351 / 355
SS2 告白
1
しおりを挟む
高等部時代、悠が薫子に告白した時のエピソードになります。
櫻ロイヤルホテルの中でも一番の広さを誇るパーティー会場「絢爛の間」。
この日、ここで東京都知事である早瀬 匠の誕生日パーティーが盛大に行われていた。
早瀬は父親の外交官の元、幼い頃から海外を転々とし、高校生で俳優として芸能界にデビューするやその端麗な容姿と頭脳明晰なマルチリンガルであることが話題になり、瞬く間に一躍トップスターに駆け上がった。また多忙な芸能活動の傍ら、作家としても数々のベストセラーを生み出し、数々の文学賞も受賞している。
そして、50歳になってから東京都知事として立候補し、初出馬にして初当選という政界においても華々しいデビューを飾った。パーティーには芸能界の他、各界の著名人、そして政財界からも多くの者が招待されていた。
会場となったホテルの総裁であり櫻井財閥を束ねる櫻井龍太郎も、もちろんこの席に呼ばれていた。
彼は今日、娘の薫子を供に連れてきている。それは、娘に結婚相手として相応しい男に目星をつけるためであった。相応しいと言ってもそれは娘にとって、ではなく、どれだけ櫻井財閥に貢献することができるかという意味だ。
薫子は濃紅色に深紫の入った大輪の菊が描かれた艶やかな振袖を纏い、所在なさげに俯いていた。
こんな、大勢の人が集まるパーティーで、見ず知らずの人と話をしなくちゃいけないなんて......
人と話すことが苦手な薫子は、考えるだけで気が重くなり、緊張で躰が震えるのを感じた。
そんな娘の様子など気づくことなく、龍太郎はこれぞという政財界の大物を見つけると、薫子を次々と紹介した。薫子はその度に慇懃に礼をし、無理やり微笑み、相手の話に頷いた。
誰もが薫子の美しさを褒めそやし、讃えたが、薫子にはそれが櫻井財閥の令嬢に対するおべっかだとしか思えず、ますます心の内を閉ざした。
会場には、薫子も知っているようなテレビや舞台で見たことのある俳優や歌手なども大勢招かれており、華やかな雰囲気に包まれていた。
それぞれの芸能人には大勢のゲストが取り巻きのように囲んでいた。そんな中、一際大きな取り巻きの輪を見て、薫子の近くに立っていた女性二人が話し出した。
「ねぇあの子も、芸能人? テレビとかで見たことないけど、これから売り出す予定なのかしら。すごく綺麗な顔立ちじゃない?」
「え、あなた知らないの? あれは、風間財閥の御曹司よ。ここにいる芸能人と比べても劣らないぐらいの容姿よね。その隣にいるお父様の方が、私は好みだけど。あの寡黙で優しげな目元がたまらないわぁ」
薫子はそれを聞き、ハッとしたように会場を見回した。
悠も、ここに来てるんだ......
櫻ロイヤルホテルの中でも一番の広さを誇るパーティー会場「絢爛の間」。
この日、ここで東京都知事である早瀬 匠の誕生日パーティーが盛大に行われていた。
早瀬は父親の外交官の元、幼い頃から海外を転々とし、高校生で俳優として芸能界にデビューするやその端麗な容姿と頭脳明晰なマルチリンガルであることが話題になり、瞬く間に一躍トップスターに駆け上がった。また多忙な芸能活動の傍ら、作家としても数々のベストセラーを生み出し、数々の文学賞も受賞している。
そして、50歳になってから東京都知事として立候補し、初出馬にして初当選という政界においても華々しいデビューを飾った。パーティーには芸能界の他、各界の著名人、そして政財界からも多くの者が招待されていた。
会場となったホテルの総裁であり櫻井財閥を束ねる櫻井龍太郎も、もちろんこの席に呼ばれていた。
彼は今日、娘の薫子を供に連れてきている。それは、娘に結婚相手として相応しい男に目星をつけるためであった。相応しいと言ってもそれは娘にとって、ではなく、どれだけ櫻井財閥に貢献することができるかという意味だ。
薫子は濃紅色に深紫の入った大輪の菊が描かれた艶やかな振袖を纏い、所在なさげに俯いていた。
こんな、大勢の人が集まるパーティーで、見ず知らずの人と話をしなくちゃいけないなんて......
人と話すことが苦手な薫子は、考えるだけで気が重くなり、緊張で躰が震えるのを感じた。
そんな娘の様子など気づくことなく、龍太郎はこれぞという政財界の大物を見つけると、薫子を次々と紹介した。薫子はその度に慇懃に礼をし、無理やり微笑み、相手の話に頷いた。
誰もが薫子の美しさを褒めそやし、讃えたが、薫子にはそれが櫻井財閥の令嬢に対するおべっかだとしか思えず、ますます心の内を閉ざした。
会場には、薫子も知っているようなテレビや舞台で見たことのある俳優や歌手なども大勢招かれており、華やかな雰囲気に包まれていた。
それぞれの芸能人には大勢のゲストが取り巻きのように囲んでいた。そんな中、一際大きな取り巻きの輪を見て、薫子の近くに立っていた女性二人が話し出した。
「ねぇあの子も、芸能人? テレビとかで見たことないけど、これから売り出す予定なのかしら。すごく綺麗な顔立ちじゃない?」
「え、あなた知らないの? あれは、風間財閥の御曹司よ。ここにいる芸能人と比べても劣らないぐらいの容姿よね。その隣にいるお父様の方が、私は好みだけど。あの寡黙で優しげな目元がたまらないわぁ」
薫子はそれを聞き、ハッとしたように会場を見回した。
悠も、ここに来てるんだ......
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる