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384.No use crying over eaten chocolate cake
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勝手にそれに手をつけた義昭に対し、もちろん腸が煮えくり返るほどの怒りを感じている。義昭にすすめたお茶に大量の下剤を混ぜたのは、もちろん類だ。
だが、それだけではない。
怒りの感情は、美羽にも向けられていた。
美羽の気持ちがそわそわしていることは、数日前から感じていた。
そして、バレンタイン前日。チョコケーキを作っている美羽を見て、頬が綻んだ。
ミューの気持ちは、僕から離れてなかった……
もう、冷たくし、嫉妬を煽ることによってでしか、美羽の気持ちを引き付けることはできないと感じていたのに……美羽がいまだに自分に純粋な愛情を持ちつづけていてくれたことに、歓喜した。
そうだ。いつだって僕たちは、幸せなバレンタインを過ごしていた。ミューはそれを覚えてくれてたんだ。
あの頃の気持ちに戻ってくれた!
だから、ふたりの好きだった音楽を背景に、甘美な思い出を語り、美羽の気持ちを昂ぶらせた。店のみんなにあげたチョコに拗ねたフリをして焦らせ、美羽からの告白を待った。
ミューから行動しなければ、意味がない。そうでなければ、僕たちはあの頃のような恋人には戻れない。
そう思って、辛抱強く耐えて、待ち続けた。
それなのに……
「ミュー。また僕を、裏切ったんだね」
これが、最後のチャンス。最後の、賭けだったのに……
部屋に戻り、美羽の部屋の監視カメラアプリを起動させると、予測通り美羽は未だに布団を頭からかぶり、震えていた。
こんなに怯えているのに、ミューは僕に助けを求めない。
独り……恐怖に慄いている。
「な、んで……なんでだよ!!」
拳をガンッと壁にぶつける。握っていた掌から、鍵が零れ落ちた。
あれほどまでに嫌悪し、見下し、恐怖している夫と離婚を決断できない美羽が信じられない。そこまでして、世間の常識に縛りつけようとしている美羽が滑稽で仕方ない。
友人に遠慮し、罪悪感を持ってしまう美羽に憤りを覚えずにいられない。
今日の香織の言動を思い出し、類は再び憎悪が湧き上がってきた。
「あの、クソ女っ……」
ギリッと歯を鳴らす。
香織の言動が、美羽の気持ちに歯止めをかけてしまった。もしそれがなければ、美羽は類にチョコケーキを渡していただろう。たとえ義昭に邪魔立てされていたとしても、なんらかの発展があったに違いない。
そう思うと、悔しくて仕方なかった。
どうして美羽は、心から愛する自分を選ばないのか。こんなに強烈に、お互いを求めてるのに。
運命の相手なのに。逃れられることない、宿命なのに。
自分ではそう思うものの、美羽の考えは分かっている。
美羽には、双子の姉弟の禁断愛に踏み切れるような勇気はない。あれだけ母親を恐れながらも、避けながらも、未だ鎖に繋がれている。逃れられずにいる。
周りの目を、近所の目を、世間の目を誰よりも気にし、自分が常識や道徳から外れた人間になることを恐れている。
その思いを断ち切らないためには、ふたりの関係は進まないのだと痛切に感じた。
やっぱり……美羽には、苦しんでもらうしかないのかな。
当初の、計画通り。
「ミューが悪いんだよ。
素直に、ならないから……」
どんなにぼろぼろに傷つけても、いい。
なんとしてでも、ミューをこの手にする。
躰も、心も……手に入れてみせる。
「No use crying over eaten chocolate cake」
呟いた類が睫毛を伏せ、だらりと手を下ろした。
だが、それだけではない。
怒りの感情は、美羽にも向けられていた。
美羽の気持ちがそわそわしていることは、数日前から感じていた。
そして、バレンタイン前日。チョコケーキを作っている美羽を見て、頬が綻んだ。
ミューの気持ちは、僕から離れてなかった……
もう、冷たくし、嫉妬を煽ることによってでしか、美羽の気持ちを引き付けることはできないと感じていたのに……美羽がいまだに自分に純粋な愛情を持ちつづけていてくれたことに、歓喜した。
そうだ。いつだって僕たちは、幸せなバレンタインを過ごしていた。ミューはそれを覚えてくれてたんだ。
あの頃の気持ちに戻ってくれた!
だから、ふたりの好きだった音楽を背景に、甘美な思い出を語り、美羽の気持ちを昂ぶらせた。店のみんなにあげたチョコに拗ねたフリをして焦らせ、美羽からの告白を待った。
ミューから行動しなければ、意味がない。そうでなければ、僕たちはあの頃のような恋人には戻れない。
そう思って、辛抱強く耐えて、待ち続けた。
それなのに……
「ミュー。また僕を、裏切ったんだね」
これが、最後のチャンス。最後の、賭けだったのに……
部屋に戻り、美羽の部屋の監視カメラアプリを起動させると、予測通り美羽は未だに布団を頭からかぶり、震えていた。
こんなに怯えているのに、ミューは僕に助けを求めない。
独り……恐怖に慄いている。
「な、んで……なんでだよ!!」
拳をガンッと壁にぶつける。握っていた掌から、鍵が零れ落ちた。
あれほどまでに嫌悪し、見下し、恐怖している夫と離婚を決断できない美羽が信じられない。そこまでして、世間の常識に縛りつけようとしている美羽が滑稽で仕方ない。
友人に遠慮し、罪悪感を持ってしまう美羽に憤りを覚えずにいられない。
今日の香織の言動を思い出し、類は再び憎悪が湧き上がってきた。
「あの、クソ女っ……」
ギリッと歯を鳴らす。
香織の言動が、美羽の気持ちに歯止めをかけてしまった。もしそれがなければ、美羽は類にチョコケーキを渡していただろう。たとえ義昭に邪魔立てされていたとしても、なんらかの発展があったに違いない。
そう思うと、悔しくて仕方なかった。
どうして美羽は、心から愛する自分を選ばないのか。こんなに強烈に、お互いを求めてるのに。
運命の相手なのに。逃れられることない、宿命なのに。
自分ではそう思うものの、美羽の考えは分かっている。
美羽には、双子の姉弟の禁断愛に踏み切れるような勇気はない。あれだけ母親を恐れながらも、避けながらも、未だ鎖に繋がれている。逃れられずにいる。
周りの目を、近所の目を、世間の目を誰よりも気にし、自分が常識や道徳から外れた人間になることを恐れている。
その思いを断ち切らないためには、ふたりの関係は進まないのだと痛切に感じた。
やっぱり……美羽には、苦しんでもらうしかないのかな。
当初の、計画通り。
「ミューが悪いんだよ。
素直に、ならないから……」
どんなにぼろぼろに傷つけても、いい。
なんとしてでも、ミューをこの手にする。
躰も、心も……手に入れてみせる。
「No use crying over eaten chocolate cake」
呟いた類が睫毛を伏せ、だらりと手を下ろした。
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