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綱渡りの会話

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「お、お母様...大和と付き合っていたこと、知ってらしたんですか!?」

 狼狽する美姫に、ふふっと凛子は笑った。

「えぇ、高校生の時でしょ。今までの幼馴染の感じから雰囲気が変わっていたので、もしかして......と思っていたんですよ」

 そ、そうだったんだ......

 一緒に過ごす時間が短いとはいえ、さすが母親。よく分かっている、と美姫は感心した。

「大和くんってね、見た目はもちろん全然違いますけど、性格が誠一郎さんに似てらっしゃるのよね。誠実で、真面目で、一途で......だから、お父様は美姫の誕生日の時に大和くんのことを勧めたんじゃないかしら。
 もちろんお父様は美姫が大和くんと付き合っていたことなど知りませんけどね」

 凛子から父と大和の共通点について聞かされ、納得がついた。

 確かに、性格的に少し似ているかも......

「大和くんとは、別れた今でもお友達として付き合っているの?」

 そう聞かれ、美姫の心は鉛のように重くなった。

 あの事件の際、大和は危険を顧みず、自分の身を呈してまで美姫を救出しに来てくれた。もし大和が来てくれていなかったら、どうなっていたか分からない。

 それなのに、私は......

 ぼんやりとした記憶ではあるが、美姫は大和の部屋で秀一と事に及んだことを覚えていた。

 友達になんて、戻れるわけない。あんな酷いことをして......許されるわけ、ない......

「いえ、大和とはもう......」

 力なく答えた美姫に、凛子はそれ以上尋ねることはしなかった。

「そう......美姫は、今は結婚したり、子供を産んだりすることは考えられないって言っていたわね。
 確かに、それだけが幸せの道ではない。他に幸せな道を見つけ、歩んでいる人も大勢いるわ。
 でも...親心、なのよね。どうしても、娘には愛し愛される人と巡り合って、結婚して、子供を産んで......そんな幸せを望んでしまう。美姫には大きなプレッシャーだと分かっていても。

 貴女が不幸になるような道を選んで欲しくない。辛くて苦しくて、そこから抜け出せなくなるような、恋愛関係には......踏み込んで欲しくないの......」

 凛子の最後の言葉には悲壮に満ちた思いが伝わってきた。美姫の心臓が早鐘を打ち、背中を伝って冷たい汗が流れる。

 お、母様......もしかして、秀一さんと私の関係に気付いているのでは......

 凛子は美姫が大和と付き合っていたことに気付いていた。美姫が秀一に対して淡い恋心を抱いていたことも知っていたかもしれない。
 そして、深い関係へと発展したことも.......
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