教室の戸を開けたら、そこには......中学生の、私がいた。

奏音 美都

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教室の戸を開けたら、そこには......

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 クリスマスが近づくと、私は溝端くんへ渡すプレゼントのため、マフラーを編み始めた。初めての手編み、初めての男の人へのプレゼントだった。

 お母さんに編み方を聞いて、毎日少しずつ編み上げていた。

 冬休み間近の教室、多恵ちゃんが私に聞いてきた。

「美紗ちゃんは、溝端にクリスマスプレゼント、何あげるの?」

 なんの躊躇いもなく『溝端』と呼び捨て出来てしまう多恵ちゃんに、嫉妬と羨望の気持ちを抱きつつ、そんな会話に自分が参加していることに内心驚きながらも小さく俯いて答えた。

「手編みの、マフラー......」
「えっ、手編み!?それっ、ちょっと重いかもね」

 大きな声でそう言って笑った。

 ざっくばらんな性格の多恵ちゃんは、心に思ったことをすぐに口に出す。その素直な性格は、時に繊細な私の心を傷つけた。

 重い。重いんだ......

 その言葉は、重く私の心にのしかかった。

 完成して綺麗にラッピングされた手編みのマフラーは......溝端くんの手に渡ることなく、押入れの奥深くに仕舞われることとなった。

 溝端くんからは、また多恵ちゃんを通じてクリスマスプレゼントをもらった。熊のオルゴールだった。

 中にはメッセージカードが入ってた。

『水澤さんへ

 メリークリスマス

 溝端 爽一』

『メリークリスマス』の後にはハートマークが付けられていた。

 これは一体...どういう意図を持って付けられたのだろう......

 私は大いに動揺した。

 クリスマスプレゼントを渡せなかったことを悔やんだけれど、『重い』手編みのセーターを渡すことも出来ず。かと言って、新たにプレゼントを渡すこともせず、そのまま冬休みを迎えてしまった。

 冬休みの間中、何度も溝端くんに電話をするために受話器を取り、それを元に戻すという作業を延々と繰り返した。

 結局何の行動も起こさないまま年が開け、3学期が始まってしまった。
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