704 / 1,014
変わらぬ思い
5
しおりを挟む
大和は背負っていたバッグパックを下ろし、ファスナーを開けた。
「これ、日本からの土産」
お茶漬けやチャーハンの素、インスタントラーメンやお茶の煮出しパック等がどんどん出てくる。
「う、わぁー! マジ嬉しい!! ありがとな」
「プライベートジェットじゃなかったら、荷物になるから絶対に持ってこなかったけどな」
「んだよ、嫌味なやつだな」
「てか、遼。いつ結婚祝い送ってくるんだよ?」
「あ? じゃ、このボールペンやる」
「いらねーよ! めちゃめちゃ適当だな」
「え、大学の名前入りだぞ」
なんか......デジャブが......
美姫はそんなふたりを見ながら、いそいそと部屋を片付けた。
「なんかわりいな。部屋まで綺麗にしてもらって」
満面の笑みを見せる遼に、美姫もつられて笑った。
「こちらこそ、勝手に片付けてごめんね。なんか、落ち着かなくて」
「いや、絶対これ遼の作戦だろ」
大和は遼を軽く睨んだ。
「まぁまぁ、部屋も綺麗になったとこで、どっか飯食いに行こーぜ。
俺、貧乏学生だから当然お前らの奢りな」
美姫は両手を軽く上げた。
「あ、じゃあ二人で行ってきたら?
私、お腹空いてないし、男同士で色々話したいこととかあるだろうし」
せっかくの親友との再会なんだから、邪魔しちゃ悪いよね......
遼が、美姫の肩に腕をのせた。
「なーに言ってんだ、お前も行くに決まってんだろ!
......あぁっ!!!」
遼が突然仰け反った。
「ご、ごめ......おま、ダメだったよな、こういうの......」
美姫は、笑みを見せた。
「大丈夫だよ。もうね、かなり克服できたの。今は男の人に触れられても、理性を保てるようになったから。
大和の、お陰だよ」
「っていうよりも、白川さんのお陰だろ。俺は何もしてないよ」
そういうけど......優子さんのところに連れて行ってくれたのは大和だし、大和がいなければ私は会いに行く勇気すらもてなかった。
本当に、大和のお陰......
その夜は、大和と遼と美姫と3人で飲み明かした。飲み明かしたとは言っても、飲んだのは遼だけで、翌日に帰国までのロングフライトを控えている大和と美姫は付き合い程度に飲んだだけだった。けれど、まるでお酒が入っているかのように楽しく、くだらないことで笑い合った。
遼が、突然思い出したように声をあげた。
「そうだ、結婚式見たぞ」
「えっ、どうやって!?」
大和が驚いて仰け反る。
「海外のTV番組が見られるケーブルボックスってのがあってさ、ネット環境があれば、ここからリアルタイムの日本のTV番組が見られんだ。
てか、すげぇな、結婚式中継とか。芸能人並みだな!」
美姫を抱き締めて泣いている姿も見られたのかと思うと、大和は気まずい思いで項垂れた。
「......悠と、薫子も、来てたな......」
少し寂しげな表情を見せた遼に、美姫は小さく頷いた。
「子供産んだばっかりだったし、無理なんじゃないかって思ったけど、どうしてもお祝いしたいからって、来てくれたの......」
「子供、無事に産まれたんだな。よかった」
そういって笑う遼の笑顔に、いつもの元気はない。
「......まだ、薫子のこと......好きなの?」
思わずそんな問いかけをしてしまった美姫に、遼は眉を寄せた後、明るく笑った。
「ガキの頃からだからな。
そんな簡単に気持ちは変えられねぇよ」
---そんな簡単に気持ちは変えられない。
遼の言葉が、美姫の胸に突き刺さった。
「ジュリアは遼のこと、彼氏って言ってたよな」
大和が面白そうに笑った。
「はぁ? んなの、ジョークに決まってんだろ!
ジュリアのこと同じ研究生としては尊敬してるし、いいダチだけど、あいつに女を感じねー」
「いい雰囲気に見えたけどね、フフッ」
「おい、美姫までかよ。勘弁してくれー」
ジュリアさんとのことはどうなるか分からないけど、遼ちゃんがいつか大切だと思える人に出会えるといいな。
薫子のことをずっと思っていたって、苦しいだけだから......
