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After Story 3 ー悲しみの中の幸福ー
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挙式の2週間前に亡くなってしまったばあやに、どうしてもっと早くに式を挙げなかったのだろうという後悔が薫子の胸に渦巻いていた。
ばあやは龍太郎に突き飛ばされて腰を打ち付けて入院して以来、結局一度も退院しないまま、帰らぬ人となってしまった。死因はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による院内感染だったが、それもばあやが入院していなければ罹ることはなかったと思うと、その原因を作った父が憎かった。
薫子はばあやの死に際に間に合わず、病院に駆けつけたときには既に息絶えていた。ずっと、祖父母の住んでいた家に帰りたいと言っていた、ばあの願いを叶えることは出来なかった。
薫子は、今まで出したこともないぐらいの絶叫を上げ、泣き崩れた。
家族でもないのに無条件に自分を受け入れ、愛してくれた人だった。ずっと優しく見守り、深く大きな愛で包んでくれていた。
泣いても泣いても癒されることのない深い悲しみ。
失望のどん底に、突き落とされた。
暫く、何も手につかなかった。詩織の世話さえ出来ず、悠に任せきりにしてしまった。
詩織が「ママぁ?」と心配そうに覗き込むと、もうばあやは詩織のこれからの成長を見ることは出来ないのだという思いが溢れ、また泣き出してしまう。
ばあやは遺言状を遺していた。
葬儀はばあやの希望で火葬のみとし、遺骨は祖父母と一緒の墓に入れた。そこまで先代の梅小路家に対しての忠義を果たしたばあやの心根に、胸が熱くなった。
ばあやは、自分の死期が近いことを悟っていた。薫子と悠の結婚式に参列するのは、叶わないであろうことも。
もし自分が亡くなったとしても、結婚式は予定通り行って欲しい。それが、何よりの楽しみだったからとも、書かれていた。
だからこそ、薫子は悲しみをおして結婚式を行うことを決めたのだった。
そして、手元に残されたばあやからの手紙。
『薫子様
これでようやく、大旦那様と大奥様の元へと旅立てます。
私は嬉しいのです。私が薫子様よりも早くにお別れ出来たことが。これは年寄りの特権です。愛しい我が子が自分よりも先立つこと程、苦しいことはございません。
ですから、どうか喜んで下さい。私への孝行が出来たと。
どうぞ、悲しみに呑み込まれないで下さい。憎しみに囚われないで下さい。
旦那様を、貴女のお父様をどうかお許し下さいませ。あの方は、歪んだ形でしか愛情を示すことが出来ないのです。けれどその愛情は、間違いなく薫子様に向けられているのです。
憎しみからは何も生まれません。歩み寄ることから、希望が、幸せが生まれるのです。
薫子様、貴女はそれを分かっていらっしゃるはず。
私はいつでも薫子様の傍にいて、見守っております。
米田 典子』
薫子は、初めてばあやの名前を知った。
こ、んな......最期になって、知るなんて。
もっと、もっとばあやと色んな話がしたかった。たくさんの時間を一緒に過ごしたかった。
手紙には父を許すよう書いてあったが、薫子にはそんな菩薩のような気持ちにはとてもなれなかった。
火葬場に現れた龍太郎を人殺しと罵り、追い出した。龍太郎は逆上するかと思われたが、ただ黙って背を向けて帰って行った。
父を許すことは、一生出来ないと思った。
ばあやは龍太郎に突き飛ばされて腰を打ち付けて入院して以来、結局一度も退院しないまま、帰らぬ人となってしまった。死因はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による院内感染だったが、それもばあやが入院していなければ罹ることはなかったと思うと、その原因を作った父が憎かった。
薫子はばあやの死に際に間に合わず、病院に駆けつけたときには既に息絶えていた。ずっと、祖父母の住んでいた家に帰りたいと言っていた、ばあの願いを叶えることは出来なかった。
薫子は、今まで出したこともないぐらいの絶叫を上げ、泣き崩れた。
家族でもないのに無条件に自分を受け入れ、愛してくれた人だった。ずっと優しく見守り、深く大きな愛で包んでくれていた。
泣いても泣いても癒されることのない深い悲しみ。
失望のどん底に、突き落とされた。
暫く、何も手につかなかった。詩織の世話さえ出来ず、悠に任せきりにしてしまった。
詩織が「ママぁ?」と心配そうに覗き込むと、もうばあやは詩織のこれからの成長を見ることは出来ないのだという思いが溢れ、また泣き出してしまう。
ばあやは遺言状を遺していた。
葬儀はばあやの希望で火葬のみとし、遺骨は祖父母と一緒の墓に入れた。そこまで先代の梅小路家に対しての忠義を果たしたばあやの心根に、胸が熱くなった。
ばあやは、自分の死期が近いことを悟っていた。薫子と悠の結婚式に参列するのは、叶わないであろうことも。
もし自分が亡くなったとしても、結婚式は予定通り行って欲しい。それが、何よりの楽しみだったからとも、書かれていた。
だからこそ、薫子は悲しみをおして結婚式を行うことを決めたのだった。
そして、手元に残されたばあやからの手紙。
『薫子様
これでようやく、大旦那様と大奥様の元へと旅立てます。
私は嬉しいのです。私が薫子様よりも早くにお別れ出来たことが。これは年寄りの特権です。愛しい我が子が自分よりも先立つこと程、苦しいことはございません。
ですから、どうか喜んで下さい。私への孝行が出来たと。
どうぞ、悲しみに呑み込まれないで下さい。憎しみに囚われないで下さい。
旦那様を、貴女のお父様をどうかお許し下さいませ。あの方は、歪んだ形でしか愛情を示すことが出来ないのです。けれどその愛情は、間違いなく薫子様に向けられているのです。
憎しみからは何も生まれません。歩み寄ることから、希望が、幸せが生まれるのです。
薫子様、貴女はそれを分かっていらっしゃるはず。
私はいつでも薫子様の傍にいて、見守っております。
米田 典子』
薫子は、初めてばあやの名前を知った。
こ、んな......最期になって、知るなんて。
もっと、もっとばあやと色んな話がしたかった。たくさんの時間を一緒に過ごしたかった。
手紙には父を許すよう書いてあったが、薫子にはそんな菩薩のような気持ちにはとてもなれなかった。
火葬場に現れた龍太郎を人殺しと罵り、追い出した。龍太郎は逆上するかと思われたが、ただ黙って背を向けて帰って行った。
父を許すことは、一生出来ないと思った。
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