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フランツ様と夫婦になりました
ジュリエッタは繊細なレースがついたシルクの白いウェディングドレスにベールを纏い、頭にバラとオレンジの花冠を載せていた。
いよいよ、フランツ様と結婚する日を迎えたのだわ……
ジュリエッタは感慨深い思いでいっぱいだった。まさか自分が相思相愛の末に結婚できるなど、夢にも思っていなかった。
マリエンヌがジュリエッタの顔にフェイスベールを丁寧にかぶせながら、声をかける。
「とてもいい笑顔だわ、ジュリエッタ。幸せになってね」
「はい、お母様」
母親が花嫁のベールを下ろすのは悪魔に見つからないようにという魔除けの意味と、嫁に出ていく娘の最後の身支度を母親が手伝うという意味がある。
ジュリエッタは結婚後も母と住むので、寂しい思いには駆られないが、それでも今まで過ごしてきた母娘の時間を思うと胸が詰まった。
教会の扉まで歩いていくと、そこには正装した父が立っていた。ニコラスはジュリエッタをみとめると、微笑んだ。
「ジュリエッタ、結婚おめでとう。この日を迎えることができて、私も嬉しいよ」
「お父様、ありがとうございます」
父の望んでいた貴族の嫡男の元に嫁ぐことはできなかったが、父の後継として立派に務めていこうとジュリエッタは改めて誓った。
お父様を決して失望させないわ。私は、立派なジェントリになってみせる……
教会の扉が開き、パイプオルガンの神聖な音色が鳴り響く。ジュリエッタはニコラスと顔を見合わせ、足を踏み出した。
新婦側の家族席には、男性の正装ではなく、薄桃色のドレスを着たミッチェルが座っていた。周りから好奇の視線を向けられて居心地悪そうにはしているが、それでも女性として生きる覚悟を決めたようだった。
視界を向けた先には、フランツが待っていた。一歩、また一歩と彼へと近づいていくにつれて、ふとアーロンのことが頭を過った。
もし、ここでフランツ様に逃げられたら……ショックで立ち直れないわ。
アーロンが結婚するはずだった花嫁の心境を思うと、胸が痛んだ。
視界の先で微笑むフランツにはそんな様子は見られず、ジュリエッタは安堵の息を吐いた。
フランツの前で止まり、父とフランツが和やかに会話を交わす。
「娘を、よろしく頼む」
「はい。必ず、幸せになります」
フランツとなら、信頼し、尊敬しあえる理想的な夫婦、幸せな家族となれることをジュリエッタは確信した。
父が家族席へと座り、フランツと照れたように微笑み合う。
「ジュリエッタ……とても綺麗だ」
「フランツも、素敵だわ」
父も母もかけてくれなかった「綺麗だ」という言葉。ジュリエッタとて、自分が美人でないことは十二分に分かっているし、お世辞で言われたところで嬉しくない。けれど、フランツからかけられる言葉には、彼が心の底からそう思っていることが伝わってきて、心が温かくなって泣きそうになる。
私のことを綺麗だなんて思うのは、世界中にでもフランツ様しかいないわね。そんな唯一の人と出会えて良かった。私はフランツ様がいれば、それで幸せだわ。
そんなフランツも、決して見目はいいとは言えないが、ジュリエッタにとっては世界一素敵な男性に映った。
牧師の言葉に従って、結婚の誓約を交わす。
ジュリエッタはフランツの瞳をしっかりと見つめ、「はい、誓います」と答えた。フランツと婚約し、交際していたものの、ふたりは清い関係を続けていたため、ここで交わした口づけがふたりにとってのファーストキスとなる。
膝を曲げて屈んだジュリエッタのフェイスベールをフランツが取り払い、立ち上がると彼の顔が寄せられる。こんなに大勢の公衆の面前であるにもかかわらず、ジュリエッタにはフランツしか見えていなかった。
フランツ、私にこんな幸せを与えてくれてありがとう……
ふたりは軽く唇を重ね、照れたように微笑みあった。
結婚指輪はゴールドのシンプルなもので、ふたりで選んだものだった。ジュリエッタの左手の薬指に指輪を嵌めさせるフランツの手が緊張で震えていて、思わずジュリエッタは微笑んだ。
フランツとジュリエッタが手を重ね、その上に牧師が手を置いて祈祷を捧げた。それから結婚証明書にフランツとジュリエッタ、続いて牧師がサインする。
「このふたりを夫婦と認めます」
牧師が結婚宣言をすると、拍手がおこった。フランツとジュリエッタは互いに顔を見合わせ、幸せそうに微笑んだ。
