349 / 355
SS1 再会
2
しおりを挟む
ー悠sideー
彼女の姿、見えなかったな……
新入生代表挨拶で壇上に上がれば、そこからもしかしたら彼女が見られるかもしれない……と期待していたが、大勢の生徒が座喚く人波の中、ひとりひとりの顔を見分けるのすら困難だった。
入学式が終わり、講堂の出口の扉横にクラス発表が掲示される。ここで確認後、各自それぞれのクラスへと向かう流れになっている。
いつ行っても結果は変わらないというのに、掲示版の前にはたくさんの人が押し寄せ、上を下への大騒ぎとなっていた。教師の怒号が飛び、生徒の歓声や嘆き声が聞こえてくる。
クラスを発表するというだけで、大変な騒ぎだな……
イギリスの学校では経験したことのない混乱を目にし、僕は些いささかのカルチャーショックを感じていた。イギリスの現地校は式そのものがなく、クラス発表は事前に指定された時間帯に学校のウェブサイトで発表され、それを確認して各自教室に集合し、通常授業が初日から始まる。
「あのぉ……風間君は、クラス発表見に行かないんですかぁ?」
いつの間にか大勢の女子生徒が僕を囲み、上目遣いで聞いてきた。
面倒くさいな……
こういう視線がどういった類のものか、社交慣れしているうちに嫌でも分かるようになった。
「うん、別に興味ないから」
ここは社交場じゃないし、プライベートまで笑顔とか作っていられない。
「そ、そうなんだ……」
僕の素っ気ない返事に女の子達は逃げるようにそそくさと退散していった。
周りにはだいぶ人が少なくなり、掲示版に群がる人数も減ってきた。
あと、どれぐらい残ってるんだろう……
持ち上がり組の整列している方へと、視線を向けた。
ぁ……
彼女が立っているのが、人が行き交う人混みに紛れそうになりながら、ちらりと見えた。途端、彼女の姿を目で追い、無意識に足まで追いかけていた。
彼女が見えてきた……
黒髪のおさげ髪、真新しい制服に身を包んでちょこんと立つ華奢な姿。少し心細そうな横顔に胸がキュッと締め付けられるような甘い痛みが走った。
あと5歩くらいの距離まで近づいた時、一人の女子生徒が彼女に手を置いて話し掛けた。
「かおちゃん! 人、減ってきたからそろそろクラス発表見に行こうよ!」
彼女はその呼び掛けに笑顔で応え、二人で掲示版へと歩き出してしまう。
タイミング、逃したな……
少し落胆していると、先程の女の子が突然振り返り、手を振りながら大声で叫んだ。
「ほら、大和もーーっ!!」
すると、僕の後ろから「おぅ…」と声が聞こえた後、肩がガンッと揺れた。
「あ、ごめん!全然見てなかった……」
僕より頭一個分背の高い、短髪のがっしりとした体格の男が爽やかに笑顔を見せて謝ってきた。
「いえ……」
僕も、ちゃんと前見てなかったし……
「あれっ?新入生代表の子だよな?」
「あ、はい……そうですが……」
馴れ馴れしいな……こういうタイプは苦手だ。
「おぉーっ!! ありがとな!俺、いつもこういう行事だと引っ張られてたからさ。今回お前がいてくれて助かったぜ」
そう言うと歯を見せてニカッと笑った。
別に…君を助けるつもりでなった訳でもないし、望んでやった訳でもないんだけど。
「俺、羽鳥大和。よろしくな!」
「どうも……」
会ったやつ全員が友達、とか…思ってんのかな。絶対に分かり合えないと思う……
すると、後ろからまた例の女の子の声が響いてきた。
「ねぇねぇ、大和ー!! 私も薫子も大和もみんな同じクラスだったよー!」
その後、キュッキュッと床を踏み鳴らす二人分の上履きの音が近づいてくる……
来た…
こんなことは初めてだが、彼女が自分の後ろ姿を見てるかもしれないと思うと、緊張して背中が固まった。
「マジで!?」
ヤマトと呼ばれた男は、呼び掛けてきた女の子に物凄く嬉しそうな顔を見せていた。
……分かりやすい奴……
髪を少し高めのポニーテールで纏めた明るい印象のその子は目をくりくりさせながら、ヤマトの側まで来ると笑い合って話していた。
けれど、この時僕の瞳には……本当に世界がふたりだけ残してなくなってしまったんじゃないかって思うぐらい、彼女のことしか見えていなかった。彼女と初めて出会った時の吹きつけてきた強い風の感触や髪に触れた時の彼女の目の動き、仄かに鼻を擽る桜の匂いを五感に残っていた記憶が引き出し、鮮やかに蘇ってくる。
「やっと、会えた……」
彼女の姿、見えなかったな……
