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追い詰められる心
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挨拶が終わると次々にお祝いの言葉がかけられる。
薫子は引き攣った笑顔で、固いお辞儀をした。その表情を見ていればこの婚約が彼女の意思と反することは一目瞭然だったが、そんなことに気遣う者は誰もいなかった。
重役たちの興味の矛先は、遼にのみ向けられていた。将来龍太郎の跡を継ぎ、櫻井財閥のトップに立つであろう彼に、なんとか取り入ろうと必死だ。口々に遼の優秀さを讃え、これから櫻井財閥での活躍を期待する声を述べている。
そんな人々に遼はひとりひとり丁寧に対応し、これからのビジョンを語った。
「櫻井財閥は金融、貿易、商業施設......と幅広い事業を展開し、日本の政財界にまで大きな影響を与えています。
だが一方で、未来を見据えた先端事業の投資に対して慎重すぎるところがありました。私は、そういった櫻井財閥が今までに手をつけていなかった分野での事業拡大に貢献したいと考えています」
生意気な若輩者が何を言うか...といった腹黒い考えをもつ者ももちろんんいたが、そういった表情はおくびにも出さず、一様に遼の見解を称賛した。
私なんて、ここにいなくても誰の目に留められることもない。
いったい私は、何のためにいるんだろう。ただのお飾り......そんなことは分かっていたはずなのに、虚しくなる。
「私」という人間が必要とされるのではなく、「櫻井財閥の娘」であること。それこそが私の価値なのだと、痛感させられる。
そして、その価値とは櫻井財閥を継ぐに相応しい男の妻となることなのだと......
遼に少しでも目をかけてもらおうと集まる群衆から、薫子は避けるように後ろに下がろうとした。その薫子の着物の袖を、遼が掴む。
「もちろん仕事は大事ですが、妻の支えなくしてはやっていけません。彼女は、私がずっと結婚しようと心に決めていた人です。こうして婚約して彼女とこれからの人生を歩めることは、私の仕事への大きな情熱と歩みの力になります。
皆様、どうぞ未熟な私達を支え、ご指導の程よろしくお願い致します」
遼が、深く頭を下げた。
周りの空気が一瞬で変わる。一瞬たじろぐ者、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる者、思わずクスリと笑みをこぼす者......重役たちは様々な反応ではあったものの、言えることは皆、この若者の情熱溢れる発言に驚きを隠せなかったことだった。
どうせ親同士の決めた政略結婚だと思っていたマスコミも、一途な恋が結んだうえでの結婚だと知り、話題性が上がりそうだと大いに沸いた。
遼、ちゃん......
薫子も目を見張り、思わず遼を見上げた。遼の言葉は少なからず薫子に嬉しさを齎した反面、益々追い詰められていく気分だった。
遼ちゃんが、初めて私を想ってくれていたことを真正面から伝えてくれた。
もし私が彼を好きだったら、どんなに嬉しい言葉だったか......
けれど、私にとっては......遼ちゃんの温かいはずの言葉は、凶器のように私の胸に迫り、抉り出す。
私の周りに高い壁が張り巡らされて。逃げ場をなくして、息が詰まりそう......
薫子は、追い詰められた心が縮みこんでいくのを感じた。
薫子は引き攣った笑顔で、固いお辞儀をした。その表情を見ていればこの婚約が彼女の意思と反することは一目瞭然だったが、そんなことに気遣う者は誰もいなかった。
重役たちの興味の矛先は、遼にのみ向けられていた。将来龍太郎の跡を継ぎ、櫻井財閥のトップに立つであろう彼に、なんとか取り入ろうと必死だ。口々に遼の優秀さを讃え、これから櫻井財閥での活躍を期待する声を述べている。
そんな人々に遼はひとりひとり丁寧に対応し、これからのビジョンを語った。
「櫻井財閥は金融、貿易、商業施設......と幅広い事業を展開し、日本の政財界にまで大きな影響を与えています。
だが一方で、未来を見据えた先端事業の投資に対して慎重すぎるところがありました。私は、そういった櫻井財閥が今までに手をつけていなかった分野での事業拡大に貢献したいと考えています」
生意気な若輩者が何を言うか...といった腹黒い考えをもつ者ももちろんんいたが、そういった表情はおくびにも出さず、一様に遼の見解を称賛した。
私なんて、ここにいなくても誰の目に留められることもない。
いったい私は、何のためにいるんだろう。ただのお飾り......そんなことは分かっていたはずなのに、虚しくなる。
「私」という人間が必要とされるのではなく、「櫻井財閥の娘」であること。それこそが私の価値なのだと、痛感させられる。
そして、その価値とは櫻井財閥を継ぐに相応しい男の妻となることなのだと......
遼に少しでも目をかけてもらおうと集まる群衆から、薫子は避けるように後ろに下がろうとした。その薫子の着物の袖を、遼が掴む。
「もちろん仕事は大事ですが、妻の支えなくしてはやっていけません。彼女は、私がずっと結婚しようと心に決めていた人です。こうして婚約して彼女とこれからの人生を歩めることは、私の仕事への大きな情熱と歩みの力になります。
皆様、どうぞ未熟な私達を支え、ご指導の程よろしくお願い致します」
遼が、深く頭を下げた。
周りの空気が一瞬で変わる。一瞬たじろぐ者、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる者、思わずクスリと笑みをこぼす者......重役たちは様々な反応ではあったものの、言えることは皆、この若者の情熱溢れる発言に驚きを隠せなかったことだった。
どうせ親同士の決めた政略結婚だと思っていたマスコミも、一途な恋が結んだうえでの結婚だと知り、話題性が上がりそうだと大いに沸いた。
遼、ちゃん......
薫子も目を見張り、思わず遼を見上げた。遼の言葉は少なからず薫子に嬉しさを齎した反面、益々追い詰められていく気分だった。
遼ちゃんが、初めて私を想ってくれていたことを真正面から伝えてくれた。
もし私が彼を好きだったら、どんなに嬉しい言葉だったか......
けれど、私にとっては......遼ちゃんの温かいはずの言葉は、凶器のように私の胸に迫り、抉り出す。
私の周りに高い壁が張り巡らされて。逃げ場をなくして、息が詰まりそう......
薫子は、追い詰められた心が縮みこんでいくのを感じた。
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