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サプライズ

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 その後は歓談となり、大和と美姫はようやく席についた。大和が料理に手をつけようとしたところに、長岡からアナウンスが入る。

「大和さんと美姫さんの結婚をぜひお祝いしたいと、会場に駆けつけた方がいらっしゃいます!」

 なんだ......?
 そんなん、聞いてねぇけど。

 大和が疑問に思いながら、会場の扉に視線をやった。

 会場扉にスポットライトが当たり、扉が開いた途端、大和がそれを見て絶句する。

 嘘、だろ......

 扉からステージに向かって歩いてくる彼らは、大和が中学生の時にメジャーデビューし、それから今までずっと大ファンである人気バンドのメンバーだった。美姫が大和に内緒で彼らに出演交渉し、サプライズ演出したのだった。

 彼らの登場に、会場も大いに盛り上がり、熱気が溢れる。

 大和と美姫は席から立ち、彼らを迎えた。メンバー全員が大和と美姫にお祝いの言葉を掛け、握手を交わした。特にボーカルのHYDOの大ファンである大和は「おめでとう」と言われた瞬間に目が潤み、涙を滲ませていた。

「こんなん...... 反則だろ」

 ふたりの為にラブソングを歌い、側で立って聞いているふたりを長岡がステージへと誘導する。大和と美姫はステージの前に立ち、ダンスを披露した。会場中が盛り上がり、まるでコンサート会場の様相だった。

 バンドの演奏が終わり、彼らが退場し、その興奮が冷めやらぬまま、今度は新郎新婦がお色直しの為再度退場となる。

 大和はブートニアを替えるだけで、特にやることはないので会場に残ってもよかったのだが、どうしてもすぐに美姫にお礼が言いたくて一緒に退場したのだった。

 控室に入ると、大和は人目も気にせず美姫を抱き締めた。

 自分が大好きなバンドに会え、自分たちの為に生演奏で歌ってくれたことももちろん感激した。だが何よりも、美姫が自分の好きなバンドを覚えててくれて、自分を喜ばせる為にサプライズで呼び寄せてくれたことが言葉に言い表せないほどに嬉しかった。

「美姫......ありがとう。俺、絶対一生忘れない。
 マジで、最高の結婚式になった。ほんと、ありがとう......」

 美姫は涙ぐむ大和を見上げ、柔らかく微笑んだ。

「大和が喜ぶ顔が見れて、よかった」

 だが、大和が顔を近づけようとすると、美姫は少し困ったように顔を赤くして俯き、キスに応じようとしない。

「あ、の......カメラ、回ってるよ?」
「え!? わぁぁっ!!」

 振り向いた大和はすぐ後ろにカメラマンがいるのを見て、仰け反りながら顔を真っ赤にした。

 やっぱTV中継とか、引き受けんじゃなかった.....
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