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遼の想い
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ようやく二人きりになり、宣言通りイケメンになって帰ってきた俺に緊張する薫子の気持ちをほぐしてやるために、素の俺を明かした。
「それにしても、本当にビックリした……まさか、お見合いの相手が遼ちゃんだったなんて……」
やっぱり薫子は、見合い相手が俺だったことに相当、驚いたようだ。
ここはちゃんと、男らしく言っとかねぇとな。
「だって……ほら……約束、しただろーが?」
そう思うのに、いざとなると言葉がでねぇ。
やっべぇ...顔が熱くなってきた。こんなカッコ悪いとこ見せらんねぇ......
橋の手摺に両腕をのせて顔を逸らす。
「やく、そく?」
そんな俺に、薫子の間の抜けた声が響いた。
薫子の方へと振り向くと、全く分からない、といった表情をしている。
っざけんなよ......
薫子の唇を親指と人差し指で摘むとアヒル口にした。
「おっ前!どの口が言ってんだ?あん?……
ほんとに…覚えて、ないのかよ?」
俺があんとき、どんだけ勇気出して告ったと思ってんだ!それを覚えてねぇとか......ありえねーだろが!!!
「ご、ごめんなひゃい……」
そんな俺の気も知らず、薫子はアヒル口のまま謝った。
「ほら、小等部の卒業式の日、言っただろーが。『いつかお前のこと迎えに行ってやるから、それまで大人しく待ってろよ!』って」
超ハズいし、まさか2度も言わされると思わなかった......
ほら、早く思い出せよ。
「え……?」
マジ、かよ......ほんっとに、覚えてねぇんだな......
全身の力が抜け、その場にガックリと項垂れる。
俺は......なんのためにこれまで頑張ってきたんだ。あの約束があったから、薫子が待ってると思ってたから、ここまで来れたのに......
......けどまぁ、それで落ち込むことはねぇ。それで俺たちの関係が変わるわけじゃねぇんだし。
あん時聞いてなかったんなら、今ここで約束すればいいだけだ。
気が晴れると立ち上がった。
「……ふんっ、まぁ、いい……これからは親公認ってことで、大学も同じとこにしたし、堂々とデートできるぞ、喜べ!
……おいっ、何しゃがみ込んでんだ、薫子?」
なぜか薫子は顎を押さえて蹲っていた。
よろよろと立ち上がり、俺を見上げる。
「りょ…遼ちゃん、そのことなんだけど…」
薫子の瞳が不安げに揺れる。
っだよ、何心配してんだ。
俺はありとあらゆる可能性を考え、あいつの不安の芽を摘んでやり、安心させてやった。
学生結婚や同棲の話を聞いて目を丸くしたあいつの反応を見て、厳しい父親がそんなこと許すはずないとビックリしてるんだと俺は思ってた。
んな心配すんな。俺が全部まとめて面倒みてやっから、お前は安心してついてこりゃいいんだ。
あいつとの将来の生活を思い描いていた俺に、突然薫子の大きな声が響いた。
「そ、そうじゃないのっっ!!!」
その反応に、ビクッとする。
こ、んな大声出したのとか......初めて聞いた。マジ、びびったし。
「な、なんだよ……」
「お、願い……聞いて……」
真剣な顔で薫子が俺を見上げる。
え...こいつ、こんな顔とかすんのか。てか、前に会った時からすっげぇ綺麗になったよな......言えねぇけど。
意識した途端、さっきまでみたいに喋れなくなった。
「わぁーったよ。なんだよ、言ってみろよ」
薫子はすぅっと深呼吸すると、俺の目を見た。その瞳には決意が込められていた。
「……このお見合い、なかったことにして欲しいの……」
「それにしても、本当にビックリした……まさか、お見合いの相手が遼ちゃんだったなんて……」
やっぱり薫子は、見合い相手が俺だったことに相当、驚いたようだ。
ここはちゃんと、男らしく言っとかねぇとな。
「だって……ほら……約束、しただろーが?」
そう思うのに、いざとなると言葉がでねぇ。
やっべぇ...顔が熱くなってきた。こんなカッコ悪いとこ見せらんねぇ......
橋の手摺に両腕をのせて顔を逸らす。
「やく、そく?」
そんな俺に、薫子の間の抜けた声が響いた。
薫子の方へと振り向くと、全く分からない、といった表情をしている。
っざけんなよ......
薫子の唇を親指と人差し指で摘むとアヒル口にした。
「おっ前!どの口が言ってんだ?あん?……
ほんとに…覚えて、ないのかよ?」
俺があんとき、どんだけ勇気出して告ったと思ってんだ!それを覚えてねぇとか......ありえねーだろが!!!
「ご、ごめんなひゃい……」
そんな俺の気も知らず、薫子はアヒル口のまま謝った。
「ほら、小等部の卒業式の日、言っただろーが。『いつかお前のこと迎えに行ってやるから、それまで大人しく待ってろよ!』って」
超ハズいし、まさか2度も言わされると思わなかった......
ほら、早く思い出せよ。
「え……?」
マジ、かよ......ほんっとに、覚えてねぇんだな......
全身の力が抜け、その場にガックリと項垂れる。
俺は......なんのためにこれまで頑張ってきたんだ。あの約束があったから、薫子が待ってると思ってたから、ここまで来れたのに......
......けどまぁ、それで落ち込むことはねぇ。それで俺たちの関係が変わるわけじゃねぇんだし。
あん時聞いてなかったんなら、今ここで約束すればいいだけだ。
気が晴れると立ち上がった。
「……ふんっ、まぁ、いい……これからは親公認ってことで、大学も同じとこにしたし、堂々とデートできるぞ、喜べ!
……おいっ、何しゃがみ込んでんだ、薫子?」
なぜか薫子は顎を押さえて蹲っていた。
よろよろと立ち上がり、俺を見上げる。
「りょ…遼ちゃん、そのことなんだけど…」
薫子の瞳が不安げに揺れる。
っだよ、何心配してんだ。
俺はありとあらゆる可能性を考え、あいつの不安の芽を摘んでやり、安心させてやった。
学生結婚や同棲の話を聞いて目を丸くしたあいつの反応を見て、厳しい父親がそんなこと許すはずないとビックリしてるんだと俺は思ってた。
んな心配すんな。俺が全部まとめて面倒みてやっから、お前は安心してついてこりゃいいんだ。
あいつとの将来の生活を思い描いていた俺に、突然薫子の大きな声が響いた。
「そ、そうじゃないのっっ!!!」
その反応に、ビクッとする。
こ、んな大声出したのとか......初めて聞いた。マジ、びびったし。
「な、なんだよ……」
「お、願い……聞いて……」
真剣な顔で薫子が俺を見上げる。
え...こいつ、こんな顔とかすんのか。てか、前に会った時からすっげぇ綺麗になったよな......言えねぇけど。
意識した途端、さっきまでみたいに喋れなくなった。
「わぁーったよ。なんだよ、言ってみろよ」
薫子はすぅっと深呼吸すると、俺の目を見た。その瞳には決意が込められていた。
「……このお見合い、なかったことにして欲しいの……」
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