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正夢の真意
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うぅっ……私は冬休みの間、何をしてたんだろう。
始業式で整列する体育館で俯き、こっそりと溜息を吐く。
毎日毎日矢野くんのことを考えながらも、勇気が出なくて……クリスマスもお正月も、それ以外の時にも誘えず、結局、冬休みの間矢野くんに連絡することなく、向こうからも連絡がくることなく過ぎてしまった。
まだ、前川くんにキスされた理由も話せてないし、クリスマスプレゼントのお礼すら言えてない。
そんな自分が情けなくて、腹立たしくて仕方ない。
たぶん……矢野くんに嫌われちゃった。
今朝、廊下ですれ違った時に『おはよう』って勇気を出して話しかけたのに、目を逸らされてしまった。それだけ酷いことをしたんだ、矢野くんを傷付けてしまったんだって思ったけど、胸がギュウッて痛くなって苦しかった。
せっかく、学校が始まって矢野くんとまた会えるようになったのに。どんどん距離が離れていくようで、こわいよ……
翌日のホームルームで、村中先生が四角い箱をみんなに見えるようにかざした。
「おーし、これから席替えするぞー」
みんなからオォーッと歓声やどよめきが起こる中、先生は黒板に5×6の四角を書き、ビンゴのように適当に数字を入れていく。
「よし、窓側1番目から順にクジひけー」
窓側の一番前の席に座る西岡くんが立ち上がると、それに従ってわらわらとみんなも席を立って続いていく。くじが引かれると一層騒がしくなり、村中先生が「こらー、隣から苦情くるからもっと静かにしろー」と声がかかる。
私もそろそろだと立ち上がり、前の子に続いた。
矢野くんの近くの席になるといいな。
村中先生が持ってる箱に手を入れ、三角に折り畳まれた小さな紙を1枚選び、広げる。
そこには、『3』と書かれていた。黒板を見上げて確認すると、窓側の後ろから2番目の席だった。冬は窓からの隙間風が吹いてきてちょっと寒いけど、景色が見えるのは嬉しい。
全員のクジが引き終わるのを待ち、それから机を持って移動する。
席について周りを見回すと、矢野くんは私の斜め前の席に座ってた。
また、矢野くんの背中を見ていられる……と、嬉しくなったのも束の間、愕然とする。
あれ、これって……
家に帰るとすぐに部屋に入り、机の引き出しから大学ノートを取り出した。ゴクリと唾を飲み下し、緊張しながらページを捲っていく。
あった。
学生鞄の中からもノートを取り出してページを捲り、指を止める。
同じ、だ……
私の席が窓側の後ろから2番目であることだけでなく、矢野くんや多恵ちゃん、他のクラスメートの席の並びまで、全く同じだった。一気に鳥肌がたった。
やっぱり、正夢だったんだ。あの夢は、これから起こる未来を暗示してたんだ……
それから、自分の今までの行動を思い返してみる。
告白されて、多恵ちゃんがセッティングまでしてくれて二人で会えたのに、まともに会話すらできずに帰ってしまったこと。
みんなに注目されたり囃し立てられるのが恥ずかしくて声をかけられず、せっかく電話しても舞い上がって話を聞き漏らしたり、一緒に帰ろうと約束したのに高橋くんが来て隠れてしまったこと。
クリスマスにマフラーをプレゼントすると言っておきながら渡せず、自分だけプレゼントをもらってお礼も言えないままでいること。
前川くんにキスされたことを黙ってて、前川くんからの告白と共にそれを矢野くんに聞かれてしまったこと。
それらを考えたら……矢野くんに振られるのは、当然だと思えた。
ーーもう、こうなることは初めから決まってたんだ。
そう思ったらショックで、その日は何も食べず、お風呂にも入らず、ベッドに横になってまんじりともせず夜が明けるまで鬱々としていた。
始業式で整列する体育館で俯き、こっそりと溜息を吐く。
毎日毎日矢野くんのことを考えながらも、勇気が出なくて……クリスマスもお正月も、それ以外の時にも誘えず、結局、冬休みの間矢野くんに連絡することなく、向こうからも連絡がくることなく過ぎてしまった。
まだ、前川くんにキスされた理由も話せてないし、クリスマスプレゼントのお礼すら言えてない。
そんな自分が情けなくて、腹立たしくて仕方ない。
たぶん……矢野くんに嫌われちゃった。
今朝、廊下ですれ違った時に『おはよう』って勇気を出して話しかけたのに、目を逸らされてしまった。それだけ酷いことをしたんだ、矢野くんを傷付けてしまったんだって思ったけど、胸がギュウッて痛くなって苦しかった。
せっかく、学校が始まって矢野くんとまた会えるようになったのに。どんどん距離が離れていくようで、こわいよ……
翌日のホームルームで、村中先生が四角い箱をみんなに見えるようにかざした。
「おーし、これから席替えするぞー」
みんなからオォーッと歓声やどよめきが起こる中、先生は黒板に5×6の四角を書き、ビンゴのように適当に数字を入れていく。
「よし、窓側1番目から順にクジひけー」
窓側の一番前の席に座る西岡くんが立ち上がると、それに従ってわらわらとみんなも席を立って続いていく。くじが引かれると一層騒がしくなり、村中先生が「こらー、隣から苦情くるからもっと静かにしろー」と声がかかる。
私もそろそろだと立ち上がり、前の子に続いた。
矢野くんの近くの席になるといいな。
村中先生が持ってる箱に手を入れ、三角に折り畳まれた小さな紙を1枚選び、広げる。
そこには、『3』と書かれていた。黒板を見上げて確認すると、窓側の後ろから2番目の席だった。冬は窓からの隙間風が吹いてきてちょっと寒いけど、景色が見えるのは嬉しい。
全員のクジが引き終わるのを待ち、それから机を持って移動する。
席について周りを見回すと、矢野くんは私の斜め前の席に座ってた。
また、矢野くんの背中を見ていられる……と、嬉しくなったのも束の間、愕然とする。
あれ、これって……
家に帰るとすぐに部屋に入り、机の引き出しから大学ノートを取り出した。ゴクリと唾を飲み下し、緊張しながらページを捲っていく。
あった。
学生鞄の中からもノートを取り出してページを捲り、指を止める。
同じ、だ……
私の席が窓側の後ろから2番目であることだけでなく、矢野くんや多恵ちゃん、他のクラスメートの席の並びまで、全く同じだった。一気に鳥肌がたった。
やっぱり、正夢だったんだ。あの夢は、これから起こる未来を暗示してたんだ……
それから、自分の今までの行動を思い返してみる。
告白されて、多恵ちゃんがセッティングまでしてくれて二人で会えたのに、まともに会話すらできずに帰ってしまったこと。
みんなに注目されたり囃し立てられるのが恥ずかしくて声をかけられず、せっかく電話しても舞い上がって話を聞き漏らしたり、一緒に帰ろうと約束したのに高橋くんが来て隠れてしまったこと。
クリスマスにマフラーをプレゼントすると言っておきながら渡せず、自分だけプレゼントをもらってお礼も言えないままでいること。
前川くんにキスされたことを黙ってて、前川くんからの告白と共にそれを矢野くんに聞かれてしまったこと。
それらを考えたら……矢野くんに振られるのは、当然だと思えた。
ーーもう、こうなることは初めから決まってたんだ。
そう思ったらショックで、その日は何も食べず、お風呂にも入らず、ベッドに横になってまんじりともせず夜が明けるまで鬱々としていた。
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