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おまけ2 ーユリアーノーとヒューバートの攻防ー
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昼食の後片付けをすると言い張るルチアを説き伏せ、ユリアーノはヒューバートに後片付けを押し付けると、城を出て散歩することした。
ずっと城内にいると窮屈になっちゃうよ。ここは、すごく気持ちいいなぁ。
城に面した湖の側の草原に寝転がり、青く澄みきった空に浮かぶ雲を眺める。暖かい日差しに躰を包まれてだんだんと瞼が重くなり、ユリアーノは眠気に身を任せた。
ユリアーノが目を覚ますと、もう既に空が薄暮へと向かい、昼間くっきりとした青色を見せていた空が透明感のある薄い青へと変化し、美しいグラデーションを描きながら地平線を薄い茜色に染めていた。透明な湖面には昼間はっきりと映し出されていた城が、美しく暮れてゆく空色を背景に優しく映し出されている。
うわー、綺麗だなぁ……
目の前に広がる光景に魅入られるものの、慌てて上体を起こした。
早く戻らないと。きっと、ヒュービーがかんかんに怒ってるだろうな。
クロード様とルチア様は今、どこにいるんだろう?
すると、ちょうど視線の先にクロードがルチアの手を取り、湖のほとりに停めてあったボートへ一緒に乗りこむのが見えた。クロードの逞しい腕が櫂を力強く漕ぎ、湖面が水紋を描きながらボートが進んで行く。
やがて、クロードが櫂を漕ぐ手を止め、ゆっくりとルチアの方へと近づくと横向きに座らせ、ルチアの膝の上に頭をのせ、横たわった。
こんな穏やかな時間、なかなかお城では過ごせないもんね。
ユリアーノはそっとその場を離れると、城内へと戻った。
「さーて、ヒュービーは何してるかな……」
城内ではヒューバートが走り回り、クロードとルチアの姿を探していた。ユリアーノが廊下を歩いているのを見かけたヒューバートは、珍しく自分から声をかけた。
「ユリアーノ、大変だっ!! クロード、ッッ国王陛下の姿が見当たらないっ!!」
めったに顔色を変えないヒューバートが、顔を真っ青にしている。
「あぁ、それなら……」
説明しようとするユリアーノの声を遮り、ヒューバートが頭を抱えて大声をあげる。
「なんとことだ! こうなったら、すぐにでも伝令を出して国中の騎士をこちらに招集しないと……いや、だめだ。それを待っていたら、夜が明けてしまう。今、ここで伝令で使えるのは馬だけだ。あの真っ暗な森を抜けて本城へなど、今からではとても無理だ……
それであれば、私だけでも国王陛下の救出に向かわなければ……!!」
「あの、ヒュービー?」
「なんだ! こっちは国王陛下救出の作戦で手一杯なんだ。声をかけるな!」
「でもさ……」
「しつこいぞっ!!」
ユリアーノは焦燥するヒューバートの両肩に手を置いた。
「落ち着いて、ヒュービー。クロード様とルチア様なら無事だから」
「またお前は、なんの脈絡もなく楽観的なことを言いおって。この間に国王陛下の身にもしものことがあれば……」
「クロード様とルチア様なら湖にいるよ」
ユリアーノは湖に面している側の窓を開け放った。
「クロード様とルチア様は湖のボートにいるよ、もちろん、ふたりの意思でね」
そこからは、小さくであるがボートが浮かび、そこに人が乗っているのがなんとなくわかるものの、暗くてはっきりしない。
「では、護衛に……」
足を向かわせようとしたヒューバートの腕を、ユリアーノが引っ張った。
「だから、邪魔しないであげてね」
「でも……もし万が一国王陛下の身に危険が……」
「邪魔、すると……クロード様に、もう口聞いてもらえないかもねー」
「うっ……」
ヒューバートが押し黙った。
ずっと城内にいると窮屈になっちゃうよ。ここは、すごく気持ちいいなぁ。
城に面した湖の側の草原に寝転がり、青く澄みきった空に浮かぶ雲を眺める。暖かい日差しに躰を包まれてだんだんと瞼が重くなり、ユリアーノは眠気に身を任せた。
ユリアーノが目を覚ますと、もう既に空が薄暮へと向かい、昼間くっきりとした青色を見せていた空が透明感のある薄い青へと変化し、美しいグラデーションを描きながら地平線を薄い茜色に染めていた。透明な湖面には昼間はっきりと映し出されていた城が、美しく暮れてゆく空色を背景に優しく映し出されている。
うわー、綺麗だなぁ……
目の前に広がる光景に魅入られるものの、慌てて上体を起こした。
早く戻らないと。きっと、ヒュービーがかんかんに怒ってるだろうな。
クロード様とルチア様は今、どこにいるんだろう?
すると、ちょうど視線の先にクロードがルチアの手を取り、湖のほとりに停めてあったボートへ一緒に乗りこむのが見えた。クロードの逞しい腕が櫂を力強く漕ぎ、湖面が水紋を描きながらボートが進んで行く。
やがて、クロードが櫂を漕ぐ手を止め、ゆっくりとルチアの方へと近づくと横向きに座らせ、ルチアの膝の上に頭をのせ、横たわった。
こんな穏やかな時間、なかなかお城では過ごせないもんね。
ユリアーノはそっとその場を離れると、城内へと戻った。
「さーて、ヒュービーは何してるかな……」
城内ではヒューバートが走り回り、クロードとルチアの姿を探していた。ユリアーノが廊下を歩いているのを見かけたヒューバートは、珍しく自分から声をかけた。
「ユリアーノ、大変だっ!! クロード、ッッ国王陛下の姿が見当たらないっ!!」
めったに顔色を変えないヒューバートが、顔を真っ青にしている。
「あぁ、それなら……」
説明しようとするユリアーノの声を遮り、ヒューバートが頭を抱えて大声をあげる。
「なんとことだ! こうなったら、すぐにでも伝令を出して国中の騎士をこちらに招集しないと……いや、だめだ。それを待っていたら、夜が明けてしまう。今、ここで伝令で使えるのは馬だけだ。あの真っ暗な森を抜けて本城へなど、今からではとても無理だ……
それであれば、私だけでも国王陛下の救出に向かわなければ……!!」
「あの、ヒュービー?」
「なんだ! こっちは国王陛下救出の作戦で手一杯なんだ。声をかけるな!」
「でもさ……」
「しつこいぞっ!!」
ユリアーノは焦燥するヒューバートの両肩に手を置いた。
「落ち着いて、ヒュービー。クロード様とルチア様なら無事だから」
「またお前は、なんの脈絡もなく楽観的なことを言いおって。この間に国王陛下の身にもしものことがあれば……」
「クロード様とルチア様なら湖にいるよ」
ユリアーノは湖に面している側の窓を開け放った。
「クロード様とルチア様は湖のボートにいるよ、もちろん、ふたりの意思でね」
そこからは、小さくであるがボートが浮かび、そこに人が乗っているのがなんとなくわかるものの、暗くてはっきりしない。
「では、護衛に……」
足を向かわせようとしたヒューバートの腕を、ユリアーノが引っ張った。
「だから、邪魔しないであげてね」
「でも……もし万が一国王陛下の身に危険が……」
「邪魔、すると……クロード様に、もう口聞いてもらえないかもねー」
「うっ……」
ヒューバートが押し黙った。
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