22 / 25
フランツ様と夫婦になりました
しおりを挟む
ジュリエッタは繊細なレースがついたシルクの白いウェディングドレスにベールを纏い、頭にバラとオレンジの花冠を載せていた。
いよいよ、フランツ様と結婚する日を迎えたのだわ……
ジュリエッタは感慨深い思いでいっぱいだった。まさか自分が相思相愛の末に結婚できるなど、夢にも思っていなかった。
マリエンヌがジュリエッタの顔にフェイスベールを丁寧にかぶせながら、声をかける。
「とてもいい笑顔だわ、ジュリエッタ。幸せになってね」
「はい、お母様」
母親が花嫁のベールを下ろすのは悪魔に見つからないようにという魔除けの意味と、嫁に出ていく娘の最後の身支度を母親が手伝うという意味がある。
ジュリエッタは結婚後も母と住むので、寂しい思いには駆られないが、それでも今まで過ごしてきた母娘の時間を思うと胸が詰まった。
教会の扉まで歩いていくと、そこには正装した父が立っていた。ニコラスはジュリエッタをみとめると、微笑んだ。
「ジュリエッタ、結婚おめでとう。この日を迎えることができて、私も嬉しいよ」
「お父様、ありがとうございます」
父の望んでいた貴族の嫡男の元に嫁ぐことはできなかったが、父の後継として立派に務めていこうとジュリエッタは改めて誓った。
お父様を決して失望させないわ。私は、立派なジェントリになってみせる……
教会の扉が開き、パイプオルガンの神聖な音色が鳴り響く。ジュリエッタはニコラスと顔を見合わせ、足を踏み出した。
新婦側の家族席には、男性の正装ではなく、薄桃色のドレスを着たミッチェルが座っていた。周りから好奇の視線を向けられて居心地悪そうにはしているが、それでも女性として生きる覚悟を決めたようだった。
視界を向けた先には、フランツが待っていた。一歩、また一歩と彼へと近づいていくにつれて、ふとアーロンのことが頭を過った。
もし、ここでフランツ様に逃げられたら……ショックで立ち直れないわ。
アーロンが結婚するはずだった花嫁の心境を思うと、胸が痛んだ。
視界の先で微笑むフランツにはそんな様子は見られず、ジュリエッタは安堵の息を吐いた。
フランツの前で止まり、父とフランツが和やかに会話を交わす。
「娘を、よろしく頼む」
「はい。必ず、幸せになります」
フランツとなら、信頼し、尊敬しあえる理想的な夫婦、幸せな家族となれることをジュリエッタは確信した。
父が家族席へと座り、フランツと照れたように微笑み合う。
「ジュリエッタ……とても綺麗だ」
「フランツも、素敵だわ」
父も母もかけてくれなかった「綺麗だ」という言葉。ジュリエッタとて、自分が美人でないことは十二分に分かっているし、お世辞で言われたところで嬉しくない。けれど、フランツからかけられる言葉には、彼が心の底からそう思っていることが伝わってきて、心が温かくなって泣きそうになる。
私のことを綺麗だなんて思うのは、世界中にでもフランツ様しかいないわね。そんな唯一の人と出会えて良かった。私はフランツ様がいれば、それで幸せだわ。
そんなフランツも、決して見目はいいとは言えないが、ジュリエッタにとっては世界一素敵な男性に映った。
牧師の言葉に従って、結婚の誓約を交わす。
ジュリエッタはフランツの瞳をしっかりと見つめ、「はい、誓います」と答えた。フランツと婚約し、交際していたものの、ふたりは清い関係を続けていたため、ここで交わした口づけがふたりにとってのファーストキスとなる。
膝を曲げて屈んだジュリエッタのフェイスベールをフランツが取り払い、立ち上がると彼の顔が寄せられる。こんなに大勢の公衆の面前であるにもかかわらず、ジュリエッタにはフランツしか見えていなかった。
フランツ、私にこんな幸せを与えてくれてありがとう……
ふたりは軽く唇を重ね、照れたように微笑みあった。
結婚指輪はゴールドのシンプルなもので、ふたりで選んだものだった。ジュリエッタの左手の薬指に指輪を嵌めさせるフランツの手が緊張で震えていて、思わずジュリエッタは微笑んだ。
フランツとジュリエッタが手を重ね、その上に牧師が手を置いて祈祷を捧げた。それから結婚証明書にフランツとジュリエッタ、続いて牧師がサインする。
「このふたりを夫婦と認めます」
牧師が結婚宣言をすると、拍手がおこった。フランツとジュリエッタは互いに顔を見合わせ、幸せそうに微笑んだ。
フランツと腕を組み、ジュリエッタは笑顔で教会を後にした。