フランツと腕を組み、ジュリエッタは笑顔で教会を後にした。
いよいよ、フランツ様と結婚する日を迎えたのだわ……
ジュリエッタは感慨深い思いでいっぱいだった。まさか自分が相思相愛の末に結婚できるなど、夢にも思っていなかった。
マリエンヌがジュリエッタの顔にフェイスベールを丁寧にかぶせながら、声をかける。
「とてもいい笑顔だわ、ジュリエッタ。幸せになってね」
「はい、お母様」
母親が花嫁のベールを下ろすのは悪魔に見つからないようにという魔除けの意味と、嫁に出ていく娘の最後の身支度を母親が手伝うという意味がある。
ジュリエッタは結婚後も母と住むので、寂しい思いには駆られないが、それでも今まで過ごしてきた母娘の時間を思うと胸が詰まった。
教会の扉まで歩いていくと、そこには正装した父が立っていた。ニコラスはジュリエッタをみとめると、微笑んだ。
「ジュリエッタ、結婚おめでとう。この日を迎えることができて、私も嬉しいよ」
「お父様、ありがとうございます」
父の望んでいた貴族の嫡男の元に嫁ぐことはできなかったが、父の後継として立派に務めていこうとジュリエッタは改めて誓った。
お父様を決して失望させないわ。私は、立派なジェントリになってみせる……
教会の扉が開き、パイプオルガンの神聖な音色が鳴り響く。ジュリエッタはニコラスと顔を見合わせ、足を踏み出した。
新婦側の家族席には、男性の正装ではなく、薄桃色のドレスを着たミッチェルが座っていた。周りから好奇の視線を向けられて居心地悪そうにはしているが、それでも女性として生きる覚悟を決めたようだった。
視界を向けた先には、フランツが待っていた。一歩、また一歩と彼へと近づいていくにつれて、ふとアーロンのことが頭を過った。
もし、ここでフランツ様に逃げられたら……ショックで立ち直れないわ。
アーロンが結婚するはずだった花嫁の心境を思うと、胸が痛んだ。
視界の先で微笑むフランツにはそんな様子は見られず、ジュリエッタは安堵の息を吐いた。
フランツの前で止まり、父とフランツが和やかに会話を交わす。
「娘を、よろしく頼む」
「はい。必ず、幸せになります」
フランツとなら、信頼し、尊敬しあえる理想的な夫婦、幸せな家族となれることをジュリエッタは確信した。
父が家族席へと座り、フランツと照れたように微笑み合う。
「ジュリエッタ……とても綺麗だ」
「フランツも、素敵だわ」
父も母もかけてくれなかった「綺麗だ」という言葉。ジュリエッタとて、自分が美人でないことは十二分に分かっているし、お世辞で言われたところで嬉しくない。けれど、フランツからかけられる言葉には、彼が心の底からそう思っていることが伝わってきて、心が温かくなって泣きそうになる。
私のことを綺麗だなんて思うのは、世界中にでもフランツ様しかいないわね。そんな唯一の人と出会えて良かった。私はフランツ様がいれば、それで幸せだわ。
そんなフランツも、決して見目はいいとは言えないが、ジュリエッタにとっては世界一素敵な男性に映った。
牧師の言葉に従って、結婚の誓約を交わす。
ジュリエッタはフランツの瞳をしっかりと見つめ、「はい、誓います」と答えた。フランツと婚約し、交際していたものの、ふたりは清い関係を続けていたため、ここで交わした口づけがふたりにとってのファーストキスとなる。
膝を曲げて屈んだジュリエッタのフェイスベールをフランツが取り払い、立ち上がると彼の顔が寄せられる。こんなに大勢の公衆の面前であるにもかかわらず、ジュリエッタにはフランツしか見えていなかった。
フランツ、私にこんな幸せを与えてくれてありがとう……
ふたりは軽く唇を重ね、照れたように微笑みあった。
結婚指輪はゴールドのシンプルなもので、ふたりで選んだものだった。ジュリエッタの左手の薬指に指輪を嵌めさせるフランツの手が緊張で震えていて、思わずジュリエッタは微笑んだ。
フランツとジュリエッタが手を重ね、その上に牧師が手を置いて祈祷を捧げた。それから結婚証明書にフランツとジュリエッタ、続いて牧師がサインする。
「このふたりを夫婦と認めます」
牧師が結婚宣言をすると、拍手がおこった。フランツとジュリエッタは互いに顔を見合わせ、幸せそうに微笑んだ。
フランツと腕を組み、ジュリエッタは笑顔で教会を後にした。
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