新入生代表挨拶で壇上に上がれば、そこからもしかしたら彼女が見られるかもしれない……と期待していたが、大勢の生徒が座喚く人波の中、ひとりひとりの顔を見分けるのすら困難だった。
入学式が終わり、講堂の出口の扉横にクラス発表が掲示される。ここで確認後、各自それぞれのクラスへと向かう流れになっている。
いつ行っても結果は変わらないというのに、掲示版の前にはたくさんの人が押し寄せ、上を下への大騒ぎとなっていた。教師の怒号が飛び、生徒の歓声や嘆き声が聞こえてくる。
クラスを発表するというだけで、大変な騒ぎだな……
イギリスの学校では経験したことのない混乱を目にし、僕は些いささかのカルチャーショックを感じていた。イギリスの現地校は式そのものがなく、クラス発表は事前に指定された時間帯に学校のウェブサイトで発表され、それを確認して各自教室に集合し、通常授業が初日から始まる。
「あのぉ……風間君は、クラス発表見に行かないんですかぁ?」
いつの間にか大勢の女子生徒が僕を囲み、上目遣いで聞いてきた。
面倒くさいな……
こういう視線がどういった類のものか、社交慣れしているうちに嫌でも分かるようになった。
「うん、別に興味ないから」
ここは社交場じゃないし、プライベートまで笑顔とか作っていられない。
「そ、そうなんだ……」
僕の素っ気ない返事に女の子達は逃げるようにそそくさと退散していった。
周りにはだいぶ人が少なくなり、掲示版に群がる人数も減ってきた。
あと、どれぐらい残ってるんだろう……
持ち上がり組の整列している方へと、視線を向けた。
ぁ……
彼女が立っているのが、人が行き交う人混みに紛れそうになりながら、ちらりと見えた。途端、彼女の姿を目で追い、無意識に足まで追いかけていた。
彼女が見えてきた……
黒髪のおさげ髪、真新しい制服に身を包んでちょこんと立つ華奢な姿。少し心細そうな横顔に胸がキュッと締め付けられるような甘い痛みが走った。
あと5歩くらいの距離まで近づいた時、一人の女子生徒が彼女に手を置いて話し掛けた。
「かおちゃん! 人、減ってきたからそろそろクラス発表見に行こうよ!」
彼女はその呼び掛けに笑顔で応え、二人で掲示版へと歩き出してしまう。
タイミング、逃したな……
少し落胆していると、先程の女の子が突然振り返り、手を振りながら大声で叫んだ。
「ほら、大和もーーっ!!」
すると、僕の後ろから「おぅ…」と声が聞こえた後、肩がガンッと揺れた。
「あ、ごめん!全然見てなかった……」
僕より頭一個分背の高い、短髪のがっしりとした体格の男が爽やかに笑顔を見せて謝ってきた。
「いえ……」
僕も、ちゃんと前見てなかったし……
「あれっ?新入生代表の子だよな?」
「あ、はい……そうですが……」
馴れ馴れしいな……こういうタイプは苦手だ。
「おぉーっ!! ありがとな!俺、いつもこういう行事だと引っ張られてたからさ。今回お前がいてくれて助かったぜ」
そう言うと歯を見せてニカッと笑った。
別に…君を助けるつもりでなった訳でもないし、望んでやった訳でもないんだけど。
「俺、羽鳥大和。よろしくな!」
「どうも……」
会ったやつ全員が友達、とか…思ってんのかな。絶対に分かり合えないと思う……
すると、後ろからまた例の女の子の声が響いてきた。
「ねぇねぇ、大和ー!! 私も薫子も大和もみんな同じクラスだったよー!」
その後、キュッキュッと床を踏み鳴らす二人分の上履きの音が近づいてくる……
来た…
こんなことは初めてだが、彼女が自分の後ろ姿を見てるかもしれないと思うと、緊張して背中が固まった。
「マジで!?」
ヤマトと呼ばれた男は、呼び掛けてきた女の子に物凄く嬉しそうな顔を見せていた。
……分かりやすい奴……
髪を少し高めのポニーテールで纏めた明るい印象のその子は目をくりくりさせながら、ヤマトの側まで来ると笑い合って話していた。
けれど、この時僕の瞳には……本当に世界がふたりだけ残してなくなってしまったんじゃないかって思うぐらい、彼女のことしか見えていなかった。彼女と初めて出会った時の吹きつけてきた強い風の感触や髪に触れた時の彼女の目の動き、仄かに鼻を擽る桜の匂いを五感に残っていた記憶が引き出し、鮮やかに蘇ってくる。
「やっと、会えた……」
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる