【R18】退廃的な接吻を ー美麗な双子姉弟が織りなす、切なく激しい禁断愛ー

奏音 美都

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382.ノック

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 萌と電話している間は忘れることができたが、電話を切ってひとりになると、今日あった様々なことが脳裏でフィルムのように回り、それぞれの場面で色々な思いが絡みつく。

 何度も、後悔した場面はあった。

 朝、類と挨拶を交わした時。
 仕事に向かう車中。
 類にチョコを渡した時。
 車を降りる、直前。
 控室で、類に囁かれた時。
 休憩中。
 帰りの車の中。

 言おうと思えば、言えたはずなのに。

『類のために、特別に用意したチョコケーキがある』って。

『類のことを想って、焼いたんだよ』って。

 けれど、言えなかったのは……自分に迷いがあったから。まだ、覚悟を決められないから。

 だから、義昭がケーキを食べているのを見た時に、僅かに残っていた勇気が打ち砕かれてしまった。

 もうダメだと、諦めてしまった。

 類……類は今、何を考えてる?
 意気地がない私に呆れてる? 怒ってる?
 ……それとも、悲しんでる? 恨んでる?

 眠れないままベッドに横たわっていると、何かを引き摺るような音が扉の向こうから聞こえてきて、美羽は耳を澄ませた。



 今の、音……何!?



 訝しんでいると、美羽の部屋の扉がノックされた。それと共に、低い唸り声が響く。

「ぅ……うぅ……美、羽ぅぅぅ」

 ッ……義昭さん!!
 あのチョコケーキのことを誤解して、誘いに来たの!?

 ノックする音が次第に大きく、激しくなっていく。

 ドン! ドドン! ドンドン!! ドンドンドン!!

「ハァッ、ハァッ……み、美羽ぅっ! あっ……ハァッ……開け、開けて……くれっ……ハァッ、ハァッ」

 荒い息遣いで、義昭が美羽の名前を何度も呼んでいる。一気に、悪寒が全身を駆け抜ける。

「い、今すぐ……ハァッ、ハァッ……開け、て……くっ!」

 今度は、扉をガリガリと爪で引っ掻いている。鳥肌がたち、心臓がバクバクと破裂しそうに警報のように騒ぎ立てる。

「ウッ……ウゥッ……ハァッ、ハァッ……あ、開けぇぇぇ……ハァッ、ハァッ」

 扉の奥から聞こえる唸り声は、常軌を逸していた。

「ぃ、ぃゃ……いや……」

 布団を頭までかぶり、耳を塞ぐ。背中から恐怖が覆いかぶさり、震えが止まらない。



 怖い……怖い、怖い。
 嫌だ!!



 抑えていても呻き声が聞こえてくるような気がして、より一層強く耳を塞いだ。

 やがて、力尽き果てて眠りに落ちるまで。
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