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家族崩壊

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 翌日、大和と美姫は告別式の行われる葬儀場にいた。

 葬儀場の1階には案内もなく、告別式の行われる3階は静まり返っていた。親族しか呼んでいないので当然とはいえ、友人が多く、人望の厚かった大地がこんな形で葬儀を迎えることを思うと無念でならなかった。

 受付を済ませ、葬儀場に入ると30名ほどが座れる椅子が並んでおり、正面奥に大地の遺影写真が飾られ、その下に生花が飾られた祭壇があった。

 カタン、と小さな音が響き、美姫が視線を向けると、優子が立ち上がってこちらに歩いてきた。

「美姫さん、昨夜は連絡をいただき、ありがとうございました」

 美姫は優子の憔悴しきった様子に驚きつつも、「本日は義兄のために来て下さり、ありがとうございます」と返した。

 葬儀には、美姫の両親も参列していた。大和がふたりに頭を下げる。

「兄のために貴重なお時間を割いて来て下さり、ありがとうございました」

 誠一郎がゆっくりと立ち上がり、大和の肩を軽く叩いた。

「そんな他人行儀なことを言わないでくれ、私たちは家族なんだから。
 本当に、こんなことになるなんてな......
 大地くんとは、もっと色んな話がしたかった」
「えぇ......」

 頷き、肩を震わせる大和に、凛子は苦しげに眉を寄せた。

「気持ちが落ち着くまで、仕事は休みにしましょう。
 いつでも私たちを、頼りにして下さいね」
「あ、りがとう......ございます」

 頭を下げる大和に、美姫も両親の彼への気遣いに感謝を込めて頷いた。

 受付の終了時間が迫っていたが、少ない座席ですら埋まることなくひっそりとしていた。

 大和と美姫は、最前列へと案内された。そこには既に大蔵、京香、そして大樹が座っていた。

 京香に会うのは大地の亡くなった日以来だったが、いつもの傲慢で華やかで自信に満ち溢れた彼女の姿は見る影もなかった。

 大和は声を掛けることなく、黙って大樹の横に腰掛けた。大樹も隣に大和が座ったことが分かっていながらも話しかけることなく、正面を向いている。そんな兄弟の無言のやり取りに心を痛めながらも、美姫も静かに腰を下ろした。

 告別式が始まるのを待っていると、急に背後がざわざわとし始めた。

 妙な違和感を感じ、大和が後ろを振り向く。

「ッ......」

 大瀧詠十郎が、秘書を伴って葬儀場に現れたのだ。公設第二秘書であった久木は大地が亡くなったことにより、今は第一秘書を務めている。

 よくも顔が出せたもんだ......

 ギリギリと歯噛みしながら大瀧を見つめる大和に、大樹が小声で制した。

「だい兄を弔う場だ、おさめろ!」
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