【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

文字の大きさ
295 / 355
新たな決意

しおりを挟む
 陽子と真奈美と別れ、薫子は一人家路へと向かう。バスには乗らず、並木道が続くバス通りをゆっくりと歩いていた。

 まだ空気に冬の冷たさがほんの少し混じっているものの、黒髪に斜めに掛かる陽射しや頬を通り抜けていく風は、春の匂いを含んでいた。

 薫子は、アメリカへと発った遼に思いを馳せていた。

 遼ちゃんはきっと今頃もう、アメリカで自分の決めた目標に向かってひたむきに進んでいるんだろうな。遼ちゃんなら、力強く自分の道を切り拓いていくに違いない。

 心に、影が差す。

 じゃあ、私は?
 私は、どうなの......?

 薫子は、歩みを止めた。

 もし、遼ちゃんが今の私の状況を知ったら、どう言うかな。きっと、怒られてたよね。
 あの時、悠に気持ちをぶつけるって言ったんじゃなかったのかって。たとえ受け入れられなくても、諦めずに何度でも気持ちを伝えていきたいって言ってたんじゃないのかって。

 遼ちゃんならそう言って、私を叱るよね。

 けど......遼ちゃんは、私の側にはいない。
 叱責することも、背中を押すことも、真剣な瞳で語りかけてくれることも......もう、ないんだ。

 遼ちゃんが言ったように、私は私の道を進まなければならない。
 私は、私自身で自分を叱責し、立ち上がらないといけないんだ。

 自立は、もちろん大事なこと。
 頼ってばかりじゃ、甘えてばかりじゃ、守られてばかりじゃいけない。

 私はその為に、今まで頑張ってきた。たくさんの人に出会い、教えてもらいながら、少しずつ色んなことを学ばせてもらった。だから、私のしてきたことには意味があった。

 ---だけど、私はその中で、見失ってしまっていたんだ。

 早く自立しなければ、と。
 もっと自立しなければ、と。

 自分を追い立てるうちに、本当の目的を見失っていた。

 なんのために、櫻井の家を出たのか。どれだけの人の思いを、人生を背負っているのか。
 あれだけ、感じていたはずなのに。
 
 守らなくてはと思わせるような自分から脱却し、悠を守れるほどに強くなりたい。
 それこそが、私の願いだったというのに。

 仕事を手にし、自分に自信がついてきた私は、そんな弱い自分を打破しなければと思うようになった。けれど、その思いはまるで尖った硝子のように緊張感があり、何かのきっかけで粉々に割れてしまうような脆さも持ち合わせていた。

 早く、悠に会わなければ。
 早く、悠のご両親に対峙しなければ。

 焦燥感に駆られ、プレッシャーに呑み込まれていた。それは、義務なんかじゃないのに。
 理屈ばかり考えて、心の内面を見つめようとしていなかった。

 私は、何をしているの?
 どうしなければならないの?

 私が本当に求めているのは、何なの?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

契約書は婚姻届

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」 突然、降って湧いた結婚の話。 しかも、父親の工場と引き替えに。 「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」 突きつけられる契約書という名の婚姻届。 父親の工場を救えるのは自分ひとり。 「わかりました。 あなたと結婚します」 はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!? 若園朋香、26歳 ごくごく普通の、町工場の社長の娘 × 押部尚一郎、36歳 日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司 さらに 自分もグループ会社のひとつの社長 さらに ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡 そして 極度の溺愛体質?? ****** 表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】 その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。 片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。 でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。 なのに、この呼び出しは一体、なんですか……? 笹岡花重 24歳、食品卸会社営業部勤務。 真面目で頑張り屋さん。 嫌と言えない性格。 あとは平凡な女子。 × 片桐樹馬 29歳、食品卸会社勤務。 3課課長兼部長代理 高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。 もちろん、仕事できる。 ただし、俺様。 俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

処理中です...