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行方不明だった叔父に新撰組の剣士としてタイムスリップした先の幕末で再会し、祝言を挙げて本日夫婦となりました
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新撰組局長である近藤勇が、徳利と猪口を手に歩み寄った。いつもにこやかで明るく、新撰組のムードメーカーであり、隊士たちからの信頼が厚いが、女好きで酒が絡むとやっかいという面もある。
「おいおい、祝いの席なんだ。もっと明るく飲むぞ! ほら、桃子ちゃん、飲んで飲んで」
桃子に猪口を渡し、酒をなみなみと注ぐ。
「あ、近藤さん。わ、私はお酒はあまり強くなくて……」
いつも以上に豪快に近藤が笑う。
「なーに、今日は祝いの席だから無礼講だ。みんなー! どんどん飲んでくれー!」
近藤の一言に、隊士達が一斉に沸き立つ。そんな様子を、剣一は猪口を片手に片膝をつき、美唯の隣で穏やかに見つめていた。
こんな日が訪れようとは……あの時の私は、思いもしなかった。
漆黒の着流しに右目を眼帯で覆った、恐ろしいまでに整った美しい容貌。立ち上る色香は妖気のようでもあり、ひとたび剣を握れば、その刃はひと突きで目の前にいるものの命を奪う。
剣一は、新撰組のシンボルとも言える、浅黄色にだんだら模様の羽織を着ることはなかった。剣一は表舞台には決して出ない、新撰組の陰で暗躍する十一番隊の組長だ。名前や顔が世間には知られていはいけない、諜報部隊のトップである剣一は剣の腕が立ち、斎藤や沖田と並ぶほどの実力を持っている。
剣一がこの十一番隊を選んだ理由は、彼が歴史上存在するはずのない人物だからだ。高校生の時に現代から江戸へとタイムスリップし、命を狙われて剣術を学び、生きる術としてきた。
彼がどんな苦境も乗り越えられたのは、幼い頃に生き別れた姪である美唯の存在ゆえだった。12歳下の可愛い姪、美唯。美唯は、剣一にとってかけがえのない存在だった。
それがまさか、こんな形で再会するとは思いもしなかった。なにしろ、当時の美唯は5歳だったのだから、再会した時には美唯と気づかなかった。美唯は既に17歳、奇しくも自分がここにタイムスリップしたのと同じ歳だった。
だが、美唯からここにタイムスリップをしたきっかけが叔父の剣一を探しに森へ行き、そこで見つけた洞を通った先が江戸時代に通じていたのだと話を聞き、彼女こそが姪の美唯だと知り、衝撃を受けた。自分こそがその叔父なのだと言いたい気持ちを抑え、剣一はそれを隠し続けた。
なぜなら、激動の乱世である幕末の、しかも新撰組の諜報部隊にいる自分と関われば、美唯にどんな危険がふりかかるか分からない。もし現代に戻れる方法があるのならば、このまま自分の素性を明かさずにいた方がいいだろうと考えたのだった。
最初は可愛い姪として心を寄せていた剣一だったが、彼女と同じ時を過ごすうちにいつしかひとりの女性として見ている自分に気がついた。
そんなある日、美唯といる時に刺客に狙われ、彼女を庇った時に眼帯が取れてしまい、それがきっかけで美唯に彼が叔父の剣一であることを見抜かれてしまった。
『天馬さん! 天馬さんが、剣一さんだったんですね!?
