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約束
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パタン、と小さく音をたてて閉められた音が耳に響いた。そこは、ホテルの部屋かと思うぐらい明るく、清潔感が漂っていた。扉のない仕切りの奥には付添人用の部屋があり、そこに悠の母親のものと思われる私物が置かれていた。
明るい陽射しに照らされた真っ白なベッドに人の気配を感じる。
「っ......」
だが、ベッドにいる悠の姿を見た途端、薫子はそこから一歩も踏み出せなくなってしまった。上から強い力でグチャッと押し潰されたように、胸が苦しい。
悠の頭は包帯でぐるぐる巻かれており、首から下は布団で隠れているため見えないが、ベッドの横にある機械や点滴などのいくつもの管が彼の躰に繋がっている。布団の下からはみ出ている脚は両方ともギプスが巻かれており、天井から吊られて固定されていた。
その、あまりにも痛々しい姿を目にし、薫子はショックで立ち尽くしていたのだった。
意識不明の重体とは聞いていたものの、意識が回復したと聞き、薫子の中では悠はすっかり元に戻っているつもりでいた。こんな状態の悠を、想像していなかったのだった。
ショックを受けている薫子に、こんな姿を見られたくない意識が働いてか、悠は彼女から顔を背けた。
「ゆ、ぅ......」
そんな悠の態度を見て、ようやく薫子はハッとし、掠れた声を絞り出すようにして声を掛けた。
薫子の声に反応し、悠の肩が小さく震えた。だが、悠は薫子の方に振り向こうとしない。
「ゆ...う......?」
違和感を覚え、薫子は小刻みに震える足を勇気を出して踏み出そうとした。
その時、悠が呟いた。
「分かったんだ」
薫子の足が止まる。
「ぇ?」
悠の言葉の意味が分からず問いかけた薫子に、悠は今度ははっきりとした声で告げた。
「事故にあって、ようやく分かったんだ。
俺たちは、結ばれてはいけない運命だったんだ。
......俺はもう、君を守れない」
結ばれ、ては......いけない、運命......
悠の言葉が、薫子の胸に突き刺さる。
駆け落ちするまで、事故に遭うまでは......悠の気持ちは、確実に自分に向けられていた。
それが、事故に遭い、生死を彷徨うことによって、悠の考えが一変してしまったのだった。
---それは、私が悠を事故に遭わせた、せいだ。
「悠......ご、めんなさい。
私が、あの時......空港に行っていれば。悠に、迎えに来てもらわなければ、こんなことには......
ごめ、なさい......ごめっ......ッグ、ウッウッ」
立ち竦んだまま全身を震わせ、薫子は涙を流した。
もし、今までの悠であれば彼女の傍に寄り添い、抱き締め、優しく涙を拭ってくれていただろう。いや、それ以前に悠が薫子に辛辣な言葉をかけるなどありえなかった。
だが、今の悠は......薫子の涙を拭うことも、慰めの言葉をかけることもなく、背を向けたままだった。
「例え薫子があの日、空港に来ていたとしても、俺たちが上手くいくことはなかったと思う」
その言葉に、薫子は目を瞠る。
「どうし...」
「君の心は、現在の生活を捨てる覚悟が出来ていないままだった。イギリスで生活を始めたところですぐにホームシックにかかり、生活は破綻していただろう」
『何もかも自分が守るから』と言ってくれていた筈の、悠の変わり果てた態度と言葉に、薫子は信じられない思いだった。
明るい陽射しに照らされた真っ白なベッドに人の気配を感じる。
「っ......」
だが、ベッドにいる悠の姿を見た途端、薫子はそこから一歩も踏み出せなくなってしまった。上から強い力でグチャッと押し潰されたように、胸が苦しい。
悠の頭は包帯でぐるぐる巻かれており、首から下は布団で隠れているため見えないが、ベッドの横にある機械や点滴などのいくつもの管が彼の躰に繋がっている。布団の下からはみ出ている脚は両方ともギプスが巻かれており、天井から吊られて固定されていた。
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意識不明の重体とは聞いていたものの、意識が回復したと聞き、薫子の中では悠はすっかり元に戻っているつもりでいた。こんな状態の悠を、想像していなかったのだった。
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「ゆ、ぅ......」
そんな悠の態度を見て、ようやく薫子はハッとし、掠れた声を絞り出すようにして声を掛けた。
薫子の声に反応し、悠の肩が小さく震えた。だが、悠は薫子の方に振り向こうとしない。
「ゆ...う......?」
違和感を覚え、薫子は小刻みに震える足を勇気を出して踏み出そうとした。
その時、悠が呟いた。
「分かったんだ」
薫子の足が止まる。
「ぇ?」
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「事故にあって、ようやく分かったんだ。
俺たちは、結ばれてはいけない運命だったんだ。
......俺はもう、君を守れない」
結ばれ、ては......いけない、運命......
悠の言葉が、薫子の胸に突き刺さる。
駆け落ちするまで、事故に遭うまでは......悠の気持ちは、確実に自分に向けられていた。
それが、事故に遭い、生死を彷徨うことによって、悠の考えが一変してしまったのだった。
---それは、私が悠を事故に遭わせた、せいだ。
「悠......ご、めんなさい。
私が、あの時......空港に行っていれば。悠に、迎えに来てもらわなければ、こんなことには......
ごめ、なさい......ごめっ......ッグ、ウッウッ」
立ち竦んだまま全身を震わせ、薫子は涙を流した。
もし、今までの悠であれば彼女の傍に寄り添い、抱き締め、優しく涙を拭ってくれていただろう。いや、それ以前に悠が薫子に辛辣な言葉をかけるなどありえなかった。
だが、今の悠は......薫子の涙を拭うことも、慰めの言葉をかけることもなく、背を向けたままだった。
「例え薫子があの日、空港に来ていたとしても、俺たちが上手くいくことはなかったと思う」
その言葉に、薫子は目を瞠る。
「どうし...」
「君の心は、現在の生活を捨てる覚悟が出来ていないままだった。イギリスで生活を始めたところですぐにホームシックにかかり、生活は破綻していただろう」
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