【R18】行方不明だった叔父に新撰組の剣士としてタイムスリップした先の幕末で再会し、祝言を挙げて本日夫婦となりました

奏音 美都

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行方不明だった叔父に新撰組の剣士としてタイムスリップした先の幕末で再会し、祝言を挙げて本日夫婦となりました

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 と、剣一と美唯の視界に新撰組ナンバー2である『鬼の副長』と、敵だけでなく味方である隊士たちからも恐れられている土方歳三の姿が入る。新撰組の顔である近藤に対して、隊を統率する土方は、新撰組の真のリーダーと言える存在だ。

 土方はこちらを見て、襖の方へと向かうよう合図をしているようだ。

 ? 土方さん、どうされたんだろう……

 不思議に思いながらも、美唯は剣一と連れ立って襖の外へと出た。

「副長、何かあったのですか?」

 もしや、攘夷派に何かよからぬ動きがあったのではと剣一に緊張が走る中、土方が面倒くさそうに頭を掻きながら告げる。

「おまえら、もう帰っていいぞ」
「えっ」

 突然の言葉に、美唯が驚く。

「これからは、ただ酒飲んで騒いでるだけだ。誰もおまえたちがいなくなっても、気にするやつなんかいねぇよ」

 言葉は乱暴なものの、その奥には二人への気遣いが感じられる。

 鉄の掟を作り、破るものは容赦なく粛清し、『鬼の副長』と呼ばれ、恐れられている土方だが、誰よりも新撰組を思い、隊士たちを思っていることは、土方と過ごすうちに美唯にも伝わってきた。

 剣一が長期の遠征で帰りを心細く待つ間、美唯を何かと気遣ってくれたのも土方だった。

 土方の言葉を嬉しく思いつつも、だからと言って美唯にはそれを承諾することは出来なかった。

「でも……このお祝いの席は、隊士の方々が設けてくださったものですし、途中で退席するわけには……」

『申し訳ないですから』という言葉を発する前に、剣一が美唯の肩に優しく手を置き、土方をまっすぐ見て答える。

「かたじけない。副長の申し出……ありがたく、受け取らせていただきます」
「えっ!」

 美唯が剣一を振り返る。

 剣一の言葉を受け、土方は大きく頷いた。

「いや、美唯にもその、すまないと思ってな。せっかく屯所の近くの長屋に部屋借りたってのに、また明日からは屯所に籠りきりになっちまうし」

 土方が頭を掻きながら言う。

「今日ぐらいは、ふたりでゆっくり過ごしてこい」

 土方さん……

 胸を熱くさせ、美唯は笑みを浮かべた。

「はいっ、ありがとうございます」

 突然、襖が勢いよく開かれる。

「あれーっ、こんなところで何の相談ですか?」

 そこには、面白いものを見つけたとばかりに笑みを浮かべる一番隊組長である沖田総司と、無理矢理連れて来られたとみえる、諸士取調役兼監察方に就いている山崎烝が立っていた。

 沖田は新撰組に詳しくなくとも、誰もが知る天才剣士。そんな歴史上の人物に出会えたことは美唯にとって驚きだったが、実際に接してみてイメージとのギャップにも驚かされた。

 結核を患い、夭折ようせつした沖田は病弱で脆いのではと想像していたが、実際の沖田は病弱さなど微塵もみせず、陽気で無邪気、そして悪戯好きな性格だった。だが、ひとたび剣を握れば表情は一変。剣士としての顔を見せる。そして、残酷な一面も持っていた。

「……面倒くせぇ奴がきたな」

 土方が呟く。

「おまえら、天馬と美唯はこれから帰すから、適当に隊士達の相手しておけ」
「え、もう帰っちゃうんですかー」
「今日ぐらい、ゆっくりさせてやれ」

 それを聞いて、沖田の顔が意地悪そうに微笑む。

「天馬さん、屯所の近くの長屋に部屋借りたらしいですね。ここじゃみんな、天馬さんと美唯さんの新婚生活に興味津々でずっと聞き耳たてられてるかもしれないですもんね。
 ね、山崎?」

 突然話を振られた山崎が、動揺する。

 色黒で背が高く、美男子。そして、入隊後数ヶ月で上役を任されるほどの実力者であるにも関わらず、無口で温順な性格が災いし、山崎は沖田の格好の遊び相手となっていた。

「い、いや……俺は、別にっ……」

 顔を赤く染める山崎に、土方が沖田に向かって眉を顰める。 

「おい総司、そこらへんでやめとけ」

 軽く制すると、沖田は「はいはーい」と返事した。そんな様子を見ながら、フッと剣一が笑みを溢す。

「まぁ、そういうことだ。くれぐれも、俺たちの邪魔はしないよう頼む」
「ッ!」

 それを聞いて、美唯の顔が赤くなり、俯く。山崎の顔も更に赤くなっていた。

「誰にも、美唯の艶めかしい声は聞かせられんからな」
「ッッ……天馬さん!」

 な、なんてことを!!

「では、あとを頼みます」

 土方にそう告げて頭を下げると、剣一は美唯を連れて去って行った。

「あいつ、変わったな……」

 新撰組に入隊した頃からを知る、土方が呟いた。

 剣一が18の歳に新撰組に入隊した当時、彼は誰とも群れず、喋らず、心を許さず、打ち解けなかった。与えられた任務をただひたすら遂行し、残虐なまでに多くの者を情け容赦なく斬り殺してきた。

 その冷酷さは『鬼の副長』である土方でさえ、震え上がらせるほどだったというのに。

 美唯に出会ってから、天馬は変わった。笑顔を見せるようになり、この頃では隊士たちとも少しずつではあるが打ち解けているようだ。

 ……この平和な日々が、いつまでも続けばいいんだがな。

 土方は、ひとりごちた後、立ち上がった。

「おら、お前らいくぞ」
「えーっ、酒飲んで酔っ払った近藤さんって、ほんと厄介なんですよねぇ」

 そこで、沖田が山崎に振り向く。

「そうだ! これから山崎に一発芸見せてもらいましょうか♪」

 土方が面倒くさそうに答える。

「……勝手にしろ」

 フルフルと顔を横にふる山崎を引き摺りながら、沖田は楽しそうに宴会の輪の中へと戻っていった。
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