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行方不明だった叔父に新撰組の剣士としてタイムスリップした先の幕末で再会し、祝言を挙げて本日夫婦となりました
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幼い頃に行方不明になった叔父の剣一のことがずっと忘れられず、彼の行方が途絶えたコテージに高校1年の夏休みに幼馴染である桃子、正、雄平を誘って滞在した。
あの朝、散歩に行こうと提案したものの、雄平は眠いし、面倒くさいから嫌だと断り、桃子と正の3人で出かけることになった。
森を散策するうちに道に迷い、そのうちに雨が降ってきた。大木を見つけ、雨宿りをしようと近寄った時にそこに洞を見つけ、好奇心で入ってみたら……そこが、タイムスリップの入口だったのだ。
振り返った先にはもう洞はなく、目の前に広がるのは江戸の城下町だった。
桃子と雄平は、互いに長い間思いあった末に、ようやく付き合い始めたばかりの恋人だった。あの時、『一緒に散歩に行こう』と自分が誘わなければ、桃子と雄平が引き離されることはなかったのにと、美唯はずっと罪悪感を背負っていた。
それが、一昨日の晩。
剣一の遠征が滞りなく終わるよう祈願し始め、今では習慣となった参拝での帰り道、桃子と共になんとなしにそこから続いている獣道へと入った。
導かれるように辿り着いた先には、あの時美唯たちを江戸へタイムスリップさせたのと同じ大木が立ち、そこには大きな洞があった。それを見つけた桃子は、今すぐにでも現代へと戻り、雄平に会いたい気持ちでいっぱいになったものの、そんな気持ちを必死に押し留めた。
「美唯と剣一さんの祝言を見届けたいから……祝言の翌日に、帰ることにするね」
桃子の言葉に、美唯は涙が溢れるのを止められなかった。
ここに来てから2年の月日が流れ、桃子はどれだけ辛く、寂しい想いをしたことだろう。奉公先の呉服屋で見合いの話が持ち上がったこともあったが、桃子は頑なに断り、それ以来呉服屋の旦那との仲に亀裂が入ってしまっている。今でも雄平だけを思っていることが、美唯にはひしひしと伝わってきた。
ーー桃子には現代へと戻り、雄平と再会し、幸せな未来を掴んで欲しい。
その願いはあるものの、苦楽を共にした大切な親友を失うのは、寂しくて仕方なかった。
「正は祝言、来なかったね……」
小さく呟いた桃子に、
「そう、だね……」
美唯は、寂しそうに俯いた。
明るくて優しくて、いつも美唯を支えてくれた頼もしい幼馴染。
それ、なのに……剣一と恋仲になってからというもの、正との関係はどこかぎくしゃくしたものとなっていた。
そして、祝言の前日である昨日。
『美唯、一緒に現代へ帰ろう。そして、俺と一緒に生きてくれ!』
突然の正の言葉。
『私は……行けないよ。天馬さんが、ここにいるから。私は、天馬さんと共に、幕末を生きるって決めたの』
剣一の本名は、タイムスリップしてきた美唯、桃子、正以外誰も知らない。ここでは、剣一は別の名前を名乗っていた。だから美唯は、初めて出会った時、剣一が生き別れた叔父であることに気づかなかった。
今でも、剣一の本名は誰にも明かしていない。剣一の素性を知られないためにも、美唯は本人の前ですら『天馬さん』と呼んでいた。
潔く覚悟した美唯に、正は一瞬表情を歪めてから笑い出した。
「ハハッ、冗談だって! 明日は天馬さんとの祝言だってのに、そんなこと本気で言うわけねーだろ!」
「そ、そっか……そうだよね、ハハッ」
そう、二人で笑い合ったはずだったのに……
正は祝言に顔を出さず、その後隊士全員が集まる祝いの席には現われたものの、早々に席を外してしまった。