どうして……どうして、教えてくれなかったんですか!!』
真剣に迫る美唯に、もう嘘を重ねることなどできなかった。
剣一は美唯に、自分が叔父であることを認め、江戸にタイムスリップした経緯を話した上で、美唯を説得した。
『俺はもう、江戸に染まり切ってしまった。もう今更、現代に戻ることなどできない。だが美唯、お前は現代に戻るんだ。そこには、お前の家族が、友人が……大切な人たちが待ってるだろう』
美唯への想いを断ち切るつもりで言ったが、剣一の言葉を聞いて美唯は彼の胸に飛び込んだ。
『どうか、どうか……突き放さないでください。私は、天馬さんのいない世界なんて、もう考えられないんです。貴方なしには生きていけません。
好きなんです』
潤んだ瞳で必死に追い縋る美唯を拒むことなど、できなかった。それに、美唯もここに来てから2年の月日が経ち、江戸が、新撰組がどんなところであるのか分かっているはずだ。その上で、覚悟を決めたのだという強い意志が伝わってきた。
それならば……俺は、この時代で美唯を幸せにするしかないな。
剣一もまた、覚悟を決めた。
美唯と自分が血縁関係にあることは、隊士にも、局長の近藤にすら告げていない。
現代にいれば許されなかった婚姻が、タイムスリップして再び巡り逢えたことで実現出来た今、剣一は運命の悪戯に感謝せずにはいられなかった。
「おいおい、祝いの席なんだ。もっと明るく飲むぞ! ほら、桃子ちゃん、飲んで飲んで」
桃子に猪口を渡し、酒をなみなみと注ぐ。
「あ、近藤さん。わ、私はお酒はあまり強くなくて……」
いつも以上に豪快に近藤が笑う。
「なーに、今日は祝いの席だから無礼講だ。みんなー! どんどん飲んでくれー!」
近藤の一言に、隊士達が一斉に沸き立つ。そんな様子を、剣一は猪口を片手に片膝をつき、美唯の隣で穏やかに見つめていた。
こんな日が訪れようとは……あの時の私は、思いもしなかった。
漆黒の着流しに右目を眼帯で覆った、恐ろしいまでに整った美しい容貌。立ち上る色香は妖気のようでもあり、ひとたび剣を握れば、その刃はひと突きで目の前にいるものの命を奪う。
剣一は、新撰組のシンボルとも言える、浅黄色にだんだら模様の羽織を着ることはなかった。剣一は表舞台には決して出ない、新撰組の陰で暗躍する十一番隊の組長だ。名前や顔が世間には知られていはいけない、諜報部隊のトップである剣一は剣の腕が立ち、斎藤や沖田と並ぶほどの実力を持っている。
剣一がこの十一番隊を選んだ理由は、彼が歴史上存在するはずのない人物だからだ。高校生の時に現代から江戸へとタイムスリップし、命を狙われて剣術を学び、生きる術としてきた。
彼がどんな苦境も乗り越えられたのは、幼い頃に生き別れた姪である美唯の存在ゆえだった。12歳下の可愛い姪、美唯。美唯は、剣一にとってかけがえのない存在だった。
それがまさか、こんな形で再会するとは思いもしなかった。なにしろ、当時の美唯は5歳だったのだから、再会した時には美唯と気づかなかった。美唯は既に17歳、奇しくも自分がここにタイムスリップしたのと同じ歳だった。
だが、美唯からここにタイムスリップをしたきっかけが叔父の剣一を探しに森へ行き、そこで見つけた洞を通った先が江戸時代に通じていたのだと話を聞き、彼女こそが姪の美唯だと知り、衝撃を受けた。自分こそがその叔父なのだと言いたい気持ちを抑え、剣一はそれを隠し続けた。
なぜなら、激動の乱世である幕末の、しかも新撰組の諜報部隊にいる自分と関われば、美唯にどんな危険がふりかかるか分からない。もし現代に戻れる方法があるのならば、このまま自分の素性を明かさずにいた方がいいだろうと考えたのだった。
最初は可愛い姪として心を寄せていた剣一だったが、彼女と同じ時を過ごすうちにいつしかひとりの女性として見ている自分に気がついた。
そんなある日、美唯といる時に刺客に狙われ、彼女を庇った時に眼帯が取れてしまい、それがきっかけで美唯に彼が叔父の剣一であることを見抜かれてしまった。
『天馬さん! 天馬さんが、剣一さんだったんですね!?
どうして……どうして、教えてくれなかったんですか!!』
真剣に迫る美唯に、もう嘘を重ねることなどできなかった。
剣一は美唯に、自分が叔父であることを認め、江戸にタイムスリップした経緯を話した上で、美唯を説得した。
『俺はもう、江戸に染まり切ってしまった。もう今更、現代に戻ることなどできない。だが美唯、お前は現代に戻るんだ。そこには、お前の家族が、友人が……大切な人たちが待ってるだろう』
美唯への想いを断ち切るつもりで言ったが、剣一の言葉を聞いて美唯は彼の胸に飛び込んだ。
『どうか、どうか……突き放さないでください。私は、天馬さんのいない世界なんて、もう考えられないんです。貴方なしには生きていけません。
好きなんです』
潤んだ瞳で必死に追い縋る美唯を拒むことなど、できなかった。それに、美唯もここに来てから2年の月日が経ち、江戸が、新撰組がどんなところであるのか分かっているはずだ。その上で、覚悟を決めたのだという強い意志が伝わってきた。
それならば……俺は、この時代で美唯を幸せにするしかないな。
剣一もまた、覚悟を決めた。
美唯と自分が血縁関係にあることは、隊士にも、局長の近藤にすら告げていない。
現代にいれば許されなかった婚姻が、タイムスリップして再び巡り逢えたことで実現出来た今、剣一は運命の悪戯に感謝せずにはいられなかった。
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