【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

文字の大きさ
303 / 498

297.リョウジと類の関係

しおりを挟む
『類』という名前にリョウジが反応し、僅かに肩を揺らした。が、冷静な表情へとすぐに戻る。

「余計な詮索はしないこと。これを飲んだら、ただちに部屋に戻ってください」

 すっかり存在を忘れられているコップをリョウジが反対側から持ち、ぐいと強引に美羽の口元へと近づける。

 だが、美羽はそれを拒否するように顔を逸らした。

「あなたは類の命令でここにきて、潜入してる。その目的を教えてくれたら、飲みます。
 あなたにとって、類は絶対的な存在なのでしょう? もしあなたが私にこの解毒剤を飲ませられなかったら、困ることになるんじゃないですか」 

 リョウジの背後に類がついていると確信した途端、美羽はリョウジに強気な態度で迫った。先ほどまでふらふらして倒れそうだった美羽の瞳が鋭く切り替わるのを見て、表情の乏しかったリョウジの目元がふわりと緩む。



「弱い人かと思っていたら……なるほど、双子だ」



 その言葉で、類が噛んでいることは決定的となった。

「あの方の目的は、ただひとつ。あなたを手に入れる、それだけですよ。
 それは、あなたもご存知でしょう?」

 リョウジは類から美羽との事情を聞いてふたりの関係を知っているのであろうとはいえ、はっきりと口にされると居た堪れなくなる。

 誰にも打ち明けることのなかった二人の関係を晒してまで、どうして類は、リョウジを自分の仲間に引き入れようとしたのだろうか。

 いや、論点はそこではない。類の最終目的が知りたいのではなく、類がリョウジを教団に送り込んだ目的が知りたいのだ。もちろん母絡みであることは分かるが、母と対決するためにどんな策を練っているのか、母自身に危険が及ぶことはないのか、確かめなければ。

 類もそうだが、この男もまた、巧みに美羽を行きたい目的とは違う道へと引き入れる術に長けている。

「私が言いたいのは……」

 美羽の言葉を遮り、リョウジが再び彼女の口を塞ぐ。

「ングッ」

 抵抗する間も無く、彼は美羽を抱いたままお手洗いの扉を開けて素早く中へと入った。

 ペタッ、ペタッ、ペタッ……

 扉の向こうから、リノリウムの廊下に引っ付いては引きずるようなスリッパの音が近づいてくる。

 もし、彼らが入ってきたら……

 そうなれば、美羽を背中越しに抱きしめているリョウジも見つかってしまう、女子トイレという普通ではない場所で。美羽は、リョウジとの不倫関係を疑われることになるだろう。しかも、コップに入っているのが解毒剤で、彼が与えたものだと判明すれば、リョウジは幹部どころかこの教団すら追い出されてしまうかもしれない。

 そんな妄想をしているうちに、スリッパの音は止まることなく遠ざかっていった。

 ほぉ……と、大きく息を吐き切る美羽の顔に、リョウジが迫った。

「分かったでしょう? 取引やゲームをしている場合じゃないんです。これは、命を賭けた潜入なんです。
 他の信者に見つからないうちに、さぁ、早く!」

 その真剣な眼差しに急かされ、美羽はグイッとコップの水を飲み干した。だが、それでも聞かずにはいられない。

「解毒剤って、いったいお神酒には何が入っていたんですか。今までのとは、明らかに違った……
 教団で、何が起こってるんですか!? あなたは何か、知っているんでしょう? 教えてください!!」

 美羽は精一杯声をひそめながらも、疑問をリョウジにぶつけた。

「知らない方が幸せなこともあります。戻りましょう」

 背を向けたリョウジの腕を、美羽が引っ張る。



「教えてくれないなら……あなたが、教団のスパイだと話します」


 
 リョウジは驚いたように振り向いた。美羽の瞳が揺れているのを認め、リョウジが口角を歪ませる。

「教団の幹部である僕と、出家信者の家族にすぎないあなたと、どちらが信憑性があると教祖は判断するでしょうね」
「やってみないと分かりません! あなたは、入信して僅かの間に幹部になった。きっと、不審に思っている人や嫉妬している幹部もいるはずです!」

 美羽は、教団の謎を少しでも探りたいと必死だった。リョウジを密告するつもりなどないが、賭けに出たのだ。

 リョウジにはもう、動揺の片鱗すら見られない。

「したいのなら、お好きにどうぞ。でもこれは、自分の首を絞める行為になることをお忘れなく。
 もし僕が教団のスパイだとあなたが密告すれば、その糸の先にルイ様がいることが暴かれ、あなたがた母親に知られる危険性を孕んでいることも」

 美羽は息を呑んだ。

 母に類のことを知られる。
 それだけは、絶対に避けなければいけないことだ。

 青褪めた美羽に、リョウジは少し柔らかい口調を向けた。

「僕はどんな危険をも、ルイ様の為なら厭わない。
 それはつまり、美羽さん。あなたを守る為でもあるのですよ」

 リョウジの手が美羽の背中にそっと触れる。

「さぁ、部屋へ案内します。分かっているとは思いますが、このことは他言無用ですよ」

 コクンと素直に頷いてから、美羽がリョウジを見上げる。

「じゃあ、お願い! ひとつ、だけ……教えて。
 あなたにとって、類はいったいなんなの? どうしてこんな危険を冒してまで、潜入しているの?」

 リョウジの瞳が黒曜石のようにキラリと光った。

「あの方は……生きる指標のなかった僕に使命を与えてくれた、主人マスターです。彼の従者になってから、僕は生まれて初めて生きる喜びを感じているのです」

 リョウジの返事に、美羽の背筋がゾクゾクと震える。こんな風に人を支配してしまえる類の恐ろしさに、偉大さに、恐怖と羨望と憧憬が湧き上がる。

 けれど類……あなたは彼を大切になんて思っていない。だってあなたが関心あるのは、自分と私のことだけ。彼が危険を冒そうと、怪我をしようと……命を落とすことがあってさえも、気になど留めない。

 私が愛したのは、そういう人。
 そして……そんな彼を、愛しいと感じてしまう。
  
 小さく肩を震わせた美羽を、リョウジは再び大部屋へと連れ戻した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...