227 / 355
哀憐(あいれん)
2
しおりを挟む
会場では、誰もが美姫と秀一の禁忌の恋愛について語るに違いないと確信し、いったいどんな話が飛び出すのかと推測していた。にもかかわらず、突然降ってわいたような大和との婚約話に大混乱となっていた。
そんな中、騒ぎが収まるのを待ち、大和が再び話を続けた。
『私たちは幼稚舎から高等部まで共に過ごし、思いを通わせ合う仲です。
美姫さんは、週刊誌に載っていた来栖秀一氏との恋愛関係は、一切ありません』
その大和の言葉で、薫子は、あぁ......と頷いた。
大和は......美姫が秀一さんと恋人であることを否定するために、婚約者役を買って出たんだ。
美姫を、守るために......
どういった経緯でそうなったのかは分からない。美姫が大和に助けを求めたのか、大和が美姫の居場所を探し出してそう提案したのか......
けれど、大和の性格を理解している薫子には、彼の行動が悲しいほどに納得が出来た。
大和なら、いくら美姫が秀一さんと恋愛関係にあることを分かっていても、美姫がそこから抜け出せられないでいることが分かっていても......なんとしてでも、彼女を救おうとするだろうから。
そんな大和の美姫への愛情を思うと、切ないほどに胸が締め付けられた。
当然記者側は、そんな大和の言葉をすんなりと受け入れるわけがない。
『それならなぜ、今まで来栖秀一氏や美姫さんは弁解されなかったのですか?』
そう尋ねた記者に答えたのは、美姫だった。
『それは......私を守る為です』
そこから語られる美姫の話は、薫子にとって想像もし得ないものだった。
嘘......
美姫、が...凌辱、されただなんて、そんな......嘘、でしょ?
これも、お芝居のうちの......ひとつ、なんだよね?
けれど、それが真実であることを示すかのように、画面には美姫の蒼白した顔が映し出され、呼吸を乱し、全身を震わせていた。パニックを起こす美姫を見ながら、薫子も自分がパニックを起こしそうなぐらい蒼白になり、躰を小刻みに震わせていた。
嘘......こ、んな......信じ、たくない。
美姫が......美姫、が...そんな目に、遭っていただなんて。
だが、薫子には思い当たる節がいくつもあった。
大和の父のパーティー会場で、突然大和が消え、その夜に悠の元を訪ねたこと。その日から、美姫との連絡が途絶えたこと。
秀一のコンサート会場で、パニックを起こす美姫を垣間見たこと。
久しぶりに会った美姫が激痩せしていたこと。
秀一に対して以前よりも更に依存しているように見られたこと。
成人式で、異常な程に男性を避けるようにしていたこと......
これらのことは、美姫が凌辱され、トラウマをもったことにより引き起こされたのだと考えれば、全て納得がいくものだった。
その時、大和が席から立ち上がり、美姫を支えた。美姫を落ち着かせ、優しく抱きしめる大和の背中からは彼女への愛情が溢れていた。
大和......
あまりにも切ない彼の役回りに、薫子の瞳から涙が溢れ出す。
大和に励まされ、落ち着きを取り戻していく美姫を見ながら、薫子はどうしても考えずにはいられなかった。
どうして、秀一さんでなくてはならないの......?
大和はこんなにも美姫を愛し、優しく、深く包み込んでくれるのに.....
こんな、の......残酷過ぎる。
苦しいよ.......
そんな中、騒ぎが収まるのを待ち、大和が再び話を続けた。
『私たちは幼稚舎から高等部まで共に過ごし、思いを通わせ合う仲です。
美姫さんは、週刊誌に載っていた来栖秀一氏との恋愛関係は、一切ありません』
その大和の言葉で、薫子は、あぁ......と頷いた。
大和は......美姫が秀一さんと恋人であることを否定するために、婚約者役を買って出たんだ。
美姫を、守るために......
どういった経緯でそうなったのかは分からない。美姫が大和に助けを求めたのか、大和が美姫の居場所を探し出してそう提案したのか......
けれど、大和の性格を理解している薫子には、彼の行動が悲しいほどに納得が出来た。
大和なら、いくら美姫が秀一さんと恋愛関係にあることを分かっていても、美姫がそこから抜け出せられないでいることが分かっていても......なんとしてでも、彼女を救おうとするだろうから。
そんな大和の美姫への愛情を思うと、切ないほどに胸が締め付けられた。
当然記者側は、そんな大和の言葉をすんなりと受け入れるわけがない。
『それならなぜ、今まで来栖秀一氏や美姫さんは弁解されなかったのですか?』
そう尋ねた記者に答えたのは、美姫だった。
『それは......私を守る為です』
そこから語られる美姫の話は、薫子にとって想像もし得ないものだった。
嘘......
美姫、が...凌辱、されただなんて、そんな......嘘、でしょ?
これも、お芝居のうちの......ひとつ、なんだよね?
けれど、それが真実であることを示すかのように、画面には美姫の蒼白した顔が映し出され、呼吸を乱し、全身を震わせていた。パニックを起こす美姫を見ながら、薫子も自分がパニックを起こしそうなぐらい蒼白になり、躰を小刻みに震わせていた。
嘘......こ、んな......信じ、たくない。
美姫が......美姫、が...そんな目に、遭っていただなんて。
だが、薫子には思い当たる節がいくつもあった。
大和の父のパーティー会場で、突然大和が消え、その夜に悠の元を訪ねたこと。その日から、美姫との連絡が途絶えたこと。
秀一のコンサート会場で、パニックを起こす美姫を垣間見たこと。
久しぶりに会った美姫が激痩せしていたこと。
秀一に対して以前よりも更に依存しているように見られたこと。
成人式で、異常な程に男性を避けるようにしていたこと......
これらのことは、美姫が凌辱され、トラウマをもったことにより引き起こされたのだと考えれば、全て納得がいくものだった。
その時、大和が席から立ち上がり、美姫を支えた。美姫を落ち着かせ、優しく抱きしめる大和の背中からは彼女への愛情が溢れていた。
大和......
あまりにも切ない彼の役回りに、薫子の瞳から涙が溢れ出す。
大和に励まされ、落ち着きを取り戻していく美姫を見ながら、薫子はどうしても考えずにはいられなかった。
どうして、秀一さんでなくてはならないの......?
大和はこんなにも美姫を愛し、優しく、深く包み込んでくれるのに.....
こんな、の......残酷過ぎる。
苦しいよ.......
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる