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前日譚
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ルノワールが祭壇の両端を持ち上げ、幼馴染のアルヴェールに指示を出す。
「アル、そっちの端持って」
「俺、王宮の舞踏会であちこち呼ばれて疲れてんだけど。なんでお前に付き合わされてんだ?
てか、今から何始める気だよ?」
呆れたように話すアルヴェールの言葉に耳を貸さず、ルノワールは次の行程を指示した。
「祭壇運び終わったら、そこのベルベットの布で覆って。俺は薔薇の花弁を用意するから」
アルヴェールはそれを聞き、嫌な予感がした。
「お前、もしかして……モンタナ侯爵家の令嬢とここで落ち合うつもりか?」
アルヴェールの焦る言葉にも動じず、ルノワールは「あぁ」と短く答えた。
アルヴェールが掴みかかりそうな勢いで、ルノワールに迫る。
「そんなことしたら、両家がどうなるのか分かってんのか!? お前だって分かってるだろう、この間の十字軍遠征以来、王侯派と法皇派は一触即発状態だ。戦争になるかもしれないんだぞ!
常に冷静沈着で感情に流されることのないお前は、どこにいったんだ? 気でも触れたか!?」
アルヴェールの必死の説得の言葉を聞き、ルノワールがふっと表情を崩す。
「そうかもしれない。シャルと出会った瞬間から、俺は彼女の魅力の毒に侵されてしまった」
アルヴェールは顔を歪め、何か言いたそうにしたが、今の彼には何を言っても聞くことはないだろうと諦めたように肩を落とした。
「俺は……誰にも話すつもりはないから」
「あぁ、ありがとう」
アルヴェールは去る前に、
「なんかあったら、俺に知らせろ」
と言って、出て行った。
アルヴェールが扉を閉めて出ていくと、ルノワールは扉近くの柱の陰に身を潜めてシャルロットが来るのを待つ。
いつもシャルを待つ時は胸が高鳴る。
早く会いたい。
シャルロットが辿り着くのを待ち侘びるルノワールであった。
「アル、そっちの端持って」
「俺、王宮の舞踏会であちこち呼ばれて疲れてんだけど。なんでお前に付き合わされてんだ?
てか、今から何始める気だよ?」
呆れたように話すアルヴェールの言葉に耳を貸さず、ルノワールは次の行程を指示した。
「祭壇運び終わったら、そこのベルベットの布で覆って。俺は薔薇の花弁を用意するから」
アルヴェールはそれを聞き、嫌な予感がした。
「お前、もしかして……モンタナ侯爵家の令嬢とここで落ち合うつもりか?」
アルヴェールの焦る言葉にも動じず、ルノワールは「あぁ」と短く答えた。
アルヴェールが掴みかかりそうな勢いで、ルノワールに迫る。
「そんなことしたら、両家がどうなるのか分かってんのか!? お前だって分かってるだろう、この間の十字軍遠征以来、王侯派と法皇派は一触即発状態だ。戦争になるかもしれないんだぞ!
常に冷静沈着で感情に流されることのないお前は、どこにいったんだ? 気でも触れたか!?」
アルヴェールの必死の説得の言葉を聞き、ルノワールがふっと表情を崩す。
「そうかもしれない。シャルと出会った瞬間から、俺は彼女の魅力の毒に侵されてしまった」
アルヴェールは顔を歪め、何か言いたそうにしたが、今の彼には何を言っても聞くことはないだろうと諦めたように肩を落とした。
「俺は……誰にも話すつもりはないから」
「あぁ、ありがとう」
アルヴェールは去る前に、
「なんかあったら、俺に知らせろ」
と言って、出て行った。
アルヴェールが扉を閉めて出ていくと、ルノワールは扉近くの柱の陰に身を潜めてシャルロットが来るのを待つ。
いつもシャルを待つ時は胸が高鳴る。
早く会いたい。
シャルロットが辿り着くのを待ち侘びるルノワールであった。
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