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初恋が実る時
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「駄目、なの......」
薫子の掠れた声が、悠の耳に届く。
「ぇ......?」
悠の顔に影が差し、唇に温かい感触が触れた。目が見えなくても、その懐かしい感触は忘れるはずなどない。薫子の唇が、重なったのだ。
かお、るこ......
呆然とする悠を前に、薫子は唇を離した。
「悠じゃなきゃ、駄目。あなたじゃなきゃ...ック駄目、なの......
私は、悠でなければ幸せになれない。誰が側にいても、誰が守ってくれても、幸せにはなれないの。
悠でなければ、いけないの......」
薫子の言葉は嬉しかったが、悠にはそれを受け入れることは出来なかった。
「何、言ってるんだ」
冷たく突き放す悠の言葉に、薫子はグッと喉を詰まらせた。
逃げ、ない。諦めたく、ない。
---何度でも、悠に私の想いを伝えるって決めたから。
薫子は、ずっと口に出すのが恐かった言葉を、喉から搾り出した。
「悠、は......もう、私のことは嫌いになった?
本気で、別れたいって......そう、思ったの?」
悠が瞼を強く閉じた。肩が小刻みに震えている。
そんな悠を目の前にして、薫子は強く祈った。
お願い、本当のことを聞かせて。あなたの本心を、教えて欲しい。
薫子が、悠の頬に触れる。
「私は、悠を愛してる。
出逢った時から、今までずっと......この想いは、何があろうとも変わることはなかった。
これからだって、変わることはない。私は悠を、愛し続けていく」
ッかお、るこ......
悠の瞳から、涙が一筋伝う。
「いくら俺が、薫子を愛していても。薫子が、俺を愛してくれていても。感情だけでは、どうにもならないんだ。
香西との結婚式はもう目前なんだろう?君の父さんだって、もし婚約破棄なんてことになったら、何を言い出すか分からない。
俺は見てのとおり、何も出来ない。俺たちには......未来なんて、ないんだ」
薫子の決意に満ちた声が、静かに響く。
「うん、分かってるよ」
それを悠は、絶望的な気持ちで受け止めた。
「そう、か......」
「だから......婚約破棄、したの」
薫子の言葉に、悠の眉が上がった。
今、薫子......なん、て......
「遼ちゃんに婚約破棄をお願いして、ご家族に報告して。それ、から......私の両親にも、婚約破棄のことを告げたの」
激しく動揺する悠を尻目に、薫子は穏やかな口調で続ける。
「やっぱり、お父様は......婚約破棄したことを、許しては下さらなかった。
それで私、家を出たの。ばあやがね、家を出る時に一緒に来てくれて、色々と助けてもらったの。もしばあやがいなかったら......私、今頃どうなってたか分からない。本当にばあやには、感謝してもしきれないぐらい。生活の基礎を一から教えてもらって、今ではひとりで身の回りのことを出来るようになったんだよ。
それからね、週に2回、この病院の特別病棟の患者さんたちの為の生け花教室のお手伝いをさせてもらってるの。人見知りで人と話すのが苦手な私が、人に教えるだなんて考えられなかったけど......患者である受講生の方から逆に励まされり、元気をもらったりして、すごくやりがいを感じてるの。
まだまだ頼りないけど、私は自分の足で立ち上がろうとしているところなの。自立しようと、してるから。だからね、悠......もう、私を守らなくちゃって思わなくていいんだよ」
悠は、大きく息を呑んだ。
薫子がそんなことするなんて、信じられない......
悠はずっと、薫子を守ることが自分の使命なのだと感じていた。何もかも自分がしてあげなければならないと思い、その為に努力をしてきた。薫子自身が変わることを、一度も望んだことはなかった。
俺は......薫子に、こんな力があったなんて、知らなかった。いつも俺は、か弱くて、脆くて、儚い彼女を守ることしか頭になかった。
薫子の掠れた声が、悠の耳に届く。
「ぇ......?」
悠の顔に影が差し、唇に温かい感触が触れた。目が見えなくても、その懐かしい感触は忘れるはずなどない。薫子の唇が、重なったのだ。
かお、るこ......
呆然とする悠を前に、薫子は唇を離した。
「悠じゃなきゃ、駄目。あなたじゃなきゃ...ック駄目、なの......
私は、悠でなければ幸せになれない。誰が側にいても、誰が守ってくれても、幸せにはなれないの。
悠でなければ、いけないの......」
薫子の言葉は嬉しかったが、悠にはそれを受け入れることは出来なかった。
「何、言ってるんだ」
冷たく突き放す悠の言葉に、薫子はグッと喉を詰まらせた。
逃げ、ない。諦めたく、ない。
---何度でも、悠に私の想いを伝えるって決めたから。
薫子は、ずっと口に出すのが恐かった言葉を、喉から搾り出した。
「悠、は......もう、私のことは嫌いになった?
本気で、別れたいって......そう、思ったの?」
悠が瞼を強く閉じた。肩が小刻みに震えている。
そんな悠を目の前にして、薫子は強く祈った。
お願い、本当のことを聞かせて。あなたの本心を、教えて欲しい。
薫子が、悠の頬に触れる。
「私は、悠を愛してる。
出逢った時から、今までずっと......この想いは、何があろうとも変わることはなかった。
これからだって、変わることはない。私は悠を、愛し続けていく」
ッかお、るこ......
悠の瞳から、涙が一筋伝う。
「いくら俺が、薫子を愛していても。薫子が、俺を愛してくれていても。感情だけでは、どうにもならないんだ。
香西との結婚式はもう目前なんだろう?君の父さんだって、もし婚約破棄なんてことになったら、何を言い出すか分からない。
俺は見てのとおり、何も出来ない。俺たちには......未来なんて、ないんだ」
薫子の決意に満ちた声が、静かに響く。
「うん、分かってるよ」
それを悠は、絶望的な気持ちで受け止めた。
「そう、か......」
「だから......婚約破棄、したの」
薫子の言葉に、悠の眉が上がった。
今、薫子......なん、て......
「遼ちゃんに婚約破棄をお願いして、ご家族に報告して。それ、から......私の両親にも、婚約破棄のことを告げたの」
激しく動揺する悠を尻目に、薫子は穏やかな口調で続ける。
「やっぱり、お父様は......婚約破棄したことを、許しては下さらなかった。
それで私、家を出たの。ばあやがね、家を出る時に一緒に来てくれて、色々と助けてもらったの。もしばあやがいなかったら......私、今頃どうなってたか分からない。本当にばあやには、感謝してもしきれないぐらい。生活の基礎を一から教えてもらって、今ではひとりで身の回りのことを出来るようになったんだよ。
それからね、週に2回、この病院の特別病棟の患者さんたちの為の生け花教室のお手伝いをさせてもらってるの。人見知りで人と話すのが苦手な私が、人に教えるだなんて考えられなかったけど......患者である受講生の方から逆に励まされり、元気をもらったりして、すごくやりがいを感じてるの。
まだまだ頼りないけど、私は自分の足で立ち上がろうとしているところなの。自立しようと、してるから。だからね、悠......もう、私を守らなくちゃって思わなくていいんだよ」
悠は、大きく息を呑んだ。
薫子がそんなことするなんて、信じられない......
悠はずっと、薫子を守ることが自分の使命なのだと感じていた。何もかも自分がしてあげなければならないと思い、その為に努力をしてきた。薫子自身が変わることを、一度も望んだことはなかった。
俺は......薫子に、こんな力があったなんて、知らなかった。いつも俺は、か弱くて、脆くて、儚い彼女を守ることしか頭になかった。
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