【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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哀憐(あいれん)

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 会場では、誰もが美姫と秀一の禁忌の恋愛について語るに違いないと確信し、いったいどんな話が飛び出すのかと推測していた。にもかかわらず、突然降ってわいたような大和との婚約話に大混乱となっていた。

 そんな中、騒ぎが収まるのを待ち、大和が再び話を続けた。

『私たちは幼稚舎から高等部まで共に過ごし、思いを通わせ合う仲です。
 美姫さんは、週刊誌に載っていた来栖秀一氏との恋愛関係は、一切ありません』

 その大和の言葉で、薫子は、あぁ......と頷いた。

 大和は......美姫が秀一さんと恋人であることを否定するために、婚約者役を買って出たんだ。
 美姫を、守るために......

 どういった経緯でそうなったのかは分からない。美姫が大和に助けを求めたのか、大和が美姫の居場所を探し出してそう提案したのか......

 けれど、大和の性格を理解している薫子には、彼の行動が悲しいほどに納得が出来た。

 大和なら、いくら美姫が秀一さんと恋愛関係にあることを分かっていても、美姫がそこから抜け出せられないでいることが分かっていても......なんとしてでも、彼女を救おうとするだろうから。

 そんな大和の美姫への愛情を思うと、切ないほどに胸が締め付けられた。

 当然記者側は、そんな大和の言葉をすんなりと受け入れるわけがない。

『それならなぜ、今まで来栖秀一氏や美姫さんは弁解されなかったのですか?』

 そう尋ねた記者に答えたのは、美姫だった。

『それは......私を守る為です』

 そこから語られる美姫の話は、薫子にとって想像もし得ないものだった。

 嘘......
 美姫、が...凌辱、されただなんて、そんな......嘘、でしょ?
 これも、お芝居のうちの......ひとつ、なんだよね?

 けれど、それが真実であることを示すかのように、画面には美姫の蒼白した顔が映し出され、呼吸を乱し、全身を震わせていた。パニックを起こす美姫を見ながら、薫子も自分がパニックを起こしそうなぐらい蒼白になり、躰を小刻みに震わせていた。

 嘘......こ、んな......信じ、たくない。
 美姫が......美姫、が...そんな目に、遭っていただなんて。

 だが、薫子には思い当たる節がいくつもあった。

 大和の父のパーティー会場で、突然大和が消え、その夜に悠の元を訪ねたこと。その日から、美姫との連絡が途絶えたこと。
 秀一のコンサート会場で、パニックを起こす美姫を垣間見たこと。
 久しぶりに会った美姫が激痩せしていたこと。
 秀一に対して以前よりも更に依存しているように見られたこと。
 成人式で、異常な程に男性を避けるようにしていたこと......

 これらのことは、美姫が凌辱され、トラウマをもったことにより引き起こされたのだと考えれば、全て納得がいくものだった。

 その時、大和が席から立ち上がり、美姫を支えた。美姫を落ち着かせ、優しく抱きしめる大和の背中からは彼女への愛情が溢れていた。

 大和......

 あまりにも切ない彼の役回りに、薫子の瞳から涙が溢れ出す。

 大和に励まされ、落ち着きを取り戻していく美姫を見ながら、薫子はどうしても考えずにはいられなかった。

 どうして、秀一さんでなくてはならないの......?
  大和はこんなにも美姫を愛し、優しく、深く包み込んでくれるのに.....

 こんな、の......残酷過ぎる。
 苦しいよ.......
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