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衝撃の事実

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 だが、そんな父親を目の前にしても、薫子はまるで人形のように瞳の色を失くし、されるがままだった。薫子は、自分が妊娠しているのだという恐怖に打ちのめされ、他には何も考えられなくなっていた。

 こ、こど...子供、が......私の、お腹に......子供が......

「なんとか言ってみろ!!!」

 龍太郎は怒りに任せ、薫子をそれまで以上の力で揺さぶった。

「や、やめて下さい! 薫子さんは、大事な躰なんですよ!」

 たまらず、華子が龍太郎の腕を掴んで縋り付いた。

 龍太郎の怒りの矛先が、今度は妻である華子へと向けられる。

「お前は......風間の子供を容認すると言うのか!? 俺の命令に逆らって......
 はっ...お前は、今でもあの男のことが忘れられないんだろう! 薫子を風間の息子に引き合わせて恋人にさせ、わしへの復讐でもしようとしたか?」

 華子は龍太郎の言葉を聞き、信じられないというように、口を開けて彼を見つめた。躰がわなわなと震える。

「そ、んな......私が風間を恨んでいたことは、あなたもご存知のはずです。
 薫子が風間の息子と付き合っていると知った時、どれほど胸が引き裂かれる思いをしたか......」

 華子は涙ぐんだが、龍太郎はそんな華子の手を振り払った。

「はっ、どうだかな。お前がわしとの結婚を望んでいなかったことなど、百も承知だ。
 風間が突然イギリスから帰国したのは、お前とよりを戻すためだったんじゃないのか。お前たちはわしに隠れて、こそこそ会ってたんじゃないのか!?」

 龍太郎のあまりの言葉にショックを受けた華子は、声さえ出せずに呆然と立ち尽くした。

「旦那様!奥様!おやめくださいませ!!!
 薫子様がご心配ではないのですか!?」

 突然、ばあやが大きな声を上げた。それは、いつも櫻井家の長として幅をきかせている龍太郎でさえも黙らすものだった。

 両親の口論の際、なんの関心も示さなかった薫子が、口を開いた。

「私、は...子供は、産みません......

 悠と別れた今、私にはなんの希望も...ありません。どうぞ、お父様のお好きなようにしてください」

 悠には......とても、言えない。
 私が妊娠していることが分かれば、きっと悠は責任を感じてしまう。

 もしかしたら、私とよりを戻そうとしてくれるかもしれない。

 けれど......あの時の悠の冷たい態度と口調。悠の私への気持ちは冷めてしまった。
 そんな悠に、あなたの子供を妊娠していますだなんて、とてもじゃないけど言えない......

 この子は、生まれてくるべきじゃない子供なんだ。

 ただでさえ、子供を産み、育てる自信なんてない私が......悠を失い、自分が生きる気力さえ見い出せないというのに、どうやって子供を育てられるの。育てられるはず、ない。

 私は、怖い。自分の中に宿っている命の存在が。

 消して、しまいたい......
 なかったことに、したい。

 お腹の子供に対して何の愛情の欠片もない投げやりな薫子の言葉に、龍太郎以外の者はゾクッと身を震わせた。
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