いよいよ、フランツ様と結婚する日を迎えたのだわ……
ジュリエッタは感慨深い思いでいっぱいだった。まさか自分が相思相愛の末に結婚できるなど、夢にも思っていなかった。
マリエンヌがジュリエッタの顔にフェイスベールを丁寧にかぶせながら、声をかける。
「とてもいい笑顔だわ、ジュリエッタ。幸せになってね」
「はい、お母様」
母親が花嫁のベールを下ろすのは悪魔に見つからないようにという魔除けの意味と、嫁に出ていく娘の最後の身支度を母親が手伝うという意味がある。
ジュリエッタは結婚後も母と住むので、寂しい思いには駆られないが、それでも今まで過ごしてきた母娘の時間を思うと胸が詰まった。
教会の扉まで歩いていくと、そこには正装した父が立っていた。ニコラスはジュリエッタをみとめると、微笑んだ。
「ジュリエッタ、結婚おめでとう。この日を迎えることができて、私も嬉しいよ」
「お父様、ありがとうございます」
父の望んでいた貴族の嫡男の元に嫁ぐことはできなかったが、父の後継として立派に務めていこうとジュリエッタは改めて誓った。
お父様を決して失望させないわ。私は、立派なジェントリになってみせる……
教会の扉が開き、パイプオルガンの神聖な音色が鳴り響く。ジュリエッタはニコラスと顔を見合わせ、足を踏み出した。
新婦側の家族席には、男性の正装ではなく、薄桃色のドレスを着たミッチェルが座っていた。周りから好奇の視線を向けられて居心地悪そうにはしているが、それでも女性として生きる覚悟を決めたようだった。
視界を向けた先には、フランツが待っていた。一歩、また一歩と彼へと近づいていくにつれて、ふとアーロンのことが頭を過った。
もし、ここでフランツ様に逃げられたら……ショックで立ち直れないわ。
アーロンが結婚するはずだった花嫁の心境を思うと、胸が痛んだ。
視界の先で微笑むフランツにはそんな様子は見られず、ジュリエッタは安堵の息を吐いた。
フランツの前で止まり、父とフランツが和やかに会話を交わす。
「娘を、よろしく頼む」
「はい。必ず、幸せになります」
フランツとなら、信頼し、尊敬しあえる理想的な夫婦、幸せな家族となれることをジュリエッタは確信した。
父が家族席へと座り、フランツと照れたように微笑み合う。
「ジュリエッタ……とても綺麗だ」
「フランツも、素敵だわ」
父も母もかけてくれなかった「綺麗だ」という言葉。ジュリエッタとて、自分が美人でないことは十二分に分かっているし、お世辞で言われたところで嬉しくない。けれど、フランツからかけられる言葉には、彼が心の底からそう思っていることが伝わってきて、心が温かくなって泣きそうになる。
私のことを綺麗だなんて思うのは、世界中にでもフランツ様しかいないわね。そんな唯一の人と出会えて良かった。私はフランツ様がいれば、それで幸せだわ。
そんなフランツも、決して見目はいいとは言えないが、ジュリエッタにとっては世界一素敵な男性に映った。
牧師の言葉に従って、結婚の誓約を交わす。
ジュリエッタはフランツの瞳をしっかりと見つめ、「はい、誓います」と答えた。フランツと婚約し、交際していたものの、ふたりは清い関係を続けていたため、ここで交わした口づけがふたりにとってのファーストキスとなる。
膝を曲げて屈んだジュリエッタのフェイスベールをフランツが取り払い、立ち上がると彼の顔が寄せられる。こんなに大勢の公衆の面前であるにもかかわらず、ジュリエッタにはフランツしか見えていなかった。
フランツ、私にこんな幸せを与えてくれてありがとう……
ふたりは軽く唇を重ね、照れたように微笑みあった。
結婚指輪はゴールドのシンプルなもので、ふたりで選んだものだった。ジュリエッタの左手の薬指に指輪を嵌めさせるフランツの手が緊張で震えていて、思わずジュリエッタは微笑んだ。
フランツとジュリエッタが手を重ね、その上に牧師が手を置いて祈祷を捧げた。それから結婚証明書にフランツとジュリエッタ、続いて牧師がサインする。
「このふたりを夫婦と認めます」
牧師が結婚宣言をすると、拍手がおこった。フランツとジュリエッタは互いに顔を見合わせ、幸せそうに微笑んだ。
フランツと腕を組み、ジュリエッタは笑顔で教会を後にした。
1
あなたにおすすめの小説
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる