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愛憎の果て
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美姫の心が強く秀一を求める。絶対者である秀一に、心が従おうとしてしまう。
だが、美姫は強い意志でそれを押し留めた。
「私が、いては......ダメ、なんです。
秀一さんは、私がいることで、私を愛するあまり、周りが見えなくなってしまう。狂気へと駆り立てられてしまう。
苦しいんです。
もう、誰も傷つけたくない......
誰にも、不幸になって欲しくない......」
秀一の瞳に、憎しみの炎が燃え上がる。
ログハウスを去る前、美姫は私の愛を苦しいと告げました。私たちの愛に未来はない、と。
それでも貴女は、私と生きる道を選んだというのに......
---美姫が心変わりをしてしまった原因は、あの男に違いありません。
「羽鳥大和に何か吹き込まれたのですね?
私よりも、あの男を信じるというのですか?」
美姫の両腕を掴む秀一の手に更に力が籠り、ギリギリと骨を締め付ける。
美姫は慌てて弁明した。
「ち、違います! 大和には、何も言われていません。
私は大和に全てを話した後、私から彼にお願いしました。『私と婚約し、来栖財閥の後継者として会社を救って欲しい』、と。
彼は全て受け止めてくれ、記者会見の手筈まで整えてくれました」
秀一の誤解を解こうと、美姫は必死に大和は何も悪くないのだと主張した。だが、美姫の弁明は、逆に秀一の怒りの炎に更に油を注ぐことになった。
秀一が美姫の両肩に手を置き、彼女に迫る。
「貴女が愛しているのは、羽鳥大和ではありません。私なのですよ。
忘れられるはずなど、ないでしょう。私たちは躰も精神も見えない鎖で縛られているのです。離れられるはずなど、ありません
絶対に......離さない」
美姫は、ギリギリと締め付けられる肩の痛みに顔を引き攣らせた。秀一のライトグレーの瞳は、あのピアノルームで見せた狂気の色と共に悲痛な哀しみの色も含んでいた。
美姫は涙を堪えながら、必死に訴えた。
「秀一さん...の、言う通り......私は、秀一さん以外の人を愛せません。秀一さんと離れても......きっと、ずっと、貴方の鎖に縛られたまま......愛し続けるでしょう。
でも大和は、そんな私を受け入れてくれました。秀一さんをずっと忘れられず、愛し続けるであろう私を、まるごと受け入れてくれたんです。
私は、来栖財閥の為だけじゃない。彼、だから......大和、だから......私は彼に、プロポーズしたんです」
「は、とり......大和になど、渡しません。
貴女は、私のものです。私、だけのもの......」
秀一の手が美姫の肩から離れ、その華奢な躰をきつく抱き締めた。誰にも渡すまいとする秀一の想いがヒシヒシと伝わってきて、美姫の全身が熱くなり、耐えていた涙が堰を切って溢れ出した。
「ッグ愛し合って、いても......ウグッ...どう、にも......ならない......ウッ、ウッ。わだ......ッフゥ...たち、は......ウゥッ...結、ばれる...事のない、運命.....なんで、ヒクッ......す」
美姫は溢れる涙を袖で拭い、秀一に顔を上げると嗚咽を飲み込んだ。
「ッッど、うか......ウィーンで、世界に誇る、ピアニストとして活躍してください。
……ッどこで生きていても、私の心は貴方のもの。貴方だけのもの......ック
躰は寄り添うことが出来なくても、魂は常に貴方を求めています」
やっぱり私は......叔父と姪に生まれてよかっただなんて、思えない。
こうして別れなければいけないことが、辛くて堪らない。
どうして結ばれてはいけないのだろうと、思わずにはいられない。
それでも、こうするしかないんだ。
だが、美姫は強い意志でそれを押し留めた。
「私が、いては......ダメ、なんです。
秀一さんは、私がいることで、私を愛するあまり、周りが見えなくなってしまう。狂気へと駆り立てられてしまう。
苦しいんです。
もう、誰も傷つけたくない......
誰にも、不幸になって欲しくない......」
秀一の瞳に、憎しみの炎が燃え上がる。
ログハウスを去る前、美姫は私の愛を苦しいと告げました。私たちの愛に未来はない、と。
それでも貴女は、私と生きる道を選んだというのに......
---美姫が心変わりをしてしまった原因は、あの男に違いありません。
「羽鳥大和に何か吹き込まれたのですね?
私よりも、あの男を信じるというのですか?」
美姫の両腕を掴む秀一の手に更に力が籠り、ギリギリと骨を締め付ける。
美姫は慌てて弁明した。
「ち、違います! 大和には、何も言われていません。
私は大和に全てを話した後、私から彼にお願いしました。『私と婚約し、来栖財閥の後継者として会社を救って欲しい』、と。
彼は全て受け止めてくれ、記者会見の手筈まで整えてくれました」
秀一の誤解を解こうと、美姫は必死に大和は何も悪くないのだと主張した。だが、美姫の弁明は、逆に秀一の怒りの炎に更に油を注ぐことになった。
秀一が美姫の両肩に手を置き、彼女に迫る。
「貴女が愛しているのは、羽鳥大和ではありません。私なのですよ。
忘れられるはずなど、ないでしょう。私たちは躰も精神も見えない鎖で縛られているのです。離れられるはずなど、ありません
絶対に......離さない」
美姫は、ギリギリと締め付けられる肩の痛みに顔を引き攣らせた。秀一のライトグレーの瞳は、あのピアノルームで見せた狂気の色と共に悲痛な哀しみの色も含んでいた。
美姫は涙を堪えながら、必死に訴えた。
「秀一さん...の、言う通り......私は、秀一さん以外の人を愛せません。秀一さんと離れても......きっと、ずっと、貴方の鎖に縛られたまま......愛し続けるでしょう。
でも大和は、そんな私を受け入れてくれました。秀一さんをずっと忘れられず、愛し続けるであろう私を、まるごと受け入れてくれたんです。
私は、来栖財閥の為だけじゃない。彼、だから......大和、だから......私は彼に、プロポーズしたんです」
「は、とり......大和になど、渡しません。
貴女は、私のものです。私、だけのもの......」
秀一の手が美姫の肩から離れ、その華奢な躰をきつく抱き締めた。誰にも渡すまいとする秀一の想いがヒシヒシと伝わってきて、美姫の全身が熱くなり、耐えていた涙が堰を切って溢れ出した。
「ッグ愛し合って、いても......ウグッ...どう、にも......ならない......ウッ、ウッ。わだ......ッフゥ...たち、は......ウゥッ...結、ばれる...事のない、運命.....なんで、ヒクッ......す」
美姫は溢れる涙を袖で拭い、秀一に顔を上げると嗚咽を飲み込んだ。
「ッッど、うか......ウィーンで、世界に誇る、ピアニストとして活躍してください。
……ッどこで生きていても、私の心は貴方のもの。貴方だけのもの......ック
躰は寄り添うことが出来なくても、魂は常に貴方を求めています」
やっぱり私は......叔父と姪に生まれてよかっただなんて、思えない。
こうして別れなければいけないことが、辛くて堪らない。
どうして結ばれてはいけないのだろうと、思わずにはいられない。
それでも、こうするしかないんだ。
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