【R18】初恋が実る時 ー対立する財閥令嬢と子息の密かな恋愛ストーリーー

奏音 美都

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悲しい裏切り

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 薫子は、病院のバス停に立っていた。

 悠......

 決意を胸に、グッと拳を握り締め、病院へと向かっていく。

 ロビーを抜け、それからエレベーターに乗り、特別病棟の最上階のボタンを震える指で押す。エレベーターが上階へと近づくにつれ、薫子の緊張が高まっていく。恐怖が薫子を呑み込もうとするのを感じながらも、悠への想いを胸に、必死にそれを振り払った。

 エレベーターが最上階に到着し、案内音と共に扉が開く。

「ッッ......!!!」

 開いた扉の先には、悠の父親、悠人が立っていた。薫子を目の前にした悠人もまた驚き、息を呑んだ。

 エレベーターを降りた薫子は、恐怖に慄きながらもお辞儀をした。

「初め、まして......」

 悠人は薫子を見つめ返し、彼女のお腹が大きいことに気づいてハッとした後、強張った口調で返した。

「櫻井 薫子さん、こうして面と向かって会うのは初めてだね。少し話したいんだけど、いいかな」

 固い口調ではあるものの、そこには憎悪は感じられず、薫子は緊張しながらも安堵の息を吐いた。

「はい......」

 悠人は薫子に少し待つように言った後、離れたところでスマホを取り出し、電話を掛けた。遠くて声までは届かないが、雰囲気からどうやら職場に電話しているらしいことが伝わってきた。

「やぁ、すまなかったね」
「い、いえ......」

 長い廊下を通り、悠の病室から近い談話室へと、案内された。そこは、以前悠に会いに行った際に、薫子が大和を待つ間に入っていた部屋だった。

 薫子は、向かいに座る悠人を見つめた。

 悠人を見ていると、自然と悠の姿と重なる。悠よりももっと穏やかで柔らかい雰囲気があるものの、悠が年をとったらこんな風になるのだろうなと感じさせた。

 悠人を目の前にし、悠に会いたい気持ちが膨らむ。

「君は......本当に、華子さんにそっくりだ」

 突然、感慨深い悠人の声が落とされる。ハッとして悠人を見つめる薫子に、少し寂しげな悠人の笑みが映った。

「華子さん......君の、お母さんは......僕のことを、恨んでいるんだろうね」

 そう言って睫毛を伏せた悠人に、薫子は胸が切なくなった。

「母、は......おじさまに、見捨てられたと思っていました。自分の気持ちを無視して、イギリスへ発ったのだと。
 だから、ずっと母は......おじさまを恨んでいました」

 それを聞き、悠人は苦しそうに拳をギュッと握りしめた。薫子は、たまらず悠人に身を乗り出すようにした。

「でも!真実は違った......
 そうでしょう、おじさま?」

 薫子は、ばあやの言葉を思い出していた。

「ばあやが......告白、してくれました。おじさまから預かった手紙を、櫻井家のためだと握り潰してしまったと」

 それを聞き、悠人が肩を震わせる。

「そう、か。ばあやさん、が......」

 聞き取れないほどの小さな声で答えた悠人に、薫子はグッと瞼を閉じた後、悠人の顔を見上げた。

「おじさまは......お母様と駆け落ちするつもりだったんですよね?
 お母様を裏切ったんじゃない。本当は、救おうとしていた......」
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