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教室の戸を開けたら、そこには......
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内向的で、もの静かだった中学時代。
なぜかそんな私に、彼氏が出来た。それが、溝端くんだった。
11月に行われた校内の音楽コンクールの後、私が唯一仲良くしていた多恵ちゃんを通じてラブレターを渡された。多恵ちゃんは私と違って男女分け隔てなく誰とでも話すことが出来、友達が多かった。
真っ白な封筒には何も書かれておらず、中には何の飾り気もない白い便箋が1枚入っていた。四つ折りになった紙を開くと、そこには触れれば指に鉛筆の粉がつくぐらいの強い筆圧で書かれた実直な文字があった。
『水澤さんへ
好きです。付き合って下さい。
溝端 爽一』
シンプルでいて、ストレートに伝わって来る文章。彼のことを深く知らないけれど、でも、とても彼らしいと思った。
文字が、こんなにも胸をドキドキさせることを私は初めて知った。
ドキドキするのは仕方ない......
だって、初めてもらったラブレターが、好きな人からだったんだから。
溝端くんは、いつもクラスの中心にいて、みんなから慕われる存在だった。明るい太陽みたいに、彼の周りにはいつだってその明るさで照らしてもらおうと、惑星のようにたくさんの友人が囲んでいた。
私はその太陽系から外れ、何億光年も離れた場所からそっとその光を眩しく見つめるだけだった。
彼の笑顔を見ているだけで、自分の心が温かくなるのを感じた。彼のひとつひとつの仕草を、気づけば目で追っている自分がいた。
なぜ、彼が......どうして、私なんかを......
幾つもの疑問が私の頭をグルグルと回転し、出口の見えないブラックホールに吸い込まれるようだった。
悩んだ挙句、多恵ちゃんに頼み、溝端くんに手紙を渡してもらうことにした。
『溝端くんへ
よろしくお願いします。
水澤 美紗子』
内向的だったとはいえ、私だって普通の女子中学生だ。
お付き合いとなれば、一緒に登下校したり、クラスで仲良く喋ったり、電話したり、たまには外で会ったり......なんて、これからの薔薇色の人生を想像して、その日の夜は興奮して眠れなかった。
晴れてカップルとなったはずだったのに、それから何の変化もなく毎日は過ぎていった。
もしかして、何かの罰ゲーム? それとも、からかっただけ?
いや、彼はそんなこと......する人じゃ、ない...多分。
ただ一つ、気付いた変化。
それは、よく目が合うようになったこと。けれど、目が合うとなんとなく気まずくて、すぐに目を逸らしてしまっていた。
一度だけ、彼から電話がかかってきたことがあった。お母さんがニヤニヤしながら、『溝端くんって男の子から電話だよ』って言われた時には、クラクラして倒れそうだった。
あまりにも舞い上がっちゃって、何を話したのかなんて覚えてない。
.....けれど、それから溝端くんからは一度も電話が掛かってくることはなかった。
なぜかそんな私に、彼氏が出来た。それが、溝端くんだった。
11月に行われた校内の音楽コンクールの後、私が唯一仲良くしていた多恵ちゃんを通じてラブレターを渡された。多恵ちゃんは私と違って男女分け隔てなく誰とでも話すことが出来、友達が多かった。
真っ白な封筒には何も書かれておらず、中には何の飾り気もない白い便箋が1枚入っていた。四つ折りになった紙を開くと、そこには触れれば指に鉛筆の粉がつくぐらいの強い筆圧で書かれた実直な文字があった。
『水澤さんへ
好きです。付き合って下さい。
溝端 爽一』
シンプルでいて、ストレートに伝わって来る文章。彼のことを深く知らないけれど、でも、とても彼らしいと思った。
文字が、こんなにも胸をドキドキさせることを私は初めて知った。
ドキドキするのは仕方ない......
だって、初めてもらったラブレターが、好きな人からだったんだから。
溝端くんは、いつもクラスの中心にいて、みんなから慕われる存在だった。明るい太陽みたいに、彼の周りにはいつだってその明るさで照らしてもらおうと、惑星のようにたくさんの友人が囲んでいた。
私はその太陽系から外れ、何億光年も離れた場所からそっとその光を眩しく見つめるだけだった。
彼の笑顔を見ているだけで、自分の心が温かくなるのを感じた。彼のひとつひとつの仕草を、気づけば目で追っている自分がいた。
なぜ、彼が......どうして、私なんかを......
幾つもの疑問が私の頭をグルグルと回転し、出口の見えないブラックホールに吸い込まれるようだった。
悩んだ挙句、多恵ちゃんに頼み、溝端くんに手紙を渡してもらうことにした。
『溝端くんへ
よろしくお願いします。
水澤 美紗子』
内向的だったとはいえ、私だって普通の女子中学生だ。
お付き合いとなれば、一緒に登下校したり、クラスで仲良く喋ったり、電話したり、たまには外で会ったり......なんて、これからの薔薇色の人生を想像して、その日の夜は興奮して眠れなかった。
晴れてカップルとなったはずだったのに、それから何の変化もなく毎日は過ぎていった。
もしかして、何かの罰ゲーム? それとも、からかっただけ?
いや、彼はそんなこと......する人じゃ、ない...多分。
ただ一つ、気付いた変化。
それは、よく目が合うようになったこと。けれど、目が合うとなんとなく気まずくて、すぐに目を逸らしてしまっていた。
一度だけ、彼から電話がかかってきたことがあった。お母さんがニヤニヤしながら、『溝端くんって男の子から電話だよ』って言われた時には、クラクラして倒れそうだった。
あまりにも舞い上がっちゃって、何を話したのかなんて覚えてない。
.....けれど、それから溝端くんからは一度も電話が掛かってくることはなかった。
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