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悍しい記憶 ー秀一回想ー
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すると、遠慮がちに扉をノックする音が響いた。
「秀一様……ピアノのレッスンのお時間でございます」
女がハッとして、私の掌から足を下ろした。
「何してるの!
早く……そこを退きなさい!」
明らかに動揺した口調。私がすぐに動けずにいると、私の肩を押して道をあけ、ヒールの音を高く響かせて部屋を出て行った。
残された私は胸を撫で下ろした途端、先程の恐怖が蘇り、鼓動が速まり、全身が小刻みに震えるのを感じた。
扉をノックしたのは、例のメイドだった。
「秀一、さま……」
その声にゆっくりと立ち上がり、気を落ち着かせる。
メイドがこちらを窺いながら、歩み寄ってきた。
甘えたように抱きついてきたメイドの唇を塞ぎ、舌を差し入れて絡める。そして、女の舌を強く噛んだ。
「ッッ……!!」
「来るのが遅い」
痛みで仰け反ったメイドに冷たく言い放つと、背中を向けて支度を始めた。
「申し訳、ございません……」
私の鼓動の速まりは、未だ収まらずにいた。
あの女の欲情に濡れた目。あれは、はっきりと私を欲していた。
今日はなんとか免れることが出来たが、これからあの女の要求はエスカレートしていくに違いない。
メイドは、私の性奴となった。
そして、あの女教師も。
今の私にとって、女を屈服させ、従わせることは何でもない。
だが、私は……あの女にだけは、どうしても逆らうことが出来ない。手を振り上げられただけで躰が硬直し、命令されればそれに躰が従う。
幼少の頃から躰だけでなく、精神が蝕まれ、抵抗する術を失ってしまった。刻みつけられた条件反射で、女の命令に従わざるをえなくなっているのだ。
だからと言って、このまま易々とあの女の性欲の捌け口になど、なりたくない。
それに……あの女が憎いとはいえ、あれは兄様の母親でもある。母親が義理の息子に性的虐待をしていると知ったら、兄様はショックを受けるに違いない。
例え、兄様が昔のように親しくして下さらなくても、兄様には嫌われたくなかった。
兄様だけは、悲しませたくなかった。
「秀一様……ピアノのレッスンのお時間でございます」
女がハッとして、私の掌から足を下ろした。
「何してるの!
早く……そこを退きなさい!」
明らかに動揺した口調。私がすぐに動けずにいると、私の肩を押して道をあけ、ヒールの音を高く響かせて部屋を出て行った。
残された私は胸を撫で下ろした途端、先程の恐怖が蘇り、鼓動が速まり、全身が小刻みに震えるのを感じた。
扉をノックしたのは、例のメイドだった。
「秀一、さま……」
その声にゆっくりと立ち上がり、気を落ち着かせる。
メイドがこちらを窺いながら、歩み寄ってきた。
甘えたように抱きついてきたメイドの唇を塞ぎ、舌を差し入れて絡める。そして、女の舌を強く噛んだ。
「ッッ……!!」
「来るのが遅い」
痛みで仰け反ったメイドに冷たく言い放つと、背中を向けて支度を始めた。
「申し訳、ございません……」
私の鼓動の速まりは、未だ収まらずにいた。
あの女の欲情に濡れた目。あれは、はっきりと私を欲していた。
今日はなんとか免れることが出来たが、これからあの女の要求はエスカレートしていくに違いない。
メイドは、私の性奴となった。
そして、あの女教師も。
今の私にとって、女を屈服させ、従わせることは何でもない。
だが、私は……あの女にだけは、どうしても逆らうことが出来ない。手を振り上げられただけで躰が硬直し、命令されればそれに躰が従う。
幼少の頃から躰だけでなく、精神が蝕まれ、抵抗する術を失ってしまった。刻みつけられた条件反射で、女の命令に従わざるをえなくなっているのだ。
だからと言って、このまま易々とあの女の性欲の捌け口になど、なりたくない。
それに……あの女が憎いとはいえ、あれは兄様の母親でもある。母親が義理の息子に性的虐待をしていると知ったら、兄様はショックを受けるに違いない。
例え、兄様が昔のように親しくして下さらなくても、兄様には嫌われたくなかった。
兄様だけは、悲しませたくなかった。
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