靴に何か触れる感触がした。何かの拍子に誰かの足が当たったのかと思っていたら、もう一度それは離れてから触れた。
悠、だ......
悠が、自分を安心させるために合図を送ってくれているのだと思うと、薫子は嬉しさで胸がいっぱいになった。
部屋に忍んで来た時の悠の言葉を思い起こす。
『俺には薫子しか見えてないから。他の女性も、君の婚約者も、君の父親も...何も。
だから、心配しないで欲しいってことを伝えに来た』
悠はどんなことがあろうと真っ直ぐに私を信じてくれる。私だけを見ていてくれる。
......そう伝えてくれることが何よりも嬉しい。
貴方への愛おしさが、私の中でまた膨らんでいく。
幸い、カフェテリアのテーブルには白いテーブルクロスがかけられており、覗こうと思わない限り、足の動きまで見られることはない。
そう、わかっていても......薫子には、悠の靴に触れることなど出来なかった。
悠に、自分も貴方を信じてると伝えたいのに、目の前に遼が、周りに好奇の目があると思うと、足が震えて指先ひとつ動かせずにいた。
悠は、ちゃんと私に伝えてくれているのに。言葉と行動で、私を安心させようとしてくれているのに......
そんな悠の愛情に、私はなにひとつ応えることが出来ないでいる。
本当に好きなのに。
......でも、本当に好きだからこそ、心から悠を愛しているからこそ......私には、無理なの。お願い、どうか...分かって......
遼が突然テーブルに両肘を投げ出し、手を組んで顎を載せ、悠の顔をじっと凝視する。
見つめられている悠はもちろん、向かいに座る薫子、そして隣に座っている大和ですらその視線に気づき、皆一様にゴクリと喉を鳴らした。
何かが始まりそうな気配に、カフェテリアを包み込む空気も緊張感に包まれる。
「何ですか...」
悠が漆黒の瞳を真っ直ぐに遼に向けた。その途端、薫子の心臓が握りつぶされているかのように苦しくなる。
.....もしかして、遼ちゃん。悠がテーブルの下で私に合図を送っていたことに気づいたのかな。
私と悠が、恋人同士だと知られてしまったのかもしれない......
そう考えたら、フォークとナイフを持つ手が小刻みに震え出し、冷たい汗が額から滲み出るのを感じる。
遼ちゃん、何を言うつもりなの......
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