【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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彼女の決意、私の思い

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 美姫を見送った後、薫子は部屋へ戻り、大きく息を吐いた。美姫と喋っている時には緊張と興奮で忘れていたが、ひとりになった途端、ひどく疲労していることに気づいた。

 躰が、重い......休まないと。

 ベッドに腰を下ろし、ヘッドボードに背を預けて瞼を閉じた。すると突然、ピクッと胃が痙攣するような感覚が走った。

 え......?
 な、に...今、の......

 あまりにも一瞬のことで確信することは出来なかったが、薫子にひとつの可能性が浮かび上がる。

 もしか、して......これって...

 そう考えていると、その疑問に答えるかのように、今度はお腹の中で小さい魚が跳ねたようにピクピクッとしたのを感じた。

 やっぱり......
 これは、胎動だったんだ。

 そう思った途端、薫子の全身が総毛立った。けれど、それは今までに感じた得体の知れないものが自分の躰に巣食っているという怖ろしさからではなかった。

 お腹の中の子供と向き合おうとした途端に胎動を感じたことは、必然であるように思えた。

 ---お腹の中の赤ちゃんが、私に自分の存在を訴えてるんだ。

 薫子は生唾を呑み込むと、そっとお腹に手を当てた。

 本当に私のお腹の中に、赤ちゃんが......いるんだ。
 悠との、赤ちゃんが。

 薫子の中から、今まで感じたことのないような感情がお臍の中心から芽生えてきて、それがじんわりと浸透していくように広がっていく。薫子は、その未知の感情に戸惑いながらも、それを嬉しくも思っていた。 

 トクン、トクン、トクン......

 胸の高鳴りと共に息を凝らし、お腹の動きに集中する。

 トクン、トクン、トクン......

 少し、お腹をさすってみる。けれど、中からはなんの反応もなかった。

 諦めてお腹から手を離した途端、また痙攣のような感覚がきた。薫子は急いで、再び掌をお腹に当てた。

 いる。
 赤、ちゃん......

 私の、赤ちゃんが......
 悠と、私の......赤ちゃんが。

 ここにいるよ、って......一生懸命、訴えてるんだ。

 そう感じた途端、薫子の中には嬉しい気持ちが湧き上がると共に、大きな懺悔の感情が押し寄せてきた。

 駆け落ちが失敗し、悠が事故に遭って意識不明の重体になったと知った後......ショックで引き籠り、食事もろくにとらず、鬱々と過ごしていた時にも......その間も......あなたは、ずっと私の中にいたんだよね。

 悠の気持ちがもう自分に向けられていないと分かった途端、生きる希望を失った。何もかも、もうどうでもいいと思った。
 そんな時にも、あなたは......私の中で、少しずつ成長していたんだ。

 バルコニーから落ちてさえも、強い生命力で生きようと必死に戦ってくれた。

 それ、なのに......

 そんなあなたの存在を、私は否定した。
 この世から、失くしてしまおうとさえしていた。

 ---悠と愛し合った証である、愛おしいはずの、あなたの存在を。

 遼ちゃんが、自分の子供でもないあなたを受け入れようとしてくれてすら、私はあなたの存在を受け入れられずにいた。

「ッグ...ウッウッ.....ッッグ」

 ごめん、ね......ごめんね。
 酷い......ほんとに、酷い......母親だよね。

 どうか、許して......

 薫子は泣きながら、掌でゆっくりとお腹を撫でた。
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