正は、どうするんだろう。今は新撰組の隊士として馴染み、力強く生きているけど、やっぱり現代に戻りたいのかな。
そうだとしたら、今日が会える最後の日になるのに……寂しいな。
美唯は、空いてしまった席を見つめて小さく溜息を吐いた。
あの朝、散歩に行こうと提案したものの、雄平は眠いし、面倒くさいから嫌だと断り、桃子と正の3人で出かけることになった。
森を散策するうちに道に迷い、そのうちに雨が降ってきた。大木を見つけ、雨宿りをしようと近寄った時にそこに洞を見つけ、好奇心で入ってみたら……そこが、タイムスリップの入口だったのだ。
振り返った先にはもう洞はなく、目の前に広がるのは江戸の城下町だった。
桃子と雄平は、互いに長い間思いあった末に、ようやく付き合い始めたばかりの恋人だった。あの時、『一緒に散歩に行こう』と自分が誘わなければ、桃子と雄平が引き離されることはなかったのにと、美唯はずっと罪悪感を背負っていた。
それが、一昨日の晩。
剣一の遠征が滞りなく終わるよう祈願し始め、今では習慣となった参拝での帰り道、桃子と共になんとなしにそこから続いている獣道へと入った。
導かれるように辿り着いた先には、あの時美唯たちを江戸へタイムスリップさせたのと同じ大木が立ち、そこには大きな洞があった。それを見つけた桃子は、今すぐにでも現代へと戻り、雄平に会いたい気持ちでいっぱいになったものの、そんな気持ちを必死に押し留めた。
「美唯と剣一さんの祝言を見届けたいから……祝言の翌日に、帰ることにするね」
桃子の言葉に、美唯は涙が溢れるのを止められなかった。
ここに来てから2年の月日が流れ、桃子はどれだけ辛く、寂しい想いをしたことだろう。奉公先の呉服屋で見合いの話が持ち上がったこともあったが、桃子は頑なに断り、それ以来呉服屋の旦那との仲に亀裂が入ってしまっている。今でも雄平だけを思っていることが、美唯にはひしひしと伝わってきた。
ーー桃子には現代へと戻り、雄平と再会し、幸せな未来を掴んで欲しい。
その願いはあるものの、苦楽を共にした大切な親友を失うのは、寂しくて仕方なかった。
「正は祝言、来なかったね……」
小さく呟いた桃子に、
「そう、だね……」
美唯は、寂しそうに俯いた。
明るくて優しくて、いつも美唯を支えてくれた頼もしい幼馴染。
それ、なのに……剣一と恋仲になってからというもの、正との関係はどこかぎくしゃくしたものとなっていた。
そして、祝言の前日である昨日。
『美唯、一緒に現代へ帰ろう。そして、俺と一緒に生きてくれ!』
突然の正の言葉。
『私は……行けないよ。天馬さんが、ここにいるから。私は、天馬さんと共に、幕末を生きるって決めたの』
剣一の本名は、タイムスリップしてきた美唯、桃子、正以外誰も知らない。ここでは、剣一は別の名前を名乗っていた。だから美唯は、初めて出会った時、剣一が生き別れた叔父であることに気づかなかった。
今でも、剣一の本名は誰にも明かしていない。剣一の素性を知られないためにも、美唯は本人の前ですら『天馬さん』と呼んでいた。
潔く覚悟した美唯に、正は一瞬表情を歪めてから笑い出した。
「ハハッ、冗談だって! 明日は天馬さんとの祝言だってのに、そんなこと本気で言うわけねーだろ!」
「そ、そっか……そうだよね、ハハッ」
そう、二人で笑い合ったはずだったのに……
正は祝言に顔を出さず、その後隊士全員が集まる祝いの席には現われたものの、早々に席を外してしまった。
正は、どうするんだろう。今は新撰組の隊士として馴染み、力強く生きているけど、やっぱり現代に戻りたいのかな。
そうだとしたら、今日が会える最後の日になるのに……寂しいな。
美唯は、空いてしまった席を見つめて小さく溜息を吐いた。
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