【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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彼女の決意、私の思い

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 薫子は苦しそうに睫毛を伏せ、細かく震わせた。

「悠、は......あの事故、で......ッ...失明、して。起き上がることも、寝返りをうつことさえも出来ないって.....ック遼、ちゃんが......教えてくれて。
 悠、は......私の幸せを思い......ウッ......身を、引いて......別れる事に、したって......ッグ」

 シツ、メイ......

 美姫の目の前が真っ暗になり、手先が冷たくなり、ブルブルと震えた。

 手術室からストレッチャーで運ばれてきた悠を見た時、彼が重篤であることは一目瞭然だった。だがまさか、視力まで失っていたとは考えもつかなかった。

 やっぱり悠は、薫子を嫌いになって別れを告げたわけではなかったんだ。

 美姫は安堵するものの、ふたりの未来を思うと心が重くなった。

 悠は、今まで薫子を守ってきた自分に代わり、彼女を庇護し、過保護なまでに愛してきた。失明し、寝たきりの状態の悠が薫子に別れを告げたのは、彼の優しさと愛情からだと美姫には痛いほど分かった。

 愛しているから。
 愛しているからこそ、手放さなければならない愛もある。

 美姫は秀一のことを思い出し、ズクンと胸が痛んだ。

「私はいつも皆に守ってもらってばかりで、何ひとつ自分から行動することなんてなかった。何かあるとすぐに悲観的になって、怖くなって、動けなくて。そして、諦めてた......
 悠も......遼ちゃんも......私の幸せを願って、覚悟して、決断してくれたのに。私は背中を向け、殻に閉じこもってた。

 ......遼ちゃんに、言われたの。俺がいくら努力したからって、お前が自ら幸せだって思わなくちゃ意味がないんだって。私、だけじゃなく......子供も不幸だって。

 そんなことに気づけなかったなんて......ほんとに、馬鹿だよね、私」

「薫子......」

 苦しそうな表情を浮かべた美姫の腕を、薫子が強く掴んだ。

「ねぇ、美姫。どうしたら、変われるの? どうしたら、美姫みたいに強くなれるの?
 私は、変わりたいと思いながらも...... まだ怖い。まだ、迷ってる。

 どうするべきか...ック分か、らない......」

 眉を寄せ、唇を震わせる。

 美姫は、薫子の肩を抱き寄せた。

「薫子。私は、自分の力で強くなれたわけじゃない。
 秀一さんへの愛情が、私を強くしてくれたの。秀一さんを愛したこと、彼に愛されたことは......辛く、苦しい一方で、これ以上ない最高の幸せだった。淡い思慕から始まった秀一さんへの恋心は、お互いの思いが通じあい、恋人になったことで愛情へと変わっていった。

 私は彼を独占し、彼の愛情の全てを私に向けて欲しいと願うようになっていた。深い愛情で結ばれれば結ばれるほど、離れがたくなって......お互いを鎖で縛り付けて、苦しめあっていた。
 それこそが、至高の愛だと信じていた」

 美姫が、切ない表情を浮かべる。

「でも、傷ついた秀一さんを見て、魂からピアノを求める彼を感じて、相手を思って離れる愛もあるのだと、気づいたの。

 もし私があのまま自分のエゴを貫き、秀一さんへの愛情に縋り付いていたなら......彼にも、私にも未来はなかった。秀一さんを心から愛しているからこそ、変わることができた。彼に縋りたい気持ちを断ち切り、強くなることができた。

 秀一さんへの愛情を胸に、決断した別れ。
 ......私はそれを、後悔してない」

 力強い美姫の言葉が、静かに部屋に満ちていく。

 薫子の全身が震えた。

 美姫.......。やっぱり、美姫は強いよ。
 強くて、眩しくて、美しい存在。いつも、私の憧れであり続ける、美姫。

 愛しているからこそ、その人の為に別れを選ぶなんて。
 あれ程までに深く激しく愛し合った秀一さんとの別れを、後悔してないと言えるなんて。

 そんな風に、人を愛することが出来るなんて。
 美姫は、凄いよ......
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