【R１８】聖夜に舞い降りた天使

モノローグ ーアンジュの独白ー

９

　ルネ……
　私は、君を救いたかった。
　孤独な影を映すその瞳を、寂しげな背中を、癒してあげたいと願っていた。

　二人に愛情が芽生え、孤独な闇を拭い去れたら……

　そんな思いでいたのに。

　私は孤独な君に、更なる孤独を与えてしまった。

　朦朧とした意識の中、私が感じていたのは、君が震えながら握ってくれた手の温もりだった。

　私は後悔した。自分のことばかり考えていた自身を。

　私はルネと出会って、恋に落ちて、死ぬ前に思いを遂げられてすごく幸せだったけれど……

　ルネは出会ったばかりの私との突然の死という状況を受け入れなくてはならなかったんだって……そんなことに、気づけなかった。

　私の死顔を呆然と見つめるルネの姿。
　涙さえ流さず、ただ私の顔を見つめているその姿に、私の胸は引き裂かれそうだった。

　看護師によって私が運ばれていなくなった後も、真っ白なシーツを見下ろす君。

　私はただ泣きながら、繰り返し、ごめんなさい……と言うことしか出来なかった。

　ルネ、好きになってごめんね。
　君の孤独を深めてしまってごめんね。

　すごくすごく好きなのに……
　ずっとルネの傍にいて笑っていたかったのに

　君にそんな未来を与えることが出来なかった。

　ルネが泣いてくれたら
　追い縋ってくれたら
　怒ってくれたら
　感情を露わにしてくれたら

　どれだけ、よかったか。

　抜け殻のようになってしまった君を、見ているのが辛い。
　辛くて、たまらない。

　ルネの感情は、硬い殻に閉じ込められてしまった。

　もうルネは、笑みを見せてくれない。
　悪戯っぽい顔も、恥ずかしがった顔も、私が大好きだった、愛おしげに見つめる顔も……