【R18】聖夜に舞い降りた天使

奏音 美都

文字の大きさ
9 / 32
甘いひととき

しおりを挟む
「ごめん、アンジュが可愛かったから……」

 アンジュを腕に閉じ込めると、華奢な身体がピクリと震えた。

「ルネ……お願いが、あるの……」
「なに?」

 アンジュは僕の腕を握り、見上げると、切ないような、悲しそうな顔で乞うように言った。

「今晩、ここで一緒に寝て……」

 そのアクアマリンの瞳には、孤独の影を感じた。

 部屋の明かりを消して、ふたりでベッドに潜り込む。アンジュは僕の方を向き、じっと闇の中で瞳を大きくして見つめている。僕は仰向けに寝たまま天井を見上げて、彼女を気にしないようにしていたけれど、嫌でも視線を感じてしまう。凝視されて落ち着かず、鼓動がどんどん高まっているのを感じる。

 ついに沈黙が耐えられなくなって、少し布団を引き上げるとアンジュに向き直り、小声で言った。

「な、何?」

 自分でも自覚してるぐらい、挙動不審だ。心臓があまりにもバクバクしてて、壊れてしまうんじゃないかって心配になる。

 そんな僕にアンジュが微笑む。

「ルネってすごく綺麗な顔立ちよね。女の子にもてるでしょ」

 突然そんなことを言われて、焦ってしまう。

「突然、何言ってるの? そんなこと、ないよ……」

 ますます布団を引き上げて、赤くなった顔を隠すようにしていると、アンジュが両手で布団を引き下げた。

「嘘。ルネは顔立ちも綺麗だし、優しいから女の子がほっとくわけがないじゃない」

『優しいから......』

 その言葉に、僕の体は凍りついたようになった。

「……優しくなんて、ない……僕の優しさは、本当の優しさなんかじゃないから……
 自分が傷つかないための、ただの防御だよ」

 そうやって他人に傷つけられず、自分も傷つかない術を身につけてきた。僕が女の子に声を掛けられるのは、表面的な見た目や優しさだけを見てるからだけだ。

 本当の僕を、誰も知らない。

 だったら、アンジュはどうなんだ? ほんの少し前に会っただけのアンジュに、本当の僕なんて分かるはず、ないのに……なぜ、こんなに心が動かされるのだろう。
 今まで話したことのなかった本音を、話したくなるのだろう。

「公園で怪しい女の子がいるのを見て、保護してくれたじゃない」

 アンジュがクスクスと笑う。そんな悪戯っぽく笑う彼女の笑顔も好きだと思った。

「それは、アンジュが可愛かったからだよ。
 ……下心があったんだ」

 本当はそんなこと思ってなかったけど、悪戯っぽく言ったアンジュを困らせたくなって、つい嘘をついてしまった。

 すると、クスクス笑っていたアンジュの顔が、突然真剣なものへと変わった。

「じゃあ……その下心を、見せて……」
「えっ」

 ドウイウ、意味?

 アンジュの言葉を理解出来ないまま、彼女の綺麗な顔が僕の顔に寄せられる。美しい曲線を描く長い睫毛と艶のある唇が僕を誘う。

 その誘惑に、抗うことなど無理だ。柔らかな彼女の温かみをもう一度感じたくて、僕は唇を重ねた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

恋愛の醍醐味

凛子
恋愛
最近の恋人の言動に嫌気がさしていた萌々香は、誕生日を忘れられたことで、ついに別れを決断。 あることがきっかけで、完璧な理想の恋人に出会うことが出来た萌々香は、幸せな日々が永遠に続くと思っていたのだが……

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母、雪江は大学教授であり、著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...