美姫は、大和とふざけ合う遼をまるで遠くにいるかのように見つめた。
「これ、日本からの土産」
お茶漬けやチャーハンの素、インスタントラーメンやお茶の煮出しパック等がどんどん出てくる。
「う、わぁー! マジ嬉しい!! ありがとな」
「プライベートジェットじゃなかったら、荷物になるから絶対に持ってこなかったけどな」
「んだよ、嫌味なやつだな」
「てか、遼。いつ結婚祝い送ってくるんだよ?」
「あ? じゃ、このボールペンやる」
「いらねーよ! めちゃめちゃ適当だな」
「え、大学の名前入りだぞ」
なんか......デジャブが......
美姫はそんなふたりを見ながら、いそいそと部屋を片付けた。
「なんかわりいな。部屋まで綺麗にしてもらって」
満面の笑みを見せる遼に、美姫もつられて笑った。
「こちらこそ、勝手に片付けてごめんね。なんか、落ち着かなくて」
「いや、絶対これ遼の作戦だろ」
大和は遼を軽く睨んだ。
「まぁまぁ、部屋も綺麗になったとこで、どっか飯食いに行こーぜ。
俺、貧乏学生だから当然お前らの奢りな」
美姫は両手を軽く上げた。
「あ、じゃあ二人で行ってきたら?
私、お腹空いてないし、男同士で色々話したいこととかあるだろうし」
せっかくの親友との再会なんだから、邪魔しちゃ悪いよね......
遼が、美姫の肩に腕をのせた。
「なーに言ってんだ、お前も行くに決まってんだろ!
......あぁっ!!!」
遼が突然仰け反った。
「ご、ごめ......おま、ダメだったよな、こういうの......」
美姫は、笑みを見せた。
「大丈夫だよ。もうね、かなり克服できたの。今は男の人に触れられても、理性を保てるようになったから。
大和の、お陰だよ」
「っていうよりも、白川さんのお陰だろ。俺は何もしてないよ」
そういうけど......優子さんのところに連れて行ってくれたのは大和だし、大和がいなければ私は会いに行く勇気すらもてなかった。
本当に、大和のお陰......
その夜は、大和と遼と美姫と3人で飲み明かした。飲み明かしたとは言っても、飲んだのは遼だけで、翌日に帰国までのロングフライトを控えている大和と美姫は付き合い程度に飲んだだけだった。けれど、まるでお酒が入っているかのように楽しく、くだらないことで笑い合った。
遼が、突然思い出したように声をあげた。
「そうだ、結婚式見たぞ」
「えっ、どうやって!?」
大和が驚いて仰け反る。
「海外のTV番組が見られるケーブルボックスってのがあってさ、ネット環境があれば、ここからリアルタイムの日本のTV番組が見られんだ。
てか、すげぇな、結婚式中継とか。芸能人並みだな!」
美姫を抱き締めて泣いている姿も見られたのかと思うと、大和は気まずい思いで項垂れた。
「......悠と、薫子も、来てたな......」
少し寂しげな表情を見せた遼に、美姫は小さく頷いた。
「子供産んだばっかりだったし、無理なんじゃないかって思ったけど、どうしてもお祝いしたいからって、来てくれたの......」
「子供、無事に産まれたんだな。よかった」
そういって笑う遼の笑顔に、いつもの元気はない。
「......まだ、薫子のこと......好きなの?」
思わずそんな問いかけをしてしまった美姫に、遼は眉を寄せた後、明るく笑った。
「ガキの頃からだからな。
そんな簡単に気持ちは変えられねぇよ」
---そんな簡単に気持ちは変えられない。
遼の言葉が、美姫の胸に突き刺さった。
「ジュリアは遼のこと、彼氏って言ってたよな」
大和が面白そうに笑った。
「はぁ? んなの、ジョークに決まってんだろ!
ジュリアのこと同じ研究生としては尊敬してるし、いいダチだけど、あいつに女を感じねー」
「いい雰囲気に見えたけどね、フフッ」
「おい、美姫までかよ。勘弁してくれー」
ジュリアさんとのことはどうなるか分からないけど、遼ちゃんがいつか大切だと思える人に出会えるといいな。
薫子のことをずっと思っていたって、苦しいだけだから......
美姫は、大和とふざけ合う遼をまるで遠くにいるかのように見つめた。
0
あなたにおすすめの小説
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる