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理性と本能の鬩(せめ)ぎ合い
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「美姫、申し訳ないのですがコーヒーを買ってきてもらえますか」
「あ、はい」
秀一に財布を渡され、美姫は病院の隣にある24時間営業のカフェに向かった。自販機のコーヒーを飲まないことを知っているからだ。
秀一は美姫の背中を見送ると、大きく息を吐き、大和を見つめた。
「男のプライドですか」
「な、なんだよ! 悪いかよ!!」
大和がムッとした口調で言い返すと、秀一はフッと笑みを見せた。
「まったく……貴方も私も、厄介な女性を愛してしまったものです」
大和はたじろいだ表情を見せた後、気が抜けたように言った。
「まったくな」
秀一がフッと真剣な表情になった。
「兄様の葬儀を立派に取り仕切って下さり、ありがとうございました」
「何で今更……当たり前だろ、俺は来栖家の跡取りなんだから。
お前の為じゃない、お父さんの為だ」
そっぽを向いた大和に、秀一は目を細めた。
「えぇ、分かっていますよ。
それでも……感謝しています」
大和は俯き、声を低くした。
「美姫は今、すげぇ苦しい立場に追い込まれてる。分かってんのか、これはお前の蒔いた種だ。
男として、きっちりけじめつけるんだろうな?」
秀一が瞳の色を深めた。
「男として、ですか。貴方らしい言葉ですね。
もちろん、そのつもりですよ」
そこへ、コーヒーカップを載せたトレイを両手で運びながら、美姫が戻ってきた。
「お待たせしました……」
あ、あれ……?
秀一と大和にコーヒーを渡しながら、ふたりの間に流れる不思議な空気に少し緊張したように瞬きをした。
二人で、どんな話してたんだろう。
気になるけど、聞けない……
「あ、はい」
秀一に財布を渡され、美姫は病院の隣にある24時間営業のカフェに向かった。自販機のコーヒーを飲まないことを知っているからだ。
秀一は美姫の背中を見送ると、大きく息を吐き、大和を見つめた。
「男のプライドですか」
「な、なんだよ! 悪いかよ!!」
大和がムッとした口調で言い返すと、秀一はフッと笑みを見せた。
「まったく……貴方も私も、厄介な女性を愛してしまったものです」
大和はたじろいだ表情を見せた後、気が抜けたように言った。
「まったくな」
秀一がフッと真剣な表情になった。
「兄様の葬儀を立派に取り仕切って下さり、ありがとうございました」
「何で今更……当たり前だろ、俺は来栖家の跡取りなんだから。
お前の為じゃない、お父さんの為だ」
そっぽを向いた大和に、秀一は目を細めた。
「えぇ、分かっていますよ。
それでも……感謝しています」
大和は俯き、声を低くした。
「美姫は今、すげぇ苦しい立場に追い込まれてる。分かってんのか、これはお前の蒔いた種だ。
男として、きっちりけじめつけるんだろうな?」
秀一が瞳の色を深めた。
「男として、ですか。貴方らしい言葉ですね。
もちろん、そのつもりですよ」
そこへ、コーヒーカップを載せたトレイを両手で運びながら、美姫が戻ってきた。
「お待たせしました……」
あ、あれ……?
秀一と大和にコーヒーを渡しながら、ふたりの間に流れる不思議な空気に少し緊張したように瞬きをした。
二人で、どんな話してたんだろう。
気になるけど、聞けない……
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