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甘いひととき
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「ごめん、アンジュが可愛かったから……」
アンジュを腕に閉じ込めると、華奢な身体がピクリと震えた。
「ルネ……お願いが、あるの……」
「なに?」
アンジュは僕の腕を握り、見上げると、切ないような、悲しそうな顔で乞うように言った。
「今晩、ここで一緒に寝て……」
そのアクアマリンの瞳には、孤独の影を感じた。
部屋の明かりを消して、ふたりでベッドに潜り込む。アンジュは僕の方を向き、じっと闇の中で瞳を大きくして見つめている。僕は仰向けに寝たまま天井を見上げて、彼女を気にしないようにしていたけれど、嫌でも視線を感じてしまう。凝視されて落ち着かず、鼓動がどんどん高まっているのを感じる。
ついに沈黙が耐えられなくなって、少し布団を引き上げるとアンジュに向き直り、小声で言った。
「な、何?」
自分でも自覚してるぐらい、挙動不審だ。心臓があまりにもバクバクしてて、壊れてしまうんじゃないかって心配になる。
そんな僕にアンジュが微笑む。
「ルネってすごく綺麗な顔立ちよね。女の子にもてるでしょ」
突然そんなことを言われて、焦ってしまう。
「突然、何言ってるの? そんなこと、ないよ……」
ますます布団を引き上げて、赤くなった顔を隠すようにしていると、アンジュが両手で布団を引き下げた。
「嘘。ルネは顔立ちも綺麗だし、優しいから女の子がほっとくわけがないじゃない」
『優しいから......』
その言葉に、僕の体は凍りついたようになった。
「……優しくなんて、ない……僕の優しさは、本当の優しさなんかじゃないから……
自分が傷つかないための、ただの防御だよ」
そうやって他人に傷つけられず、自分も傷つかない術を身につけてきた。僕が女の子に声を掛けられるのは、表面的な見た目や優しさだけを見てるからだけだ。
本当の僕を、誰も知らない。
だったら、アンジュはどうなんだ? ほんの少し前に会っただけのアンジュに、本当の僕なんて分かるはず、ないのに……なぜ、こんなに心が動かされるのだろう。
今まで話したことのなかった本音を、話したくなるのだろう。
「公園で怪しい女の子がいるのを見て、保護してくれたじゃない」
アンジュがクスクスと笑う。そんな悪戯っぽく笑う彼女の笑顔も好きだと思った。
「それは、アンジュが可愛かったからだよ。
……下心があったんだ」
本当はそんなこと思ってなかったけど、悪戯っぽく言ったアンジュを困らせたくなって、つい嘘をついてしまった。
すると、クスクス笑っていたアンジュの顔が、突然真剣なものへと変わった。
「じゃあ……その下心を、見せて……」
「えっ」
ドウイウ、意味?
アンジュの言葉を理解出来ないまま、彼女の綺麗な顔が僕の顔に寄せられる。美しい曲線を描く長い睫毛と艶のある唇が僕を誘う。
その誘惑に、抗うことなど無理だ。柔らかな彼女の温かみをもう一度感じたくて、僕は唇を重ねた。
アンジュを腕に閉じ込めると、華奢な身体がピクリと震えた。
「ルネ……お願いが、あるの……」
「なに?」
アンジュは僕の腕を握り、見上げると、切ないような、悲しそうな顔で乞うように言った。
「今晩、ここで一緒に寝て……」
そのアクアマリンの瞳には、孤独の影を感じた。
部屋の明かりを消して、ふたりでベッドに潜り込む。アンジュは僕の方を向き、じっと闇の中で瞳を大きくして見つめている。僕は仰向けに寝たまま天井を見上げて、彼女を気にしないようにしていたけれど、嫌でも視線を感じてしまう。凝視されて落ち着かず、鼓動がどんどん高まっているのを感じる。
ついに沈黙が耐えられなくなって、少し布団を引き上げるとアンジュに向き直り、小声で言った。
「な、何?」
自分でも自覚してるぐらい、挙動不審だ。心臓があまりにもバクバクしてて、壊れてしまうんじゃないかって心配になる。
そんな僕にアンジュが微笑む。
「ルネってすごく綺麗な顔立ちよね。女の子にもてるでしょ」
突然そんなことを言われて、焦ってしまう。
「突然、何言ってるの? そんなこと、ないよ……」
ますます布団を引き上げて、赤くなった顔を隠すようにしていると、アンジュが両手で布団を引き下げた。
「嘘。ルネは顔立ちも綺麗だし、優しいから女の子がほっとくわけがないじゃない」
『優しいから......』
その言葉に、僕の体は凍りついたようになった。
「……優しくなんて、ない……僕の優しさは、本当の優しさなんかじゃないから……
自分が傷つかないための、ただの防御だよ」
そうやって他人に傷つけられず、自分も傷つかない術を身につけてきた。僕が女の子に声を掛けられるのは、表面的な見た目や優しさだけを見てるからだけだ。
本当の僕を、誰も知らない。
だったら、アンジュはどうなんだ? ほんの少し前に会っただけのアンジュに、本当の僕なんて分かるはず、ないのに……なぜ、こんなに心が動かされるのだろう。
今まで話したことのなかった本音を、話したくなるのだろう。
「公園で怪しい女の子がいるのを見て、保護してくれたじゃない」
アンジュがクスクスと笑う。そんな悪戯っぽく笑う彼女の笑顔も好きだと思った。
「それは、アンジュが可愛かったからだよ。
……下心があったんだ」
本当はそんなこと思ってなかったけど、悪戯っぽく言ったアンジュを困らせたくなって、つい嘘をついてしまった。
すると、クスクス笑っていたアンジュの顔が、突然真剣なものへと変わった。
「じゃあ……その下心を、見せて……」
「えっ」
ドウイウ、意味?
アンジュの言葉を理解出来ないまま、彼女の綺麗な顔が僕の顔に寄せられる。美しい曲線を描く長い睫毛と艶のある唇が僕を誘う。
その誘惑に、抗うことなど無理だ。柔らかな彼女の温かみをもう一度感じたくて、僕は唇を重ねた。
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